伝説のALT(3)



彼女のおかしな言動は留まることを知りませんでした。

繰り広げられるウソのオンパレード。

もはや思い込みとしか言いようがない。

しかし、そんな彼女にもようやく慣れ始めた私達。

彼女がきてから約四ヶ月が経っていました。

その頃から、私達はある異変を感じ始めました。

週に一回のOC(オーラルコミュニケーション)が

二週間に一回くらいのペースになっているんです。

そして、更に


一ヶ月に一回のペースになっていったんです。


クラスメイトの一人が、英語のK先生に聞きました。


「どうしてシモンはあんまりこなくなったんですか?」


「あぁ。授業を進めないと範囲が終わらないから、お休みしてもらってるんだよ。」

「それにね。OCは一年生の間だけすることになったんだ。」


全員「・・・・・・。」


おかしくないですか?

今まで、三年間OCの授業はあったんですよ?

それがいきなり一年生の間だけなんて。

受験勉強に力を入れるためなんて表向きの理由ですね。

原因はシモンと考えてまず間違いないでしょう。

まぁこの悪夢のOCがなくなるのは願ってもないことですけど。

二月にはいり、シモンは全く姿を見せなくなりました。


悪夢は終わった。


そう思いました。

終わるはずがなかったんですけどね。

私は少しずつシモンのことを忘れていきました。

正しく言うと、考えている余裕がなかったんです。

この頃、私は部活内で色々あり、吹奏楽部をやめました。

そして、M子も色々あってバスケ部をやめました。

まぁ放課後遊びたかったというのが大きな理由です。

私達の学校は、必ず部活にはいらなきゃならない上に、

帰宅部というものも存在しませんでした。

そこで、帰宅部に近い部活を必死に探していました。

まず、運動系はムシ。

文化系でも目立ったものはパス。

そうなると残るものは決まってきます。

その中でも特にマシに思えたのが


英会話部でした。


英語には興味があったし、話せるようにもなりたいと思っていたので

私達は英会話部に決めました。

この選択が、悲劇を呼ぶことになろうとは・・・。

二年生になり、部員顔合わせの時のことです。

語学教室に入った私達は、目を疑いました。



シモンがいる。



なっ、なんでシモンが!?

驚きのあまり、動くことはもちろん、声もでませんでした。

今考えればそれは当たり前のことです。

英会話部の顧問なんてALT以外にいないじゃないですか。

でも、その頃の私達は、顧問の存在自体考えてなかったんです。

しくじった・・・・。

英会話というくらいだからシモンがいることくらい予想できたはず。


あぁ、私達のバカ!


でも遅すぎました。

シモンは私達のほうをチラリとみてニヤリと笑い


「Hi !]


といいました。


だから怖いって!

そして、悪魔の儀式が始まりました。

シモンは早速、自己紹介を始めました。

もちろんいうことは決まってます。


「 I am vegetarian. 」


やっぱりね!

そして自国&家族紹介。

嘘八百を並び立てたこと以外は

これという問題もなく、彼女の自己紹介は終わりました。

それから彼女はゲームをしようといいだしました。

ゲームの説明をしていますが、早口で聞きとれません。

そしてルールもわからないままゲームが始まりました。

部員は席から立ち、円になります。

私達も周りの動きにあわせ、円の中にはいりました。

円ができあがると、シモンは手にステックのり(大)を持ってやってきました。

そして、自分も円に加わり、大きな声でいい放ちました。



「 Let's start !! 」



悪魔の儀式の一つ、地獄ゲームの始まりです。

このゲームが

私の体験した恐怖の中では過去最大です。

まずは彼女の質問から。



「 What  movie do you like the best ? 」


シュッ!



バシッ!


・・・・・。


え!?


なになに!?何がおこったの!?
ねぇ!!!

目の前で起こった出来事は、信じられないものでした。

シモンは質問と同時に、手に持っていたスティックのりを

一人の部員めがけて投げつけたのです!

もう恐怖と驚きのあまり、私とM子は立ちつくしていました。

オロオロする私達とは逆に、他の部員は冷静そのものです。


どうなってるの!?


何でみんなそんなに落ち着いてるの!?

ていうか何でのりを投げつけたの!?怒ったの!?

もう完全にパニック状態に陥っていたその時、

のりを投げつけられた部員がスッと前へでて

静かにのりを拾っていいました。



「 I like E.T the best. 」


はぃ?


「 Which color do you like the best ? 」


シュッ


バシッ!



!!!!!!!



イヤ、ちょっとまってよ!

あんた何やってんの?どういうこと!?

頭の中も身体も、恐怖に取り付かれています。

泣きそうになっている私にM子はつぶやきました。

「・・・わかった。」

「はぁ!?何が!?」

「コレは、ゲームだよ。あいつの。」

「ゲーム!?」

「このゲームのルールがわかった。」

「ルール!?」

「いいから聞け。このゲームのルールは、質問と同時に一人ターゲットを決めてのりを投げつける。そののりに当たった人は、質問に答え、また自分が質問すると同時にのりを投げつける。」

「・・・マジ?」

「コレがあいつのいってた ゲーム だ。」

ぎゃあああああ!まじで!?

私はこの時、あることを思い出しました。

むこう(外国)で言う game には 狩り という意味があることを。

私達は、彼女にとってまるで
獲物のような存在。

「あいつは・・・悪魔だ。」


私達は彼女の方をみました。

満足そうな笑みを浮かべ、彼女は ゲーム を鑑賞していました。

そして、ゲームは淡々と進められていきます。

呆然としていると、M子が私の肩を叩き小声で叫びました。

「オイ!次、私達のところにくるよ!」

「えっ!」

「今、目があった!間違いない!」

早いよ!
展開が早過ぎるよ!

そして次の瞬間。


「 What animal do you like the best ? 」


シュッ!


本当にきたあああああああああああああああああああ!!!!




M子の言った通り、質問と同時に私達めがけてのりが飛んできたのです。


さぁ、どうする!?


−続く−



戻る  進む