追跡開始。〜部長・マネージャー不在〜 / 萩原じゅん@何とかしないと…(汗)

氷帝学園中等部、朝。

「……若、来ないな」
「あぁ」
「椿ちゃんも……どうかしたのかな?」
「わからない。―――あ。鳳。お前、ケータイ鳴ってるぞ?」
「え? あ、うん」


「もしもし? あ、宍戸さん。…え? 滝先輩も? ……はい。若も椿ちゃんも来てないんですけど……芥川先輩も?」

「……どうかしたのか?」
「滝先輩も来てないらしい。芥川先輩も、最近はハニーさんに連れられてちゃんと朝練出てたのに今日は出てない、って」
「……何かあったのか?」
「わかんないけど……」


「とにかく、朝練始めておくか。俺たちがこんなとこで気を揉んでいても仕方ないだろうからな」
「あ、そうだな」


納得いかない顔をしながら、長太郎くんと樺地くんはレギュラー、準レギュラーに指示を出し始めた。
テニス部の朝練習は、部長、マネージャーの姿無しに始められた。

No.167 2003/05/16(Fri) 07:52

  翌日のハニーくん。 / 萩原じゅん
 

ハニーくんは結局、夜中泣いてた。
今は、部屋で眠ってるけど。
意味はわからなかったけれど、でも、すごく悲しそうだった。


「……」
 お父さん。ハニーくんは?
「あぁ。心配は無い、…と思う。一応、今日は学校を休ませるがな」
 そっか……ジローくんは?
「今日は休む、と言っている。あまり望ましくは無いがな。その方がいいかもしれん。埴井も起きたとき芥川がいた方が安心するだろう」
 そうだね。
「とりあえず、俺は滝の家に寄って、学校に行くが……」
 滝くん家? 何で???
「蓮先輩に挨拶をしなくてはな。昨日は、あの人がいてくれて良かったし」
 そうだね。


蓮翠さん、どうしたんだろ。
何だかすごく、悲しそうな顔してたけど。……何か、知ってたのかな。
それで、お父さんは仕度を整えて家を出た。


「……監督は?」
 あ。ジローくん。…今ね、学校に行ったけど? ……ハニーくんは?
「うん。今は眠ってる。でも、どうしたんだろ……ハニー、いきなりあんな……」
 大丈夫だよ。昨日、蓮翠さんが言ってたじゃん。芸術的な能力の強い子は、感受性が高い分、いろんなモノに心を乗っ取られやすい、って。それに、ハニーくんにはジローくんがついてるし。
「……うん」
 ほら。ハニーくんが起きたとき安心出来るように、ずっと側にいてあげなさい。
「ん。わかった」


一応、お腹空いてても大丈夫なようにお粥くらいは作っておきましょう。

No.168 2003/05/16(Fri) 08:04

  滝家の朝。 / 萩原じゅん
 

「昨日は助かりました。本当に、ありがとうございました」
「あら。いいのよ、そんなこと」


ちょっと悪いかな、と思いつつ。
滝家に行ったお父さんのことを盗聴してみたり。
お父さんの向かいに座った蓮翠さんは、やっぱり笑ってたけど、目は泣き腫らしたみたいに真っ赤だった。


「……ところで、さっき鳳から連絡を受けたんですが。日吉と滝と滝茸はまだ、登校してないとか……」
「……えぇ」
「もうそろそろ家を出なくては、遅刻になりますが……」
「えぇ。そうね。……でも、萩之介と若くんはともかく、椿は……無理ですわね」
「? 滝茸が何か?」
「……ごらんになります?」


スッと立ち上がった蓮翠さんの後について、お父さんは奥の部屋に通されました。
畳に敷かれた、一式の布団。それを取り囲むように、滝くんと若くんとぷちめそちゃんがいます。
そして、布団で寝ているのは……


「滝茸?」

ほとんど死んでる、みたいな椿ちゃんでした。

「どうかしたのか?」
「っ、めそこのせいですよ! めそこがわるかったんですよ!! めそこのせいで、さちちゃんが……!!!!」
「……さち?」
「椿の、本当の名前だそうです。昨日、消える寸前に聞いたんですよ」
「……消える?」
「色々、あったんです。昨日は」
「それは埴井の件と……」
「関係あるでしょうね、多分」


そして、滝くんは昨日あったことを全て、順序立てて、お父さんに話したのです。

No.169 2003/05/16(Fri) 08:15

  幸ちゃんの状態。 / 萩原じゅん@時間切れ…学校行ってきます……(泣)
 

「氷帝の杜の守り人? 滝茸が?」
「……はい」
「それじゃ、この子は……」
「人間じゃ、ないです」


ゆっくりと話して、お父さんに全部を知らせた滝くん。
椿ちゃんが、守り人だということ。
だから、不思議な力を持っていたということ。
そして昨日、ぷちめそちゃんと喧嘩したということ。
杜の中で鬼に襲われたぷちめそちゃんを、椿ちゃんが助けたということ。
その力の消耗の所為で、眠りについたこと。
やっと思い出した本名だけを残して、そして椿の木に、身体が変わってしまったこと。


「……では、この子は?」
「……俺たちにもよくわからないんです。幸が眠りについて、椿の木に変わってしまって……ちょうどそのとき、何かが割れるような音がしたんです。すごく澄んだ音でした」
「きれいな音だったですよ。そしたら、さちちゃんが、つばきの木の下にたおれてたですよ」
「……何かが、幸を助けてくれたみたいでした。それが何なのかは、わからなかったんですけど」


ぐったりとした椿ちゃん……じゃなくて、幸ちゃんを背負って、慌てて家に帰った。
お母さんに言って薬を飲ませて、布団に寝かせて……それからずっと、こんな風に眠ってる。


