No.1
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Yo La Tengo "I can hear the heart beating as one"
アメリカの3人組のバンドの’97年の作品であり、私の人生の5枚のう
ちの1枚です。全編を通してベースやハモンドが織り成す、ゆったりしたサ
ウンドスケープが横たわり、その上をフィードバックの轟音や、美しい
メロディー、ノイズの洪水が横切ってゆきます。まるで魔法のように、時間
が時間通り流れていくような感覚を与えてくれます。音数は多いものの、ま
ったく余計な音はなく、すべてがあるべきところにある、まさに、エヴ
リシング イン イツ ライト プレイスな一枚。楽曲の並びも完璧。特に、
#4から#7の流れは極上です。
さらに、彼らの音楽にはリスナーをまっすぐに音楽に向かわせてしまう不思
議な力があり、それでいて、メンバー達には、何の気負いもなく、ひっそりと
音を鳴らしているような佇まいが感じられるという、絶妙なバランスがありま
す。いま、リスナーと最も幸福な関係を築けるバンドは、まちがいなくヨ・ラ
・テンゴでしょう。本当に音楽が好きな人は、虜になるに違いありません。親
を保険金目当てで殺してでも買うべき一枚です。
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No.2
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PHOENIX "UNITED"
連載第2回は、フランスの4人組バンド、フェニックスどえす。楽曲自体はコンパクト
でポップ、そしてスウィートで(アルバム全体もそう)、平熱のヴォーカルが乗ってい
てタヒチ80を連想する人も多いかも。しかしこのバンド,
そこかしこに、タチのわるさや、底意地の悪さ、したたかさを醸し出している。まる
で、リスナーをなめきっているかのよう。アートワークも80年代ヘヴィ・メタばり。
その小ばかにしたようなアティテュードに多少ムカつきを覚えるものの、そのスウィ
ートなポップソングが、中毒症状のように聞く者を惹き付けてしまう。そして、タヒチ
との決定的な違いは、ファットでファンキーかつエロいリズム隊(特にベース、あと
ドラムのキック)。それが、メンバー達がダンスを通過してきたことを物語っているし、
それに80年代的いなたさ(ヴァン・ヘイレンばりのギターリフや、ニュー・ウェーヴ
風味のシンセ)が加わることで、単なるポップソングに収まらない幅の広さを獲得して
いるのである。また、随所に見られるハモンドや、サウンド・エフェクトもセンスを感
じさせつつ、その余裕っぷりが癪に障るが、それでも聞きたくなってしまう楽曲のすば
らしさが、やはり、どうしようもなく魅力なバンドだ。いやあタヒチ80の100倍はいい!
また、彼等の所属するレーベル、「ソース」は、エールやモーガンといった優れたアー
ティストの作品をリリースしているイカしたレーベル(アートワーク最高!)で、そっち
もチェックしてみてね。ちなみにモーガンは上で紹介したフェニックスのアルバムにも参
加しています。
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No.3
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DUB SQUAD "Versus"
ギター、ベース、ドラムの三人編成の日本のバンド。ダブを名乗るだけあってベースの音圧
がでかく、ドラムンベース以降の速いBPMかつ、多彩なリズムを搭載。ギターも完全にリズム、
フロアを意識したアプローチがなされている。生音以外にも、打ち込みのプログラミングされ
た音も入っているが、やはり、三人のアンサンブルが屈強で、一つの音を起点に、自在に楽曲
を展開、ドライヴさせて行く様は圧巻。フロアの空気にあわせ、音をつないで行くDJのような
要素と、ライヴバンド的な熱量を同時に兼ね備えた存在だ。サウンドの感触が、ズボンズの
”BOMB FREAK EXPRESS”の”Tighten Rap"から"Circle X"の流れに似ている。私的、今最も
ライヴを観たいバンドの一つ。是非聴きなさい。
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No.4
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DJ KRUSH ”漸 ”
日本のヒップホップの先駆者的存在のDJの最新作。一音一音に宿る意思が凄まじい。冷たく澄ん
でいて、なおかつ柔らかく、優しい音が鳴っているが、それらが、そこにあることが必然である
かのような、圧倒的な説得力を持っている。そう、彼の音は、レディオヘッドやヨ・ラ・テンゴ
とはまた違った形で、聴く者を惹きつけ、対峙させてしまう。今作は、多くのゲストを(海外、
国内を問わず)招き入れ(ラッパー、女性シンガー、パーカッショニストなど)、ヴァラエティ
ーに富んだ作品となった。各楽曲で、ゲストと真剣勝負を繰り広げつつ、相手の魅力をひきだす
彼の手腕と、それでも全体を通して浮かび上がる彼自身の「個」としての存在感が光る大傑作。
特に、#7における日本のダブ、レゲエ界の巨匠、こだま和文(トランペット奏者)とのコラボ
レート、#9におけるTHA BLUE HERB(札幌出身のヒップホップグループ)のMC、BOSS THE MCとの
コラボレートを、この時代の日本にいて聴かないことは、ほとんど犯罪である。個と個のせめぎ
あいでありつつ、二つの個の間には、幸福な調和関係があるのだ。どんなことをしてでも聴くべ
き。とゆうか聴け!
