伝説のALT(1)
まず、ALTって何?
と思った人が多いでしょうから、簡単に説明しておきます。
外人の先生のことです。
もう少し詳しく言うと、週に一回くらい
英語の先生と一緒に来て授業をする先生です。
授業というより、ほとんど遊びですけど。
ALTが居ない高校もあると思いますが、私の高校には居ました。
一年生の一学期は、リッチモンド(女)という黒人の人でした。
普通でした。
そして、一年生の二学期、彼女はやってきました。
名前は シモン・イスパランダ
彼女は後にこう呼ばれます。
伝説のALT と。
初めて彼女を見た時、
この人は普通じゃないと思いました。
本能ってやつです。きっと。
身の危険を感じました。
そのオーラは彼女の姿からも察知することができました。
彼女の髪の毛ときたら、まるで
コイルそのもの。
理科の実験などに使われる
スチールウールのような感じですね。
天然パーマのレベルではありません。
明らかに、異質なものでした。
そして、その体つき。
超肉食獣丸出しです。
意味、わかります?
超肉食獣
ですよ?
肉食獣をも食料にしてしまうであろう
超肉食獣ですよ?
間違いなく彼女は 世界最強 です。
しかし彼女は、あろうことか
自己紹介の時にこういいました。
「 I am vegetarian . 」
(私は菜食主義者です。)
教室は、静まり返りました。
誰もが心の中でこう思ったでしょう。
「嘘付けよ!」 と。
教室の中の空気は張り詰めていました。
しかし彼女は、そんなことはお構いなし。
次に彼女はこう言い放ちました。
「 But I can eat fish . 」
(だけど、魚は食べれるわよ。)
そして、不気味な笑みを浮かべました。
超恐ぇえ!!!
隣にいた私の友達(M子)も、完全に彼女に心を奪われていました。
違う意味で。
先生も彼女に釘付けです。
そりゃあそうでしょうね。
だってベジタリアンのわけないじゃん。
彼女が冗談でいっているという風には到底みえません。
本気です。
クラスメイトもそれを理解したのでしょう。
つっこんだり、周りの友達とヒソヒソしたりする者は
誰一人居ませんでした。
彼女が教室から出て行き、休み時間になっても
彼女のことを話題にしている者はいませんでした。
とてつもなく怖かったんでしょうね。
私はM子にいいました。
「 ヤバくない? 」
M子:「 ・・・超ヤバイ。マジ怖いんだけど。」
何がヤバイのかなんて言わなくても伝わりました。
それくらい、ヤバイんです。彼女。
私:「ベジタリアンて・・・嘘だよね。」
M子:「あんた、アイツがベジタリアンにみえる!?」
私:「見えないよ!あの体でベジタリアンのわけないでしょ!」
M子:「うぁあ、超怖ぇえよ!」
彼女は思い込んでいるのでしょう。
自分はベジタリアンだと。
肉を野菜だと勘違いしているとしか思えません。
数日後のお昼休み、私達は売店で彼女をみました。
彼女はきちんと列に並んでいました。
モラルはあるようです。
彼女の少し後ろに、私達は並びました。
もちろん、怖かったですよ。
彼女を目の前にすると、威圧されます。
そして、私達は衝撃的な光景を目の当たりにしました。
彼女は一通り置いてあるパンをみると
一つのパンに手を伸ばしました。
どうやら決まったようです。
M子の顔が凍りつきました。
私:「どうしたん?」
M子:「アイツの・・・パンみてみな・・・」
私は、会計をしている彼女の後ろから覗き込んで
彼女の買ったパンを見てみました。
!!!!!!
言葉もでませんでした。
彼女の買ったパンに貼ってあったシールには
こう書かれていました。
ハムパン
オイオイオイオイオイ!
ハムパンかってるよ!!この人!
ベジタリアンなのに、ハムパンかってるよ!!
おかしいよ!!
ハムって肉じゃん!?
でも実際、
やっぱりね。
とも思いました。
会計を済ませた彼女は、
満足そうな顔をして職員室へ帰っていきました。
鼻歌交じりに、軽快な足取りで。
しかし、こんなものはまだ序の口です。
始まりにすぎなかったのですから。
私達は、彼女によって
更なる恐怖を体験させられることになりました。
私は生まれて初めて 恐怖 というものを覚えました。
後にも先にも
これほどの恐怖を体験することはないだろうと思います。
−続く−
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