「……起きるのか?」
「多分。お母さんに聞いても、こんなことは初めてだ、って言ってたから、それも自信は無いんですけど……でも、多分起きます」
「そうか」


お父さん、少しほっとしたのかな?
顔から、焦りの色が少しだけだけど、無くなってる。


「……今日は、お前たちも休むか?」
「も?」
「芥川と埴井も休んでいる」
「……お願いします」


わかった。
頷いて、お父さんは一人、学校に向かった。

No.170 2003/05/16(Fri) 08:27

  …チチチ。 / ルー
 

ああ、やっとお日様が帰ってきてくれた。
まだ空は雲がたくさん。それでも雨は止んでくれた。
また杜は元通り、優しくて暖かくて…深く眩しい緑に覆われている。


杜で一番高い木の、その一番高い枝に登ってみる。
遥か遠くに、雲の間から少しだけ大好きな空色。


椿。
みんなそう呼んでいた。
だって椿だったんだもん。


ただ、頬をその花みたいに綺麗に赤く染めて。あたしたちを見つめて笑っていてくれたあの子。

さわさわと、木々が揺らめく。

あの子のほんとの名前は 「さち」
「さち」
「さち」
「さち」


優しい風に揺れながら、その風に乗せるように囁いてる。


誰かが「つばき」を「さち」に戻した。
あたしが昇ってる木の幹から声がする。
あらあんた、起きてたの。
もちろんさ。おまえのその短い尻尾がくすぐったくてな。
…ちぇーだ。


出来たばかりの新しい葉たちが、そうっと私を包む。

よかったな。ルー。
…そうね。


だってさ。ワカシが悲しむなんてイヤだったんだもん。

さあ、あとは。
あの子の「ココロ」がどこまで強いのか。それを見せてもらうだけだな。
…そうなの?
そうとも。そして、あの子の「カゾク」がどこまであの子を想ってくれるか。
…想うの?
そうさ。…ああ、あの子のそばには「レン」がいたな、そういえば。あの「レン」の血を受け継いでる子どもがいただろ。
…そうね。
なら。…きっと、きっと。


そうね。きっと。

No.171 2003/05/16(Fri) 08:53

  優しい朝。 / 蜜屋文子@今日は1日探偵。
 

おはようございます。
昨日は家に帰ると空気が濁ってて、すごく妙な感じでね。
ハニーちゃん、倒れてるし、太郎さん怪我してるし。動転しちゃったよ……。
と、思ったら、めそちゃんが佐藤連れないで帰って来て。太郎さんの膝に乗ったまま、季楽君と寝付くまでしりとりしたり。
見えない所で何かが動いてる。
なのに。
朝起きたら、何だか家の中の空気は和らいでて。
めそちゃんも、ちゃんと起きて、滝君ちに行きました。太郎さんと一緒に。


私は、今日は用務員を休んで、氷帝の歴史資料室に潜伏する事になりました。
椿ちゃんは、本当は「幸」って言うんだって。
それを調べるの。
――滝君と、若と一緒に。


「幸が、どうしてここにいたのか」
「椿は、どうして消えたのか、ちゃんと、知りたいんです」


うん。調べようよ。

今日の氷帝の杜は凪いでいました。
資料室の窓の傍の木に、ルーちゃんと、リスと、ハロがいました。
杜を見張っててくれてるみたいです。
今日は、頑張らねば!

No.172 2003/05/16(Fri) 09:11

  御神木ってあるよね。 / 蜜屋文子@今日は1日探偵。
 

昨日の話を、滝君から詳しく聞きました。
ぴんと来たのは、氷帝の杜の奥にある、御神木です。


「御神木?」
随分奥にあるし……最近じゃ、学長先生くらいしか拝みにいかないんじゃないかなぁ。
「じゃあ、御神木の資料を探せば……」
出てるかも。「幸」ちゃんについて。
「……ここに、あるよ―?」
滝君、神経が張り詰めてる感じ。
「滝さん」
「うん。大丈夫だよ―…」
こういうとき、冷静なのは若なんだね。
文献が古いので白手を履いてページをめくります。
「どこにあるのか……わかるのなんでかな」
「わかるんですか?」
「うん」


少し、埃っぽい文献をめくると、そこには、「幸」という名前がありました。

「……娘?」

だ、誰の?

No.173 2003/05/16(Fri) 09:20

  お花咲いてますよ〜。 / ハロなんです〜@お久しぶりです。
 

御神木を見に行けって、榊さんが言うので〜、ひとッ飛びして見に行ったら〜。

花が咲いてたんです蜜屋さ〜ん。

て、資料室に入ろうと思ったら、窓、閉まってました〜…。

「ハロ……なんでそんなに落ち着きないのよ……」

それはアナタのハロだから〜。

「御神木に、花?」

そうです―。
季節外れに椿が―。


「椿―?」

氷帝の御神木、椿なんですよ〜?
ご存知なかったですか〜?


「木の種類については書いてない。ただ、「幸」が、昔の学長の娘だっていうのは、わかった」

そうだったんですか―。
じゃあ、御神木自体が、「幸」ちゃんの体を借りて、現世にいたんだとしたら〜。


「「幸」本人の意識は、あるって事か?」

たぶん〜。

「……ねぇ、何話してんだか通訳してよ……」

アナタ面倒ですねぇ〜。蜜屋さぁん。

「……ハロ、なんかムカつくこと言った?」

いえ〜、言いません〜。

でも、椿は春に咲くんですよ〜。桜より先ですかね〜。
文献読み終えたら、見に行ってみたらいいですよ。


ご案内します〜。

No.174 2003/05/16(Fri) 09:30

  教室では。 / 蜜屋文子@今日はすごそうだ。
 

「くすん」

鳳君かな?