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No.5
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BUILT TO SPILL "LIVE"
おそらく、誰の耳にも馴染みのないバンド、ビルト・トゥ・スピルが昨年発表したライヴ盤、
その名も「ライヴ」。アメリカン・ギター・ロックの良心とでも言うべきスリーピースのバ
ンド(ただし、メンバーの入れ替わりも多く、実質的には、ヴォ−カル、ギターのダグ・マ
ーシュのソロユニットのようなもの)の、ベスト的な傑作。ダグの幼児声が紡ぐうたと、狂
おしいまでの熱量を帯びて掻き鳴らされるギターが、凄まじい濃度で閉じ込められたギター
バンドのライヴの決定盤!音凄過ぎ!ほとんどギターに取り憑かれた男が鳴らす音は、ギタ
ーが今尚、こんなにも魅力的で創造的なインストゥルメントであることを雄弁に物語っている。
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No.6
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TALKING HEADS "STOP MAKING SENSE"
80年代を代表するバンド、トーキング・ヘッズのライヴ盤
で、ジョナサン・デミ(羊達の沈黙など)監督により、映画としても知られる作品。ブラジリ
アンをはじめ、民族音楽に傾倒していた彼らの音楽が、ライヴという空間でも、美しく実を結
んでいる。冒頭の、テレコに録音したリズムボックスの音だけをバックに、デヴィド・バーン
が、アコギ一本で歌う‘サイコキラー‘最高!(このスタイルは、レディオヘッドがライヴで
‘イデオティック‘を演るときのアレンジのヒントになっているらしい)その他、全編に渡っ
て、多彩なリズムとアレンジが炸裂。ラディカリズムとユーモアとサンキュー・フォー・ザ・
ミュージック(音楽愛)の幸福なハイブリッド。
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No.7
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PORTISHEAD "ROSELAND NYC LIVE"
私が、今一番ライヴが観たいバンドは?と問われたら、迷わずポーティスヘッド(イギリスは
ブリストル出身のユニット)と答える。サウンドの要、ジェフ曰く「僕らは、ポーティスヘッ
ドという世界を構築しているんだ」であり、音楽、音響面はもちろん、アートワークからヴィ
デオクリップ、ライヴのリハのサウンドチェックまで一貫して自分達で行うという超超超完璧
主義者である。当然このアルバムでもオーケストラ陣を従え、彼ら独自の暗黒世界(ロウで、
ダウンテンポなビートを基調としたサンプリングミュージックに、呪いのような詩篇を歌う、
ヴォーカルが乗っている)を完璧に再現。プレイヤー達も凄腕揃いだが、女性ヴォーカリスト、
べス・ギボンズの歌(あるいは声)に潜む恐ろし過ぎる(いろんな意味で)迫力に勝てるものは
ない(断言!)。こんなものを聴いてしまったら、もうそこらで流れている売り物としての女の
歌は聞けないし、歌っているアホ女共は死ぬしかなくなる。リアルな表現にこそ宿る(意図する
、しないに関わらず)殺傷力について想いを馳せてしまう驚異(脅威)のアルバム。
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No.8
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THE STROKES "IS THIS IT"
ヴォーカルは、気まぐれにシャウトをかましながら、最高に甘いメロディーを、セクシャルに歌い
あげる。2本のギターは、微妙に表情を変えながら(時には鍵盤の様に!)、絶妙のアンサンブル
で楽曲をデザインする。極めて素っ気無く、しかし、タイトにリズム隊が続く(ツタツタツタツタ
・・・と鳴らされるドラム、個人的には堪らない)。
本当に最低限の要素だけでできたロックンロール。ニューヨーク出身の5人組、ザ・ストロークス
の1stアルバム。THE MODERN AGE,ALONE TOGETHER,NEWYORK CITY COPS,といったロックンロールな
コピーライトが見事なタイトルもクール。しかも、音質はシックスティーズマナーの本格派。目茶
目茶カッコイイ。「ロックンロールは、2本のギターとベースとドラムが最高」と言うルー・リー
ドの言葉を証明するかのような完成度。さらに、今後のバンドの、音楽的展開がまったくみえない
程のスタイルとスタンスの確立が成されている。その両方の意味で、最もコンプリートなデビュー
アルバム。
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No.9
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DEATH IN VEGAS "CONTINO SESSIONS"
M1「DIRGE]からぶっ飛ばされる。ディレイのかかったギターの、冷たいコードストロー
クで幕を開け、ドット・アリソン(超美人!)の美しい声が、たゆたうようにメロディーを辿る。
タイミング、パターン、音質、すべてがジャストなドラム・イン。超ダビ−でへヴィーなベース・
イン。もう一本のギターは、延々とフィードバックノイズを撒き散らす。メンバーである2人、リ
チャードとティムは、ブースから、エフェクトやミックス、コラージュを加えている。そして楽曲
は加速し、ドライヴし、美しく昇り詰める。訪れるとてつもなく甘美なカタルシス。絶望的に美し
いロックンロール!素晴らしい。こうして、ドキュメントしてしまうほど、ライヴ感に満ちたナン
バーなのだ。
イギリスの2人組、デス・イン・ヴェガス、99年の2ndアルバム。ダンスミュージックのクリエイ
ターといった位置付けを覆す(もちろん、フロアでも全然機能する)、ドラッギーでダビ−なガレージ
・ロックンロール・アルバム!!「プライマル・スクリーム、ストゥジーズ、ジーザス・アンド・
メリーチェインみたいなヴォーカルが欲しかった」との言葉通り、ボビー・ギレスピー、イギー・
ポップ、ジム・リード(つまり本人達)を召還。それぞれ、素晴らしい客演を見せている。時に皮膚
を焦がす様に、時に陶酔へと連れ去る様に鳴らされるバンドサウンドに私は未だ中毒気味。最高の味
わいを保証します。是非ご賞味ください。
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