プロフィール L I N K 個 展 M A I L 埋草記 木 版 画 T O P

 

 

               暗闇胸に手をおいて

 

                

 

   農地解放時の村の寄り合いで、ある老人がこんな話をした。                   

   「人間一人一人をとって見れば、正しい事ばかりはしておらん。人間三代の間には

   必ずわるい事をしているものです。 だからお互いにゆずりあうところがなくて

   はいけぬ」そして、「正しいことは勇気をもってやりなさい。」と云われた。

   そして、「皆さん、とにかく誰もいないところで、たった一人暗闇に胸に手を

   置いて、私は少しもわるいことはしておらん。私の親も正しかった。祖父も正し

   かった。私の家の土地はすこしの不正もなしに手に入れたものだ、とはっきりい

   いきれる人がありましたら申し出て下さい」と云った。 するといままで強く自

   己主張をしていた人がみんな口をつぐんでしまった。 それから話しが行きづま

   ると「暗闇胸に手をおいて.....」と切り出すとたいてい話の緒が見出されたそうだ。

 

 

               

 

   宮本常一 著書参考