「監督に聞いても、大丈夫だしか言わないし」
「……そうか」
「何があったのかなぁ。昨日、椿ちゃんとぷちめそ、喧嘩したって言ってただろ?」
「ああ」
「まだ喧嘩してんのかなぁ」
「喧嘩が出来るだけ、幸せだろう」
「何で?」
「好きでも嫌いでもない相手に、本気で怒ったり、意見したりしない」
「……うん」
「好きだから……言いたい事、言い合えるから、喧嘩も出来る」
「樺地」
「受け止めて貰えるって、見えない自信があるからだ」
「そう、かな」
「あの子達は、仲がいいだろ」
「うん。本当の姉妹みたいでさ。ぷちめそ、小さいくせにちゃんと姉ちゃんなのな!」
「だから、大丈夫だろ」
「そうだよな! きっと、ふたりとも知恵熱出したかなんかして、看病してんのかも!」
「めそも来てない所を見ると……そうかもな」
「前にも大騒ぎしたもんな、知恵熱でさ!」


持つべきものは気の知れた友。
君たちの友達は、今頑張っているよ!

No.175 2003/05/16(Fri) 09:49

  昨日の名残り / メープル@ハニーちゃんゴメンよ…
 


 …………ポロロン……♪

 あれ? ピアノの音だ。
 ハニーちゃんはまだ寝てて、ピアノは防音の部屋にあるはずなのに、なんで音が聞こえるんだろう?


 バタバタバタ
 ばん!


「メープルさん! ハニーがまたおかしいんだ!」

 え?

 あわててジロちゃんの後について走っていくと、ピアノ室のドアが開いていました。
 ハニーちゃん、迷惑かけちゃいけないって、いつもきっちり几帳面にドア閉めてから演奏するのに。


 パジャマ姿のままハニーちゃんが弾いていたのは。
 超絶テクニシャンの彼らしからぬ、やさしくゆっくりした旋律の、古い童謡でした。


「…シャボン玉とんだ♪ 屋根までとんだ…♪ 屋根まで飛んで、こわれて消えた…♪」

 ハニーちゃんの目はうつろでした。
 でも嬉しそうに笑っていました。


「さち、一回でいいからこれ、弾いてみたかったの…」

 その口から出た声は、女の子のものでした。

「うん、いいよ。気がすむまで弾いてごらん…?」

 それに応えるハニーちゃんの声も、同じ口から出ました。


「め、め、め、メープルさん、これってどゆこと?」

 いやジロちゃん、それは私に聞かれても。
 私、生体エネルギーが強すぎて、怪奇現象が寄り付かない体質らしいんで(マジ)。


 ただ私にわかるのは。

「のは?」

 ハニーちゃんがとびきりやさしい性質だってこと、かな?

「そんなの今更じゃん!!」

 だったら、いいじゃん。

「ほへ?」

 しばらく、ハニーちゃん貸してあげたら?

「う〜〜〜〜〜………」

 ジロちゃんは、しばらく葛藤していましたが。

「ハニー! 俺も混ぜて〜〜〜!」

 やがて、ハニーちゃんにむぎゅっとくっつき、3人(?)で音遊びを始めました。

No.176 2003/05/16(Fri) 12:00

  親が学校に呼ばれる理由。 / 蜜屋文子@長い停電だった(滝汗;)。
 

「滝と日吉、一体何やらかしたん」

おや? 高等部でしょうか。

「何だ」
「滝のおかん、見かけた」
「ちゃんと着物でさ!」
「本当か」
「嘘じゃないって! な、侑士!」
「あのキョーレツなおかんを見間違うわけないやろ」
「何やったんだ……」


今時、学校に親が呼ばれるなんてあるのかなぁ。

「日吉、住所変更するとか」
「ア―ン?」
「ほら、もうずっと滝んちじゃん」
「そんなんで親が来るかよ」
「ジローもハニーも休んでるしなぁ」
「中等部行くか?」
「メールする。それが早い」


宍戸君、おもむろに携帯を取り出してメールを打ち始めました。

今は、御神木に向かって移動中です。
もうすぐらしいけど。
ハロ、何だってアンタは私の頭に張り付いてんのさ。

No.177 2003/05/16(Fri) 14:01

  杜と少女。 1 / 萩原じゅん@現在学校。空き時間。
 

江戸と明治の変わり目。
……とは言っても、普通の市民にはそんなこと関係なくて。
ただ、その当時。日本はすごく、荒れていた。
どこに言っても、血の匂いが纏わりついて。
戦国の世が終焉してから、長い間姿を隠していた鬼や妖怪と呼ばれるものが、たくさん現れるようになっていた。
疫病も広まって、人がたくさん、死んだ。


その学校でも、生徒がたくさん、死んでいた。
学校、とは言ってもそんな立派な建物じゃなくて、ただ村の子どもたちが集まって読み書きそろばんを教えてる、っていうだけの、少しボロな家だった。
そこの家の主さま。……学長、って、資料にはそう書いてあるんだけど。
学長は、そのことをすごく悲しんだ。
一人、また一人と、教え子たちが倒れていく。


そして、その村のすぐ近くには、神が住むとされる、大きく、美しい杜があった。

No.178 2003/05/16(Fri) 15:08

  森と少女。 2 / 萩原じゅん@現在学校。空き時間。
 

学長には、数えで14になる娘がいた。
名を幸。
どうか幸せになるようにと、母親の祈りによって名付けられたものだった。


父である学長を、いつも笑顔で迎え、気落ちしている父を励ましていた。
幸は、母を亡くしていた。疫病が流行ってすぐ、元々身体の弱かった母は家族との別れもそこそこに、永遠の眠りについてしまった。
それからは、父と二人。それでも励ましあって生きてきた。でも。


「また死んだよ。これで、十人を越えた」

日に日に弱くなっていく父親の声に、幸は悲しく目を伏せる。
村の中も、だんだん淋しくなってきた。いつまでも聞こえると思った子どもの遊び声も、もう聞こえない。
聞こえるのは……



聞こえるのは、ただ唸るような風の音ばかりだった。

No.179 2003/05/16(Fri) 15:19

  森と少女。 3 / 萩原じゅん@現在学校。空き時間。
 

「少女を一人。神に献じよう」

そう言ったのは、村の巫女だった。
穢れを知らないままの、純粋でやさしい少女を、神の嫁に、さしあげよう。
巫女の言葉はそのまま村に伝わり、そして、嫁となるべく少女を選ぶことになった。
とは言え、疫病の流行の所為で少女の数も少なくなっている。そして、穢れも知らない、やさしい少女と言えば。
学長の娘、幸以外にはいないだろう、と。
そう、決定された。


