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-*小説『アンシリーズ』と『アボンリー』*-

「アボンリーへの道」はあの「赤毛のアン」に始まる
「アンシリーズ」と世界を共有している。
両シリーズに登場する人物は
マリラ、レイチェル、デイビー、ドーラ、ミュリエル、ハリソン、ギルバート、ジャドソン・パーカー
『赤毛のアン』に雑貨店を経営するローソンという人が
名前だけ出てくるけどこれはあのローソンさんのことかも。

しかし、両作品を観ているとどうも矛盾しているところがでてくる。
それゆえ『アン』と『アボンリー』は別物、似て非なるものと考えることにしました

ではどこがどう違うのか、気づいた分をまとめてみました。
もっとも、『アボンリー』は小説より映画の『アンシリーズ』(本国ではテレビドラマらしい)との
つながりが深く、映画版の方と比べてみると矛盾はグッと少なくなるかもしれません。
私は映画版はむか〜し一度観たかぎりなのでよくは分かりませんが…。

■ミス・ラベンダーとポールが…
  • 「アボンリー」の『うわさの恋人』で噂好きのご夫人たちが
    “ポール・アービングがアメリカから帰ってきた。ミス・ラベンダーはいまだに独りだ。”
    というようなことを言っていますが、「アン」ではこの時にはとっくにミス・ラベンダーはポールの父と結婚し、ポールも連れてアボンリーを離れている。
■レイチェルとハリソンさん
  • 「アボンリー」ではレイチェルとハリソンさんは昔土地の買い上げに関してのいざこざがあったことになっているが、『アン』ではそんなことは描かれていない。
    そもそもレイチェルの土地は借金の抵当として手放されており、その借金の相手はハリソンさんではない。
    その土地が誰にいくらで渡ろうとレイチェルとは関係がないのでは?
■悪辣ハリソンさん
  • 「アボンリー」ではマリラの遺言の不備でグリーン・ゲーブルズが宙に浮いた状態になり、それをハリソンさんが買い取りグリーン・ゲーブルズを取り壊そうとする。
    しかし「アン」ではアンとハリソンさんは仲がいいので、いくら口が悪く変わり者のハリソンさんでもそんなことはしないと思う。
■ハリソンさんの奥さん
  • 「アン」のハリソンさんには実は奥さんがいるが「アボンリー」ではいないみたい。
    たまたま画面に登場しなかっただけとも思えるが
    『友よ安らかに』でハリソンさんがケガをして寝込むのに登場しないのはやっぱり…。
■デイビーとドーラ
  • 「アボンリー」ではデイビーとドーラは第2期(1904年ごろ)でグリーン・ゲーブルズにやってくるが「アン」では1882年ごろに来る。やってくるいきさつ、年齢はほぼ同じ。
■マリラの年齢が?
  • 小説アンシリーズでは1905年ごろのマリラの年齢は85歳。ということは「アボンリー」スタート時では83歳くらいのはずだがそうは見えない。レイチェルもマリラと年が近いだろうけどやっぱり80前後には見えない。レイチェルはヘティとも年が近いという設定。ということはヘティも80歳近く?ヘティはミュリエルと短大で一緒だった、ということはミュリエルも80近い?
■マリラが…
  • 「アボンリー」第3期であのマリラ・カスバートが亡くなってしまいます。
    しかし「アンシリーズ」では彼女もう少し長生きします。
    ちなみに私は小説『赤毛のアン』を久しぶり、2度目の鑑賞中に『友よ安らかに』を観たもんだからすごく悲しくなりました。
■電話が…
  • 『友よ安らかに』でギルバートは電話をわざわざローソン雑貨店まで出向いて使用していますが(1905年ごろ)、
    『アンの夢の家』の冒頭には(1891年ごろ)グリーン・ゲーブルズにも電話があるという記述があります。

 

「アボンリー」は「アン」と舞台、登場人物が同じだけでなく、
小さなエピソードを拝借していたりします。

■呪われた家系
  • 『心にひびく歌声』に登場する老婆ロイドさんは自称呪われた家柄で、大火傷を負った赤毛の大おば、家が完成した日に首を折ったひいおじいさん、イスに掛けているときに脳卒中を起こしたおじさんの話をします。
    アンシリーズ
    『アンの幸福』に登場するトムギャロン邸のミス・ミネルバはやはり呪われた家柄で、赤毛のおばが大火傷、家が完成した日にひいおじいさんが首を折り、姉がイスに座っているときに脳卒中…その他さまざまなエピソードを話してくれます。
■アームストロング親子
  • 『二人の求婚者』でオリビアとジャスパーが納屋で雨宿り中、やもめ暮らし、無愛想なジム・アームストロングとその息子テディとペットの犬が登場。
    オリビアとジャスパーは子どもから父親手作りのお菓子をもらいジャスパーはその子の写真を撮ります。
    『アンの幸福』ではアンが学校の生徒と寄付を募るため住宅地を歩いて回り(途中雨宿りもするが親子との出会いとの関係はない)、やもめ暮らし、無愛想なジェームズ・アームストロングに寄付を断られるがその息子テディーと犬が現れます。
    アンはテディーから父親手作りのお菓子をもらい、アンの連れの生徒は子どもの写真を撮る。
■取り違え
  • 『ある母の愛』で実はフェリシティとサリー・ポッツは生まれた直後お互い取り違えられて育てられてきたという驚愕の(?)事実が発覚します。
    『アンの愛の家庭』にはアンの娘ナンがタチの悪い学友に“実はナンはブライス家の娘ではない、看護婦が別の子と取り違えたんだ”といわれて騙されるエピソードがあります。

