
なに様!(劇団星座・客演)/ホレーシオ役
野村貴浩さん インタビュー
…2002年1月23日・東京芸術劇場小ホール前にて…聞き手/tohsei
「なに様!」は、シェークスピアの戯曲ハムレットをベースに、本編では悪役のクローディアス王が本当に悪人だったのか?実はハムレットが子供っぽい思い込みだけで悪人と決め付けていたのではないか?というお話。そして芝居の最後に誤解が解けてめでたしめでたし、となるところをどんでん返しでオリジナル戯曲ハムレットと同じく、デンマークの国王は死に絶えてしまい…というようなストーリー展開です。
野村さんの演じた「ホレーシオ」はハムレットが精神を病んで見た妄想ということになっていて、話が進んでいくうちにあれは幻だったということが判明していく仕掛けになっていました。
で、初日の舞台でちょっとしたアクシデントがあって、ハムレット役の人が芝居続行不能状態になってしまって、野村さんがその場の機転でハムレットの代役を務めちゃったという凄いことがあったのです。
インタビューはそのときの顛末から…
◆…tohsei
◆…野村さん
で、どうしたんですか?その場で?
その場だったんですよねぇ…。
ええー!
それは…誰のアイディアで?打ち合わせとかは?
打ち合わせなしです。
話が進んでて、裏で「僕がやります」とか打ち合わせしている時間がなかったから。
じゃあ、ハムレット役の人に「やるから引きな」とか言ったんですか?
捌けろって。
こっそり言って捌けさせて。
その場で代わりにやった?
そう。
凄い! それは凄いですね!
(笑) だって、それに剣もあって、剣で殺陣もあったから、
危なくて持たせられないと思ったんで。
本当? それは凄いですね。
じゃあ、ハムレットの立ち回りとか台詞とか全部分かってて、それでやれると思ったんですね?
いや、でもやったことなかったんですよ。
動きとかはだいたい頭には入ってたけど実際やったことなかったから…
それじゃ、周りの人もびっくりしましたね?
終わってから皆さん何て言ってました?
いやあ、助かったよって(笑)
これはまあ、ぶっちゃけた話になちゃうんだけど(笑)
流石ですねぇ…機転が利くというか。
そういえば岡田以蔵のときもライトがこっちのほうに向いちゃって、
「おう、こっち向いてるぜぃ」とか言って直していたとか
(笑)
演じている最中に周りを見て機転を利かせる余裕があるというのが凄いですね…
いやあ、もうそんな余裕は無いですけど。
ただお客さんも気になってると思って。
あのときは確かライトに色をつけるやつ、ゼラが外れちゃったんですよ。
確か刀も折っちゃったときですよね。あれはまして自分がやったことだし、
これはいかんなと思って。
あのときは動ける都合の良い役だったんでやり易かったんですけど…
いわゆる枠が広かったんで。
ああ…じゃあ皆さんは本当に助かったぁ、と思ったでしょうね…
(笑)
ちなみに星座の皆さんのところに客演に来るきっかけは何だったんですか?
あれはハムレット役と友達だったんですよ。
飲み屋で知り合って。
え?
あのー、普通に飲み屋で飲んでるときに知り合ったんです。お互い一人で来てて。
阿佐ヶ谷の僕の友達がやってる飲み屋だったんですけど、
そこで飲みながら芝居やってんだ?みたいな話してて。
ま、いつかやりたいな、みたいな話はしてたんですけど、
なかなか忙しかったり、そんなに早々は出来ないと思ってたんですけど。
ただ今回こういう役があって、座長さんもうちの芝居とか見に来てくれたりして、
是非という風に声かけてくれて、め組の事務所の人も快く送り出してくれて。
じゃあ、これは初めてですか?
初めて。
初めてでこれは凄いですね!
そう、初めてで。
ぜんぜん違いますね、め組とはいろんなところが。
どういうところが違うと思いましたか?
やはり演出の仕方や、いろいろとですね。
同期はどなたになるんですか?
僕は同期は…厳密ではないですけど、成國さんは同期なんですよ。
芝居をはじめた時期が一緒。
め組は何年くらいになるんですか?
僕はこの春でまる8年。
けっこう長いですよね。
大学を卒業してからだから、そうですね。
それ前にモデルをなさってたとか。
(爆笑) いやあ、ほんと、ちょっとなんですけどね。
それはどういうきっかけでモデルをなさってたんですか?