折りしも。
巫女のその言葉が告げられたとき、学長は病に伏していた。幸は娘としてせいいっぱいの看病を続け、そして何とか快方に向かせようと必死だった。


「……嫁、ですか」
「あぁ。それも、ただの嫁ではない。神の嫁となるべく、杜に行くのだ」
「……杜」


それは、誰も口にはしないけれど。
みんなの為に死になさい、という。
その言葉と同じ意味だった。
幸は、病に伏した父を見た。
それで父が助かるなら、みんなが助かるなら、と頷いて。
それから、父の面倒を見てくれるよう約束をさせて。
そして、そのことを受け入れた。

No.180 2003/05/16(Fri) 15:28

  森と少女。 4 / 萩原じゅん@現在学校。空き時間。
 

ところで、幸には許婚というか、将来を約束した男がいた。
……男とは言っても、幸と同じ、14になったばかりの少年だったが。
名前を、イチと言った。貧乏だが人の良い家庭の一番上の子ども。だから、イチ。
幸とイチはまるで兄妹のように育った。それがいつからか、将来を共に過ごそうと誓う恋人同士となった。
イチは、幸が神の嫁になると聞いて怒った。
それが何を意味するところなのか、ちゃんと知っていたから。


幸が死ぬ。
みんなを助ける為という名目で、殺されてしまう。


イチにとって、それは許しがたいことだった。
そして。


イチは、幸を連れ去るようにして、逃げてしまった。

No.181 2003/05/16(Fri) 15:33

  森と少女。 5 / 萩原じゅん@現在学校。空き時間。
 

追手はすぐ、やってきた。
村の出口を人が固め、二人は杜に逃げるしかなかった。
朔の日だった。
明かりひとつ無い、暗い杜の中を二人は手を取り合って歩いた。
でも、幸の心はどこか遠く。
このままあたしが逃げればみんなは、父はどうなるのだろう、と。
そればかりを考えていた。


少女のそんな迷いに呼ばれたのか。
それとも、人の気配に気付いたのか。
鬼がひとつ。二人の後をこっそりとつけていた。


「……ッ!?」
「ひゃはははははははははははははははは!!!」


そのことに気付いたときにはもう遅く。
イチはその鬼に喉元をやられ、死んでしまった。

No.182 2003/05/16(Fri) 15:39

  杜と少女。 6 / 萩原じゅん@現在学校。空き時間。
 

幸は泣いた。
それでどうなるともしれない。
だが、泣かずにはおれなかった。
イチが来たときに、たとえどんなに辛くても突っぱねれば、イチは死なずにすんだのだ。
気落ちして、自分のことを恨んでも。
でも、死ぬことは無かったのだ。


少女は泣いた。
泣いて泣いて泣いて泣いて。
そして、杜の奥。
葉や草や花や。濃い植物の匂いに満ちた場所に辿り着いた。


「……あたしがここで眠れば、きっと、みんなは助かる」

そう思った。
何故かは知らない。
でも、確かにそう、感じていた。
そして、それは正しかった。
幸の身体が辺りに溶け、杜を包み、村を包んだ。
鬼や疫病、その他悪しきものは全て、幸の中に取り込まれ。
そして、杜と、少なくともその村だけは、全ての害意あるものから守られるようになった。


幸の最後にいた場所にはいつからか杉の木が植えられ、そして、生前に幸が愛した花、椿も、添えられるようにして植えられたのだった。


……。
氷帝の書庫の奥。
本当なら入っちゃいけない場所に入って、見つけた本。そこにはそう、書かれていた。


悲しい話だった。
聞いた話だと、椿ちゃんは……幸ちゃんは最後の、眠るその瞬間まで、このことは全て、忘れていたと言う。
その方がいいかもしれない、って思った。


だって、これがもし、全部本当のことだとしたら、それはあまりにも悲しすぎる。
幸ちゃんはずっと、一人で杜の中にいて、淋しかった。だから、やさしい気持ち、幸せな気持ちに惹かれて目を覚ますことがある。
目を覚ますきっかけになるその気持ちが、滝くんの家に限定されるのは死ぬその瞬間まで、彼女が父を心配していたから。
その父の血を、滝くんが引いているから。


だから、幸は目を覚まして。
滝くんの娘で、自分の姉のぷちめそちゃんを守って、眠ってしまった。

No.183 2003/05/16(Fri) 15:55

  長々とすみません…… / 萩原じゅん@授業始まるんで、行ってきます!
 

椿ちゃんの父で学長と言うその人は、現在の学長とは遠い血縁にあるらしい。
三代目の学長がどうも重い病にかかり、その座を譲ったのが始まりとされている。
つまり、世が世だったら、滝くんが学長になるかもしれなかった、ってことかな。


でも、四代目になる権利を持った男は、学長になる道を選ばなかった。
少しでもその、幸に近づこうと、そう思ったらしい。
それから、滝くんの家はああやって、霊媒関係の仕事も始めたのだった。


幸ちゃんはまだ、眠ったままらしい。
それでも、ちゃんと息をしていて、それから、これには驚いたんだけど。
呪詛を編みこんだリボンをしなくても、若くんにはしっかり、幸ちゃんの姿が見えるらしい。


寝顔も安らかで、ときどき、楽しそうに笑っている。
まるで、幸せな夢を見ているみたいに。
やわらかに、笑っているらしかった。

No.184 2003/05/16(Fri) 16:02

  滝母と合流。 / 蜜屋文子@読み応え満載……!
 

