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-*『ストーリー・ガール』*-

『ストーリー・ガール』(The Story Girl)は1911年に最初に出版された作品で、
短編集ではなく一つの作品となっている。

『アボンリー』はこの作品にあるエピソードも元にして作られていますが
何より目を引くのは基本設定。
その基本設定は『アボンリー』の原作というべきもので、
『アボンリー』で見かける人物の名前も多く見みることができる。

あらすじは、ベバリー・キングとその弟フェリックス
父親が仕事でリオデジャネイロへ行くことになり、
2人の兄弟は父のふるさとであるプリンス・エドワード島カーライルの
キング農場に預けられることになる、というもの。

キング農場にはアレック(多分本名はアレクサンダー)ジャネット(44歳)の夫婦がおり、
ダン、フェリシティーセシリーという名前の子どもたちがいる。
キング農場の近くにはおじのロジャーとおばのオリビア(28歳)が住んでいる(共に未婚)
そこにはいとこのストーリー・ガールことセアラ(誤植じゃないよ)・スタンリーも一緒に住んでいる。

──登場人物──

●ベバリー・キング=“ぼく”
13歳。愛称ベブ。父親の名前はアラン。母親は物心つく前に亡くなっている。この話の語り手で、『ストーリー・ガール』は彼の回想ということになっている。カーライルに来る前はトロントに住んでいた。
●フェリックス・キング
ベバリーの弟。太り気味だということを気にしている。『アボンリー』のフェリックスとは違い、どちらかというと生真面目な性格。彼の名前はおじのフェリックスからとられている。
●セアラ・スタンリー(スペルがSaraかは不明)
『ストーリー・ガール』の中心人物。14歳と子どもたちの中では年長。そのためか『アボンリー』のセーラより無茶な言動がやや少なくなっている。父ブレアは絵描きでパリにいて、たまにパリ製のドレスや彼が描いた絵を贈ってきてくれる。母はフェリシティー・キングですでに他界している。(多分スタンリー家側の)ルイザというおばもいる。彼女はいつも“ストーリー・ガール”と呼ばれており、その理由は 1.話をするのがとても上手で彼女の話してくれる物語は不思議な魔力が備わっている 2.友だち仲間に同じ名前の“セアラ・レイ”という子がおり紛らわしい 3.彼女自身が自分の名前が好きではない から。
●フェリシティー・キング
12歳でセシリーとは一つ違い。美人でおしゃれに気を使っていて料理がとても上手でちょっと意地悪なところがある、と『アボンリー』のフェリシティとほぼ同じ。彼女の名前はおばのフェリシティーからとられている。
●ダン・キング
13歳。フェリシティーとよく口ゲンカをする。わんぱくというやつ。『アボンリー』のフェリックスのモデルはどちらかというとこっち。
●セシリー・キング
11歳。愛称はシス。いい子で優しくて平和主義。ただし『アボンリー』のセシリーみたいにおとなしい子というわけではない。
●ピーター・クレイグ
ストーリー・ガールの家で働いている雇い人。母親は離れて暮らしており、父親は昔失踪。『アボンリー』のピーターとほぼ同じ。ただし『アボンリー』の「魔女の妙薬」で見られるように子どもたちから雇い人ということで見下されている、ということはない。フェリシティーだけは微妙だけど。
●セアラ・レイ
11歳。臆病でオドオドしていて、よく泣く。ケチで口うるさい母親がいる。早い話がクレミー・レイ。兄はいないみたい。
この作品は大人たちの出番は『アボンリー』と比べて少ない。また、彼らが住んでいる町の社会的、地域性の描写も少なく、例えば学校や噂好きのご婦人たちの登場もほとんどない。というわけで大人たちの紹介は省略。

 


以下が『アボンリー』が影響を受けたと思わしき場面。
章ごとに取り出してみました。
そのまんま『アボンリー』に転用されているところは少ないです。
#キング果樹園(第二章 ハートの女王)
  • キング家は果樹園も所有しており、新しい命が誕生したときや何かの祝いごとがあると記念木が新たに植えられる。すっぱくて食べられないリンゴの木も一本ある。

