芥川慈郎  草野心平作品より「誕生祭」



砂川原のまんなかの沼が夕焼雲を映してゐたが。
もうむらさきの靄もたちこめ。
金盥の月がのぼつた。

蒲やおもだかが沼をふちどり。
その茎や葉や穂のびろうどには重なりあふほどのホタルたちが。
螢イルミネーションがせはしなくせはしなく明滅する。
げんごろうの背中には水すましが。鯰のひげには光る藻が。

この時。
とくさの笛が鳴り渡った。
するといきなり。沼のおもては蛙の顔で充満し。
幾重もの円輪をつくつてなんか厳かにしんとしてゐる。
螢がさつとあかりを消し。
あたりいちめん闇が沸き。
とくさの笛がふたたび高く鳴り渡ると。
≪悠悠延延たり一万年のはての祝祭≫の合唱が蒲もゆれゆれとどろきわたる。

 たちあがつたのはごびろだらうか。
 それともぐりまだらうかケルケだらうか。
 合唱のすんだ明滅のなかに。
 ひときわ高くかやつり草にもたれかかり。
 ばらあばらあと太い呪文を唱えてから。

   全われわれの誕生の。
   全われわれのよろこびの。
   今宵は今年のたつたひと宵。
   全われわれの胸は音たて。
   全われわれの瞳はひかり。
   全われわれの未来を祝し。
   全われわれは……。

飲めや歌へだ。ともうじやぼじやぼじやぼじやぼのひかりの渦。
泥鰌はきらつとはねあがり。
無数無数の螢はながれもつれあふ。

りーりー りりる りりる りっふっふっふ
りーりー りりる りりる りっふっふっふ
    りりんふ ふけんく
    りりんふ ふけんく
けくっく けくっく けんさりりをる
けくっく けくっく けんさりりをる
    びいだらら びいだらら
    びんびん びがんぐ
    びいだらら びいだらら
    びんびん びがんぐ
びがんぐ びがんぐ がっがっがりりき
びがんぐ びがんぐ がっがっがりりき
 がりりき きくっく がっがっがりりき
  がりりき きくっく くっくく ぐぐぐ
   きくっく くっくく くっくく ぐぐぐ
     ぐぐぐぐ ぐぐんく
     ぐぐぐぐ ぐぐんく
ぐるるっ ぐるるっ いいいいいいいいいいいいい
ぐるるっ ぐるるっ いいいいいいいいいいいいい
     があんびやん。があんびやん。
     われらのゆめは。
     よあけのあのいろ。
     われらのうたは。

ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ
ぎやわろッぎやわろッぎやわろろろろりッ


卯月さんから頂きました!
ご協力ありがとうございますvv
草野心平さんは中学教材としては有名かな?
無伴奏の男性合唱曲にもなってます。