怖いよぅ。こういうのダメなんだよ……。

「蜜屋さん」
何よう。
「弱ってると憑依されるよ」
……滝君、語尾が伸びてなくて怖い。
「これを持っているといいわよ」
「母さん」
「うちの椿の枝なのよ」
「……うちの?」
「ここから、株分けしたのよ?」


白い着物を着た滝母。
目の前に、巨木に巻きついて咲く椿がありました。


「みごとな赤ねぇ……」
「お義母さ……」
「若ちゃん、見えてるのね?」
な、何が?
「家の中が……見えるんです……」
「季楽が来たみたいだね―」
「めそと、ぷちめそが、季楽に膝枕されて寝てる……」
「「幸」も」
「……笑ってるね……」


わ、わかんない。ハロ、怖いんだけど!
「きゅ―」
ああ、アンタの言葉もわかんない!


「椿も、「幸」も返して貰うわね?」
「母さん。椿は……もう」
「どんな人格があってもいいじゃないの。現世に戻って、また生きたいなら」
「「幸」の中に、椿を残すの?」
「表向きは、残らないかもしれないけど……椿が好きよ? だから、戻って欲しいの。優しい椿に」


そう言って、滝母が何かを書いたお札を、椿の前で燃やしました。

「あのお札、亡骸の代わり……」
「え……?」
「心は、残る物なんだ。どんな形であれ」


滝君は、若の手を取りました。

No.185 2003/05/16(Fri) 17:18

  一緒に帰ろう。 / 蜜屋文子@見てはいけないもの。
 

杜が凪いでいました。
ルーちゃんも、リスも、ハロも、その他たくさんいる動物たちが、傍にいました。
とっても、不思議な光景でした。
みんなで、咲いている椿の花を、ひとつずつ、落として。
ひとつも残さず、木から落として。


「咲く時期を、間違えないでね。椿」

春に咲く花。
真っ赤に咲く花を折ると、妙に寂しげだったのに。
突然、私の携帯が鳴りました。
ここ、圏外のはずなのに!


『お姉さん、俺』

季楽君だ!

『3人とも起きたけど、まだ帰らないの?』

3人の目が覚めた――!!

「どうして……花を折っただけなのに……」

全部の花が落ちたら。
椿の木が。砂が飛ぶように、枯れました。


「本当の御神木はね、この巨木」
「え……?」
「苦しかったでしょう? 「椿」」
「こっちの木が……「椿」?」
「あなたに絡む悪い物は、全部なくなったのよ」


滝君のお母さん、泣いてるの?

「私が学生の頃も、椿は出て来たの」
「聞いたよ」
「元に戻してあげられなくて。とっても後悔したわ」
「お義母さん……」
「私の家に、来て頂戴ね……? 「椿」」


にっこり笑った滝母は、私の携帯を取り、

「お留守番ありがとうね?」

と、季楽君に声を掛けました。

No.186 2003/05/16(Fri) 18:48

  どんなときも。 / 蜜屋文子@突然絶好調。
 

「あ―!! くそっ!!」

ウヲ!
いきなり盗聴器が! 今まで砂嵐だったのに―!!
この声は宍戸君!?


「行くぞ! 長太郎!」
「い、行くってどこへですか!?」
「滝んちだ! アイツ、連絡くらい寄越せっての!!」


宍戸君、今頃はスクールのハズ。

「何かあったら言ってくるやろ。大人しく待っとき」
「でもさ! すっげぇ気になる!」
「岳人までかい……」
「アイツ、俺らに黙って休むなんてしねぇよ」
「宍戸さん」
「あ―っ。水臭いんだっつ―の!!」
「宍戸」
「困ってるなら困ってるって、ひとこと言いやがれ……っ」
「宍戸……」
「宍戸さん……」
「手助けは出来なくてもよ、落ち着かねぇんだよ。こっちが!」
「電話、繋がらないですしね……」
「跡部。俺上がるわ。お先」
「し、宍戸さん!」
「ダレがひとりで行けっつった? ア―ン?」
「跡部?」
「全員上がれ。行くぞ」
「ウス」
「跡部……お前まで」
「何も言わない所を見ると、知られたくない事なのかもしれねぇ」
「跡部」
「でもな、ジローも休んでんだ。ハニーもな」
「ハニーさんも、休みなんですか?」
「巻き込まれてやろうぜ。たとえそれが面倒でもな」
「跡部……」
「着替える。行くぞ、樺地」
「ウス」


跡部様。
どっちが先に家に着くかな。
先に着いたら、待っててあげて。

No.187 2003/05/16(Fri) 18:59

  目覚め / 幸(椿)
 

長い夢が、終わったみたいだった。

「……さちちゃん」

目の前に、おねえさんの心配しきった顔。

「何だよ。ちゃんと起きられるんじゃねぇか」
 おにいさん?
「そう。ちゃんと覚えてるな。前、膝の上に座らしたことあっただろ?」
 うん。覚えてる。


覚えてる。全部、全部。
萩之介お父さんのことも、日吉お父さんのことも。おねえさんのことも、おにいさんのことも。それから、テニス部の人たちも、みんな…覚えてる。
それに、思い出した。昔のことも、全部。


「さちちゃん。大丈夫ですか?」
 ……おねえさんっ、
「うぉおっ! ど、どうしたですか、さちちゃん!? 泣いてるですかっ!?」
 おねえさん、おねえさん、おねえさんっ!!!