(魔女の妙薬)

#ピーターの宗派(第四章 高慢ちき姫のウェディング・ベール)
  • ストーリー・ガールがピーターを教会に行くよう勧める。ピーターは長老派にするかメソジスト派にするか迷っている。このことでフェリシティーのちょっとした攻撃もある。

(魔女の妙薬)

#ピーターの失態(第五章 ピーター教会に行く)
  • ストーリー・ガールに説得され、教会に行くことになったピーター。穴のあいた靴下しかないので彼は靴下を2枚重ねにする。献金様の1セントをダンから借りる。ピーターは教会であることをきっかけに大笑いをし、連れであるキング家の子どもたちに大恥をかかす。

(魔女の妙薬)

#図書館建設資金(第六章 黄金の一里塚の謎)
  • 子どもたちは図書館建設資金を集めるために手伝いをしたり寄付を募るために各家庭を周ったりする。この時“ぶきっちょさん”ことジャスパー・デイル(40歳。カメラは持っていないみたい)の家も訪問。ノベライズ版『アボンリー』にもあったジャスパーの秘密の部屋の話も出てくる。

(ストーリー・ガール誕生、秘められた悲劇)

#富豪キャンベル(第七章 ベティ―・シャーマンはどうして夫をつかまえたか)
  • 図書館建設資金のためキャンベル氏の家をたずねる。彼は富豪の農夫で気難しい人物だという噂。しかしストーリー・ガール得意の物語りでキャンベル氏を満足させ寄付金をもらう(5ドル)。幻燈会云々の話はない。

(ストーリー・ガール誕生)

#ぺッグ・ボウエン印の魔法の種?(第九章 魔法の種)
  • ベバリーは皆に内緒で“飲むと背が伸びるという魔法の種”を学校の子どもから10セントで購入していた。彼が言うにはぺッグ(誤植じゃないよ)・ボウエンからもらったらしい。しかしみんなも似たようなうたい文句で魔法の種を購入していたことが発覚。魔法の種はペテンだったのだ。
    ちなみにみんなの願いごとはフェリックス:ほっそりした体になりたい ダン:唇の形をよくしてほしい(彼は唇の形が悪い) セシリー:髪を天然カールにしたい セアラ・レイ:ぺッグ・ボウエンを怖がらなくなるようにしたい フェリシティー:ストーリー・ガールのように賢くなりたい ストーリー・ガール:フェリシティーのように料理上手になりたい ピーター:フェリシティーが自分を好きになってくれる

(プリンス・エドワード島へ)

#幻燈会(第十章 イブの娘)
  • 幻燈会が開かれることになるが、セアラ・レイは母親に行くことを禁止される。はしかがうつる可能性があるというのだ。しかしストーリー・ガールが(当日セアラ・レイの母親は外出するので)黙っていれば大丈夫、とセアラ・レイをそそのかして幻燈会に連れて行く。ストーリー・ガールが幻燈会で朗読する、ということはない。

(ストーリー・ガール誕生)

#はしか疑惑(第十一章 ストーリー・ガールの苦行)
  • 幻燈会に行った10日後、セアラ・レイが病気にかかる。寒気がしてのどが痛み、熱があるのだ。レイ家でははしかはいつもひどく重くなるらしい。しかし後にただの夏風邪だったことがわかる。

(ストーリー・ガール誕生)

#大人たちの外出(第十二章 レイチェル・ウォードの青い長持ち)
  • アレック、ジャネット、オリビアが親戚の結婚式のために1週間家を空けることになった。その間ストーリー・ガール、ピーター、ロジャーおじはキング農場に泊まることになる。ロジャーおじは農業の仕事でほとんど家にはおらず、実質子どもたちで過ごすことになる。フェリシティーが家を監督することになり彼女は大喜びする。『留守番は大混乱』のように取っ組み合いのケンカが起こったりすることはない。
    ストーリー・ガールがキング農場台所に置いてある青い大きな箱について語ってくれる。50年前親戚のレイチェル・ウォードが結婚式当日、婚約者に逃げられたというお話。悲痛のレイチェルは嫁入り道具を箱に詰めて島を出ていったのだった。