    あと篠崎書林出版の短編集『ルーシーの約束』に収められている“わたしは秘密を知っている”も同じ話です。先に書かたのは多分こっちの方です。

「アボンリー」は『アンシリーズ』の…というよりモンゴメリの短編集の
『アンの友だち』かなり、参考にしたようです。
ただし「アボンリー」は中心的な話は同じでも、原作には登場しない
キング家の人たちを話に絡ますやり方が巧みで、上手く脚色されていると思います。
それとキング家の子どもたちが登場する分、話のユーモア度が上がっています。

ちなみに『アンの友だち』の挿話の一つに“ロムニー・ペンハロー”なる人物が出てきますが
「アボンリーへの道」の『はるか昔の恋』に登場するロムニーとは別人みたいです。

▼ロイド老嬢
  • 挿話『ロイド老嬢』は昔金持ちだったけれど今ではすっかり貧乏になってしまったロイド・マーガレットが昔の恋人の娘で歌手のシルビア・グレーのために一肌脱ぐ、というお話です。
    この話はロイド老嬢視点で描かれており、『心にひびく歌声』のセーラやペグ・ボーエンのようなロイド老嬢の背中を後押しするキャラクターは登場せず、彼女は自発的に行動します。
    あと『ロイド老嬢』のロイド家は呪われた一族ではありません。
▼オリビアおばさんの恋人
  • 『オリビアおばさんの恋人』はオールドミスできれい好き、几帳面なオリビア・スターリングおばさんのもとに昔の恋人マルコム・マクファーソンが帰ってきて結婚を申し込む。しかしマルコムは無骨な男で家を散らかして泥のついた靴で上がりこむ無神経さで、我慢の限界になったオリビアおばさんが婚約を破棄するが…というお話。
    このお話には語り手として女の子の姉妹が登場し、最後には馬車を出してオリビアおばさんの手助けをします。『アビゲールの求婚者』のアレックとジャネットのような夫婦は登場しません。
▼“かわいいアンジェリーナ”
  • 『“かわいいアンジェリーナ”』はオールドミスでガミガミばあさんのアンジェリーナ・ピーター・マクファーソンが日曜学校を教えることになり、欠席した生徒ジミー・スペンサーが使用人として働いている家に乗り込んでみるとそこは天然痘のために隔離中だった。そしてその家の主の偏屈じいさんアレグザンダー・エイブラハム・ベネットとの共同生活が始まり、始めは仲違いしていた2人も徐々にいい仲になり、結婚することになるというお話です。
    『すてきな看護婦さん』のようにこっそり子供たちも忍び込んでいたということはありませんがブレアという医者や犬のミスター・ライリーは登場します。

 

短編集『アンをめぐる人々』からは2話ほど拝借しています。
ちなみに『アンの友だち』と『アンをめぐる人々』には
アンは脇役で登場したり、名前だけ出てきたり、一行くらいの登場だったり
全く登場しなかったり、アンが一人称で語る話もあります。
時代設定もアンは少女時代だったり、青春時代だったり
結婚後だったりと様々。
舞台もアボンリーだけでなくアボンリー周辺の町というのも多くあります。

▲ひょうたんから駒
  • 『ひょうたんから駒』は結婚しなかったことは気にしていない、しかし結婚する機会がなかったことは気にしているオールドミスのシャーロット・ホームズのお話。正直者の彼女ですが、裁縫クラブの場で、結婚しなかったことに関しての隣人の嫌味に耐えかねて実は昔“セシル・フェンウィック”という恋人がいた、という嘘をついてしまいます。“セシル”は彼女が気に入っている名前、“フェンウィック”はたまたま目に入った新聞広告<かぶれないフェンウィック膏薬>からとったもの。やがて例のごとく生身の人間“セシル・フェンウィック”が登場、シャーロットの嘘に気づきセシルは彼女の家に乗り込みますがその場で和解、そしてその後結婚します。
    『うわさの恋人』のセーラのようにお節介な若い女性が登場しますが、それほど重要な役ではありません。というか『うわさの恋人』のセーラもあの話ではそんなに重要な役どころではない?
▲ジェーンの赤ん坊
  • この話は、妹が駆け落ちしたためそれ以来仲が悪く10年もの間口をきいていない中年の姉妹のお話。いとこが急死したのでそのいとこの赤ん坊を引き取ることになるのですが、姉妹が赤ん坊の取り合いを起こします。そうこうしている間に二人はついに仲直り、赤ちゃんは姉妹2人で育てることになります。
    『アビゲールの赤ちゃん』のように赤ちゃんを欲しがっている夫婦は登場しませんし、赤ちゃんをかっさらう子どもも登場しません。

 


以下は篠崎書林から出版されているNew Montgomery Bookesシリーズからの
発見です。

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『続アンの村の日々』と『アンの村の日々』(THE ROAD TO YESTERDAY)は
モンゴメリの死後に発見された短編を集めたもので、比較的最近刊行されました。
この中にはアンには大きくなった孫がいるという話が
チラッと出てくるのでアン好きには興味深いかも。

∇仲直り
  • 『仲直り』には30年前のダンスパーティーで意中の男性を奪ったとかで(一方的に)ずっと仲違いしている2人の中年女性が登場します。
    『アビゲールの赤ちゃん』のヘティとレイチェル・リンドは30年後に何とか仲直りしますが、この話では結局仲直りはせず、むしろ溝が深まる結果になってしまいます。