あたし、良かった。消えちゃわなくて。
だって、消えたらもう、おねえさんに会えなかった。
だから、すごく嬉しいの。消えちゃわなくて、嬉しいの。眠らずに済んで、すごく嬉しいの。
おねえさんと、お父さんたちと、みんなで一緒にいたいの。


だから。
だから……


 おはようございます…なの……

No.188 2003/05/16(Fri) 20:13

  霊媒体質ってのがあるらしい / メープル@ハニーちゃんゴメンよ…
 

 ばたっ。

 ハニーちゃんが倒れました。
 操り人形の糸が切れるみたいでした。


「……ハニー、おつかれさま」

 ジロちゃんは静かに彼を抱きとめて言いました。
 普段は子供っぽい彼も、こういうときは恋人を持つ一人前の「男」に見えます。


「ハニーはやさしいから、ハニーのピアノもやさしいから、きっと目に見えないいろんなモノまで、ハニーのところに集まっちゃうんだね……」

 そうだね、ジロちゃん。
 きっと、そうだよ。
 滝母さまは芸術的な能力うんぬんって言ってたけど、本当の本当は、ジロちゃんが思うとおりの、シンプルな理由なのかもしれない。


「でももう、これからはハニーは俺だけのものだからね」

 ジロちゃんは、そう言ってハニーちゃんを抱き上げ(依頼主様と違って苦労してたけど)、ベッドのある部屋まで運びました。

 Hしてるわけじゃないと思うけど、しーんと静まり返ったその部屋は、夕ごはんまで立ち入り禁止にしてあげようと思います。

No.189 2003/05/16(Fri) 20:27

  お客さま。 / 幸(椿)
 

「お姉さんに電話しといた。今から帰るって」
「てか、この一大事にどこ行ってたのよ、アイツらは!?」
「さちちゃんのことしらべるって言ってたですよ。めそこはおねえさんだから、さちちゃんのそばにずっといたですよ」
「そうか。えらいな、ぷちめそは」
「あい!」
「……それに引き換え、お前は来るのずっと渋ってるし……」
「悪かったわね! 科学者たるもの、非科学的なことは苦手なのよっ!!!」


……おねえさんたち、楽しそうなの。
って思ったら、何だか玄関の方からどかどか足音が近付いてきたの。


「おらっ! 滝!! いねぇのかっ!!!??」
「跡部……アカンて。それじゃまるで、犯罪者やんか」
「てか、不法侵入は既に成立だけどな」
「家にいないアイツらが悪い」
『跡部(さん)……』


「……って、お前ら何やってんだよ?」
「あ? 緑山の季楽……お前こそ何やってるんだ?」
「俺はここの留守番頼まれただけ。滝さんも日吉も、今は出掛けてるぜ?」
「ふほーしんにゅうですよっ! はんざいですよっ!!!」
 おねえさん……多分、お父さんたちを心配してきたと思うから、そうゆう言い方は良くないと思うの。
「あれ?」
「椿ちゃんとぷちめそ、仲直りしたの?」
「はっ! まだですよっ!! まだめそこ、あやまってなかったですよ」
 え? いいの。あれはあたしが悪かったの。
「だめですよ! めそこがわるかったんですよ! さちちゃん、ごめんなさいですよっ!!!」
 ぁ、あたしも悪かったの。ごめんなさい、なの。


これでちゃんと、仲直りなの。

「……さち? 椿じゃなくて???」

説明も、しなくちゃいけないの。

No.190 2003/05/16(Fri) 20:27

  腹が減っては。 / 蜜屋文子@臨時家政婦。
 

滝君の家に帰るなり。
余りの大所帯に滝母も絶句。


「蜜屋さん」
はい。
「帰り、急ぐかしら?」
……お手伝いします……。
「おほほ。話が早いわ」


そう言ってる間に、みんなに驚きもせず、滝君と若が幸ちゃんの所へ。
ふたりして、ぎゅっと抱き締めて。


『お帰り……』
「ただいま、なの」
「幸ちゃんずるいですよ! 滝萩! きのこ! めそこちゃんとごめんなさいしたですよ!!」


足元でぴょんぴょん跳ねるぷちめそちゃんを、滝君が抱き上げて。
「お姉ちゃん、お留守番ありがとうね―?」
「あ、あい!」
「ぷちめそ、ありがとうな。季楽、すまない」
「俺はいいけど。それより、こっち」


めそちゃん?

「兄上、なぜに私には労いの言葉も何もない?」
「ん―。何となく」
「なんだとう! 散々怖い思いしたのに!!」
「おかげで季楽に甘えたんでしょ―?」
「う」
「佐藤どうしたのかな―?」
「う」
「滝さん、もうそのくらいで。めそも、悪かったな。巻き込んで」
「い、いいけどね! 季楽、帰るわよ!!」
「やだ」
「はぁ!?」
「お姉さんたち、メシ作ってるし」


「全員分作んの?」

忍足君。

「これでも料亭の息子やで。手伝うわ」
「おほほ。ありがとうね」


お話はおいおい、聞いてくれ。

No.191 2003/05/16(Fri) 21:21

  ☆☆ああ。どきどきした☆☆ / 卯月ウサ&へごちゃん@おずおず。
 

「……もふ!もふん!!」
そんなこと言ったって。
どうやって入って良いか分からなかったんだもん!
「もふん!!」
ぷすん★


ってなわけで。
今、ウサへご小屋におります。
さっき、宍鳳が帰宅しました〜〜vv


「あ〜あ。安心しました〜。でも、俺らが思ってたより、ずっとすごい話になってたんですね!!」
「ホント。ただの姉妹げんかかと思ってたんだけどな。」
「だけど……なんとかなって良かった……!!」
「……ああ。良かったな。」
「……宍戸さん?」


「ん?いや。親って。ありがたいなと思ってさ。」
「滝さんと若のことですか?」
「う〜ん。……いや。なんか。幸、だっけ?幸の本当のお父さんが……幸にもう一度、生きなさいって言ってくれたんじゃないかなって。今度こそ幸せになれって。そう思った。……なんとなく、な。」
「……そうですよね。一番、彼女に生きていて欲しいと望んだのはたぶん。滝や若や……彼女の本当のお父さんや……家族、だろうから。」
「ああ。」


ぐぅぅぅぅぅ。

「……あはは!安心したら腹減ったか?長太郎!」
「……はい。すみません……。」
「何、謝ってるんだよ!生きてるんだ。生きてくんだ。腹減って当然じゃねぇか。」
「でも。滝さんちでも食べたのに……。」
「あんときはお前、動揺してて、あんまり喰ってなかっただろ?」
「だって何か、頭の中いっぱいで……。でもだんだん、安心してきて。」
「実は俺もなんだ。落ち着いたら腹減ってきた。さ、夜食作ろうぜ?」
「はい!」


家の中から良い香りがしてきます。
今夜は何かな?