(留守番は大混乱、秘められた悲劇)

#毒入り?(第十四章 禁断の実)
  • 両親の留守中あれこれ指図するフェリシティーにダンはいらつく。ダンが毒入りだという噂の“こわい実”を何気に手に取ったところ、フェリシティーに偉そうに食べるなと言われ、カッときたダンは“こわい実”を食べてしまう。彼はこの後激しい胃痛(?)に襲われるが『留守番は大混乱』のようなフェリシティーの無茶な家庭療法は行われない。
    ダンは次の章でも“こわい実”を食べるがこの時は何ともない。結局“こわい実”が本当に毒入りかははっきりしない。

(留守番は大混乱)

#おがくず入りプディング(第十七章 プディングの味)
  • 意図せずしておがくず入りプディングが作られてしまうが、それを作ったのはフェリシティーではなくストーリー・ガール。トウモロコシ粉と勘違いしたんだとか。『留守番は大混乱』では口にしたとたん気付いたがこの話ではみんな最後まで食べる。もちろん変な味には気付いたが苦手な料理を1人で完成させたと得意になっているストーリー・ガールへの気遣いがあったため何も言わなかったのだ。
    予期せぬ来客にこのプディングを振舞ってしまう…ということはない。

(留守番は大混乱)

──以下、『ストーリー・ガール』下巻──
#この副題は?(第十八章 キスはどのようにして発見されたか)
  • 話の内容はだいぶ違いますけど、この章のタイトルって『アボンリー』の“フェリシティの初恋”の原題“How Kissing Was Discovered”を訳した物と同じですよね?

(フェリシティの初恋)

#ミルクとキュウリ(第二十三章 夢はそんなものでできている)
  • 全然関係ないけどこの章で“ミルクとキュウリを一緒に食べると毒になる”という記述がありますけど本当なんですかねぇ?実際セシリーの具合が悪くなっていますけど…。
#魔女の呪い?(第二十四章 呪われたパット)
  • ストーリー・ガールの家で飼っている猫が原因不明の病気にかかる。ピーターの話ではこれはぺッグ・ボウエンが呪いをかけたのだという。子どもたちは贈り物と手紙でペッグに呪いをといてもらうようお願いに行く。
    『アボンリー』でもこんな話がありましたよね?フェリックスの犬だったか猫だったかがペグ・ボーエンに呪いをかけられる(?)話が…。「アボンリーの魔女」でしたっけ?よくおぼえていません…。
    なお『ストーリー・ガール』ではペッグ・ボウエンは名前や彼女にまつわる話は度々出てくるものの、実際に登場するのはこの章だけ。そして登場したとたん子どもたちは慌てて逃げてしまうので一言のセリフもく、一瞬だけの登場で終わる。結局彼女は謎の存在である。

(アボンリーの魔女<?>)

#ピーターが病気(第二十九章 恐怖の影)
  • ピーターがはしか(風邪も併発)にかかり危険な状態になり普段は離れて暮らしている母親も付き添う。キング家の子どもたちは過去のピーターへの非礼(『アボンリー』のようにいじめてはいない)を詫びたり、ピーターの良いところを口々に語る。『アボンリー』では学校の生徒から病気をうつされるがこの話では里帰りした時訪れた町からもらってくる。
    『アボンリー』ではペグ・ボーエンの薬によってピーターは快復するが『ストーリー・ガール』では普通に医者の手当て(と子どもたちの祈り)によって治る。
    (“第三十一章 光と闇のはざまで” で)ピーターが快復した後果樹園で快気祝いのピクニックが行われるが記念木の植樹はない。

(魔女の妙薬)

#青い箱(第三十二章 青い長持ちが開く日)
  • 青い箱の持ち主レイチェル・ウォードが亡くなったとの知らせが入り、50年ぶりに箱が開かれることになる。中はウェディングドレス、手紙、瀬戸物類…その他色々。
    もちろん殺人の話や宝石が隠されているなどの話はなく、入っていた手紙は遺言通り誰の目にも触れずに燃やされる。

(秘められた悲劇)


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