プロデューサーを軸に音楽を聴くのが楽しいという話を書いたけれど、それと同じくらい楽しいのが「ミュージシャンを軸に音楽を聴く」ということだろう。
たとえば、独特のグルーヴで一世を風靡した「元祖超絶ドラマー」のスティーヴ・ガッドを軸にしてみよう。
1945年にNYで生まれ7歳でドラムを始めた彼は、ジャズ、フュージョン、ロック、ポップなどあらゆるジャンルで活躍する有名スタジオ・ドラマーである。彼の名前を知らない人はいても、彼の音を聞いた事がない人は殆どいないのではないか、そう思われるほどの売れっ子である。
彼は本当に無数のアルバムに参加しているけれど、敢えてジャズ関係以外での活躍を見てみる。(ジャズ関係はミュージシャンを軸に音楽を聴くものだから)
たとえば年始にNHKでも放送されたサイモン&ガーファンクルの「セントラルパーク復活ライブ」でドラムを叩いていたのはこのガッドである。これまた超絶ベース奏者であるアンソニー・ジャクソンと歌をさえぎる事の無い「文句あるんかワレ?」な完璧な演奏をしていた。これはCDも発売されているので一聴をオススメする。
あるいはエリック・クラプトンの98年の名作「ピルグリム」。ここでもガッドは目立つ事無く「文句あるのかしら??」なドラムを聴かせてくれる。
あるいは究極のソウル・ロック(なんじゃそりゃ?)バンドであるスティーリー・ダンの名作「エイジャ」のタイトル・トラック。ここでは楽曲の終盤で「オラオラ、かかってこんかい!」なドラム・プレイで我々をノックアウトしてくれている。
あるいは大御所テノール歌手ルチアーノ・パバロッティの「Pavarotti & Friends」。
あるいはスマップのアルバム「008」。資本主義社会では金さえ積めばガッドを雇うことができるのである。
そしてなんといっても80年代を代表するメロウ・サックスの巨匠グローバー・ワシントン・Jrの傑作「Just the two of us」(アルバム「ワインライト」1980)におけるベースの神様マーカス・ミラーとの鉄壁のリズム。このトラックではソウル界の神様ビル・ウィザーズがボーカルをとっていて失禁する。
・・・と挙げていくとキリがないが、彼がいかに多岐に渡った活躍をしているかがわかるだろう。彼についてミュージシャンがどんなコメントをしているか聞いてみよう。
「呆然としたね。以前は誰ひとりあんなことをやらなっかったんだ。信じられなかったね」byドナルド・フェイゲン(スティーリー・ダンのリーダー)
「世界最高峰のリズム・セクション、それはラルフ・マクドナルド、スティーヴ・ガッド、エリック・ゲイル、リチャード・ティー、アンソニー・シャクソンだ」byクインシー・ジョーンズ(マイコー・ジャクソンでおなじみ重鎮プロデューサー。因みにここで名前の挙がっているリチャード・ティーはS&Gのセントラルパーク・ライブでもピアノ、エレピを弾いている)
「スティーヴ・ゴッド=神様」byシーナ・イーストンのバンド・メンバーがガッドをどう呼んでいるかという質問への答え。
「どんなドラマーもスティーヴみたいに演奏したいのさ。彼は完璧だからね。彼はドラムキットにオーケストラルで構成的(作曲的)な考え方を導入したんだ。それと同時にイマジネーションとスイングする偉大な能力もね」byチック・コリア(言わずと知れた有名ジャズ・ピアニスト)
最後に「これを聴かずに死ねない」作品をひとつ挙げよう。リチャード・ティー(ピアニスト)の79年のソロ作品「ストローキン」に収録されている「A列車で行こう」がそれである。ここではなんとピアノとドラムだけのデュオで、デューク・エリントンの名曲を超絶技巧で爆発させている。リチャード・ティーの黒人ならではのどす黒いピアノとガッドの白いビートが真っ向勝負するさまはまさに「Oh My GADD!」である。
2003年01月10日 12時34分51秒