No.192 2003/05/16(Fri) 21:25

  ☆☆トリオ・ザ・シュガー反省会☆☆ / 卯月ウサ&へごちゃん@シリアスは向かない。
 

氷帝付近の公園で、今日の夕方見かけた光景。

「……マイケル。」
「反省シテルデスヨ!モウ、狸サンニハナラナイデスヨ!!プティメソチャン泣カセタリシナイデスヨ!!」
「……。」


公園の地べたで正座して車座になる三人の佐藤。
可哀想に、マイケルくん。
泣いてるし。
「もふ?」
うん。反省するところが少しずれている気がするけどね。


「狸さんになったのがいけないんではないのですよ。マイケル。」
「……オー!みかえるクン!熊サンモダメデスカ?」
「…………。」


「めそさまに辛い目を見せるとは、モヴの名門、佐藤一族の恥!」
「面目ナイデスヨ!!本当ニ反省シテルデスヨ!!ワ〜〜ン☆」
「…………。」


たぶん。今も続いています。
佐藤’s反省会。
「……もふ。」

No.193 2003/05/16(Fri) 21:47

  みんなどうかな。 / 蜜屋文子@本業。
 

「――疲れたか?」
ううん。平気だよ―。


家に帰ると、すでに夕飯は終わってて。
太郎さんとメープルさんと萩原さんで、済ませてくれたんだって。
ありがとう!
で。
杜の小動物たちは、何でここで飲んでんの?
「お神酒を浴びるんだそうだ」
間違ってるよ。
まぁ。いいか。今日はお疲れ様!


でも、洗い物は残ってたので、キッチンでみんなの追跡です。

「やっぱ、氷帝って歴史あるんやなぁ」

忍岳夫妻ですね。

「うん。でもさ。遅かれ早かれ、椿ちゃんには何かあったわけでさ」
「うん?」
「滝と日吉って、すげぇよな」
「受け止める器がちゃうんやろなぁ。俺なんて岳人ひとりでいっぱいいっぱいや」
「嘘付け。ユイちゃんの心配しまくってるくせに」
「あはは。じゃあ、岳人とユイで精一杯や」
「それで良し」
「ええのん?」
「妹大事に思ってる、侑士好き」
「岳人……ありがとぉ」


穏やかそうね。
良かった♪

No.194 2003/05/16(Fri) 23:08

  笑顔は空へ。 / 眞咲鷹魅 ← たまにはまとも。
 


   閃光が放たれた―――


 白く光り輝く光はやがて静まり、再び静寂が訪れる。
 微かに聞こえる風の吹き抜ける音と水のせせらぎ。


「もう………大丈夫」

 青春台から氷帝学園の地域一帯に広がる鍾乳洞が存在しているのはあまり知られていない…。
 その鍾乳洞の最奥には広く高い空間が作られてる。
 リムストーンが始まる場所には巨大な石柱が存在し、柱の中心部分にはぽっかりと洞が開いていた。


 ふわりと音を立てずに石柱に近づけば白いもやのようなものが現れた。

「あれで…良かったですか?」
『えぇ、ありがとうございました…。これで安心して昇れます』


 めいに持たせた「空蝉」の石はこの場所で作り出したもの。
 石柱に飲み込まれている真球の中にあったものを再結晶化させて取り出したのだ。


 初めてこの地を踏んだときにいた…沢山の残留思念。中でも一番強い残留思念は娘を思う男性のもので。
 最初は気まぐれだったんだ、今思えば直感だったのだろうけれど。


 最も清らかで神聖なこの場所にみんなの思いを、その残留思念たちを集めて作り出し、ここにはめ込んだのだ。
 前の俺であったときに…。


 同時に封印の役目を担うために負の存在たちも封じ込めて…。


「姿を現すことくらい出来るけど…いいの?」
『いいんです。もう―あの子は私の手を離れていますから』


 外気に触れることなく守られてきた存在<モノ>はいつしか浄化され聖気を放つようになって。
 だからこそ、あの子に渡したのだ。 過去から未来へと道を繋ぐために。


 柔らかな笑顔はどこか少女の面影を映していて―――
 ゆっくりと空へと昇り始めて―



 空蝉だった欠片は透明な石へと変化し、地へと還っていった………。


 そして再び静寂が訪れ、誰もいなくなった―――

No.195 2003/05/17(Sat) 00:04

  私は両刀なので / トリヲ・ザ・シュガー★佐藤・ミカエル・英作@シリアスでもギャグでも。
 

「Oh!ソウデスヨ!次ハ私、すかんくニナルデスヨ!」
何故ですかマイケル。


公園での反省会を終え、我ら佐藤トリヲは帰宅しました。しました…が。
「兄貴、俺何か悪いことしたのか?杜で発砲することって、罪なのか?」
「白雪…そういうことは姫か佐藤に訊けよ。兄ちゃん、常識人だからさ…」
須藤、弟の問いには真面目に答えてあげなさい。ちなみに、悪いことさえ起こらなければ、別段罪ではないとは思います。結果オーライですよ。


さて、何やらおおごとになっていたようです。様子を探ってみましょうか。
「……」
ミヒャエル、そこのスイッチを押してください。


「航、今日もキャラモノパンツなわけ?」(羽生)
「今日はあんまんマンだべ!」


「……」
…氷帝に繋いでくださいよ。しかも今度は何のパクリですか。


「ずっと言おうと思ってたけど。キャラパンツってガキっぽくね?」(羽生)
「それは一斗の認識不足だべ!たまたまキャラパンツには子供番組の絵柄が多いだげだ、他の模様のど、おんなじだべや」
「あんまんマンのパンツはガキっぽくないの?」(源)
「当たり前だべ!」


衛星の盗撮映像によれば、季楽を除く緑山勢は誰かの部屋に雑魚寝状態のようですね。
「キット昆川様ノオ宅デスヨ☆」

No.196 2003/05/17(Sat) 00:07

  どんとこいですよ / トリヲ・ザ・シュガー★佐藤・ミカエル・英作@アレでもコレでも。
 


「考えてみれ二人ども」
「何を」(羽生)
「世界中の人があんまんマンとかドラ○もんのパンツはいてたら。平和だべ」
「なるほど、和みはするよな!」(源)
「そういう特殊パンツを選ぶって共通点だけで、仲間意識が生まれてくるものだしな…冷静に考えると、すごいかもしれない。キャラパンツ」(羽生)
「そうだべ!」


「問題は」(昆川様)
『純平』
「世界中の人がそういうパンツをはいているという証拠を確認する適切な手段がないということだな」(昆川様)
『う〜〜〜ん……』


昆川様の広いお部屋の片隅で、彼の残した言葉を真剣に考え始める3人でした。

「ソウデスヨ!私、ウサギニナルデスヨ!」
何故そうなるのです、マイケル。
「ウサギナラ可愛イノデ、撃タレルコトモナイデショウ!イエ、撃タレルノハ良イノデスガ、マタ大変ナコトニナルノハ、イケナイノデスヨ!」


一体何を言っているのやらこの外人は。

No.197 2003/05/17(Sat) 00:08

  追跡終了! 本当にお疲れ様でした!! / 蜜屋文子@本業。
 

昼間騒いだせいか。どこの家もすごく静か。
今日はお終い。
スイッチオフ、とな。


「文子」
はぁい。
「めその部屋を見てみろ」
めそちゃんの部屋?


半分開いたドアから、部屋を見ると、季楽君にしがみついて眠るめそちゃんが。
そしてそれを、しっかり抱き止める季楽君が。


「……まったく。親がいると言うのに」
仕方がないよぅ。
「俺たちも休むか」
ちょっと飲む?
リスたちのお神酒が残ってる。
「――それもいいな」
浴びないけどね。


今夜はゆっくりおやすみなさい。
皆さん、お疲れさまでした!

No.198 2003/05/17(Sat) 00:16

  お疲れ様でした。 / め組トリヲその3 めろ@すごいや。
 

「シドー。寮の部屋に置いとった、うち特製のツイスター、知らへん?」
「あ、あれ?任せてお嬢さん、ちゃんと侑士さんのところに送っておいたから★」
「何やて!!」


ふー。
地味に祝☆赤い屋根の家に露天風呂設置。いいお湯だった。
ユイちゃん、次どうぞ!
「阿呆シドー!何勝手に送っとんねん!!」
「あれえ?おかしいな、あれ、侑士さんに送るものじゃなかったんですか。綺麗にラッピングまでしてあったのに★」
「だ、誰があないな男に!ふ、古いもんやから、処分しよ思てたの!…もう知らん!」
ツイスターっていうんだね、あれ。グーグルするまで知らなかったよ。


「ふむ…」(昆川様)
「どうしたの、純」


北村さんたちに鋭い一言を突きつけた後、昆川様は何やら思案顔です。
「Oh!イケマセーン☆ウサギサンニナッタラ、問答無用デ食ベラレテシマウデスヨ!」
もう!マイケルさん、静かに悩み悶えてよ!


「今、航たちの話を聞いていてふと思ったのだが」(昆川様)
「うん…?」
「ああいう、キャラの顔がプリントされた下着を好んで着用するということは…」(昆川様)
「いうことは?」
「他者の顔が常に尻の位置にあることを好むということとイコールではないのか」(昆川様)
「つまり…?」

No.199 2003/05/17(Sat) 00:40

  200狙いで。 / め組トリヲその3 めろ@本当にすごいや。
 


「分からないか茜。航は実は、尻に人の顔があるのが嫌でなく、むしろ好ましい」(昆川様)
「…そう決めつけちゃって、いいのかな…ギモン」
「いいから聞け。なのに航は、聖人のあの行いは徹底的に避ける。これは、聖人が航の尻を狙うことが問題なのではなく、聖人自体に何か、航を遠ざける何かがあると見て間違いない」(昆川様)
「…純…」
「…ん?何かおかしいな…この新説は、別に今に始まったことではない…聖人は生来の問題児…」(昆川様)


「…純、今週も俺たちの面倒みてくれてありがと」
「何だ突然」(昆川様)
「純は疲れてる。もう寝よ、それ以上変なこと考えちゃう前に」
「航のパンツの嗜好に現れている、内に秘められた意外な真実に気付いたんだ。それを変だと言うのか」(昆川様)
「ふふ…イコールだと思うよ、俺も…おやすみなさい」
「おやすみ。ところで聖人はどこだ」(昆川様)


北村さんは気付いていないようだけれど。
高瀬さん、腰巻きのふりして、北村さんの尻に巻き付いてる。


「侑依お嬢さん、まだ侑士さんに会いに行かないの?」
「まだって何やねん!絶対会わへん、あないな変態!!」


あないな変態と言われても。
赤文字ログは変態が多いので何とも言えません。

No.200 2003/05/17(Sat) 00:41

  夜中に突然目が覚めたら。 / 蜜屋文子@寝てませんよ?
 

ちょっと目が覚めたので、お水を一口飲みに行くと、キッチンの盗聴器のスイッチがオンになってて。
切ろうと思ったら、声が。


「ほら、俺の指に集中してな……?」
「ん……っ。まだ、目の裏に何かいる……よ……っ」
「怖い夢は、気持ちようなって忘れよな?」
「ん……っ」


がっくん、怖い夢を観たらしい。

「侑士、触ってばっかじゃ、ヤダ……っ」
「焦らすなや。ちゃんとイクから……」
「もう来てってば……ぁ!」
「怖くな〜い。怖くな〜い」


忍足君、がっくんをあやすような声で。

「あ、あ、あ……っ」
「……弾けや」
「うん……っ」



「――文子」

うわ! びっくりした!

「驚くのは俺だ。急にいなくなるな」
もう戻るよ。
スイッチ切って。


さて、おやすみなさい。

No.201 2003/05/17(Sat) 01:41