大学卒業して、一回バンドでやってやろうか、と思っていた時期があって、
そのときに知り合いから「こういうのがあるからやってみない?」って誘われて。
わかんないまんま、言われたとおりに何回かやってたんですよね。
そのうちに今は辞めちゃったんですけど、うちの事務所にいた女の子と知り合って
「どこにも入ってないんだったらうちに来れば?」って誘われて。
そのときは、め組の養成所に?
藤原さんが養成の第1期生だと伺いましたけど。
そうですね。僕は養成の何期になるんだろう?
けっこうみんな時期が微妙にバラバラで、いわゆる宝塚みたいに第何期生とか、
厳密には無いんですけど、僕は藤原さんより、4年くらいキャリアが遅いんですよね。
で、そこで養成なさったんですね?
養成所に入って、社長のレッスンで。
ああ、お芝居ってこんなに面白いんだ、と思って、
お芝居やるようになったんですよね。
どんなレッスンを?
発声とかもやりますけど、エチュードとか。
また、今考えるとエチュードもけっこう難しいエチュードなんですよね。
ほうほう、どんなことをなさるんですか?
何気なくやったエチュードも、短くて簡潔なんだけど、
いろいろ詰まってるというようなやつだったです。
ただ社長が表現することの、
こんな風にやったら面白いとか、こんなふうに見せると面白いとか
いろんなことを教えてくれたんですよね。
正直言うと何やったかとか、あんまり細かく覚えてないんですけど。
じゃあ、皆さん基礎はしっかり叩き込まれてるという…
そうですね。
ただ、うちはすごい、社長が楽しく教えてくれるんで、
養成所は楽しいっていう感じなんですよね、今でも。
いわゆる、みんな現場を回って初めて厳しさを覚える、じゃないですけど
そんな感じなんですよね。
学校とかも回られました?
僕は5年回りました。
何役とかで?
メロスもやりましたし、ヴェニスのバッサーニオもやりましたし。
あとは杜子春ていうお芝居のシジンさんていう杜子春の家庭教師の役があるんですけど、
それがいちばん長かったですかね。
ちょっとコミカルなのが入ってる役なんですけどね。
じゃあ、学校公演を回っていれば相当実力がつくでしょうね。
つくと思います、きっと。ちゃんとやってれば。
かなりやってますからねぇ。
凄いですよね。
回って帰ってくると相当実力が付いてる訳ですね。
それで本公演に出られるのは、何か別にオーディションとかあるんですか?
それはないですけど、日々の積み重ねとか。
やっぱりいろんなところで見えるじゃないですか。
地方公演もちゃんとゲネプロが年3回はありますんで、
そういう場面がある意味、オーディションの場ではあるかな?
ああ、こんなこともできるんだとか、まだこれくらいしかできないんだなとか、
ひとつの舞台を見ればだいたいその人の魅力とかは出てくると思うんで。
だからちゃんとやってる子は上がってきますし、
なかには伸び悩んでるのかな?という子がいたり…
まだ僕もそんなことが言える立場じゃないんですけど、下の子もすごい増えてきたんで、
そういうところも見てはいるんですけど。
野村さんは「ビンセントの庭」が主役級でしたよね、それと「明治任侠伝」の義明役ですか、
どちらかというとちょっと傷ついた王子様的な役というか、
それが野村さんの役どころというか?
そうですねぇ…
実際、少しゆとりじゃないですけど、技量が出来てきたんで、
高田又四郎みたいな多少遊ばせてもらえる役がいただけるようになったというか。
それしかやらせられないっていうか(笑)
では、高田又四郎のような役と義明の役ではどちらのほうが難しいというか…
又四郎のほうが難しい?
いやあ…また違うんですよねぇ、ぜんぜん。
違うんですけど…
大きいところでいうと必要なものって一個かもしれないんですけど、
部品てあるじゃないですか、
その、高田又四郎を演じるための部品っていうか、
いわゆる、誰よりも早く気づいてそれをガンガン言ったりとか、っていうのもあるし
逆に義明みたいな、深いもの?
そういうのは、やっぱりまだまだもっと勉強するところはあるなあ、と思います。
義明の難しいところというか、ポイントは…
そうですねぇ…
深みっていうのかなぁ…うーん…
あれも何度か再演で来ていて、義明の前は伊藤博文ですか。
あれがたぶん本公演で最初のコミカルな役だったです。
で、その何年かあとで義明の役が回ってきたんですね?
もうだいぶ何年も経ってからですね。
辞めちゃった人がやってた役なんで、そのへんが多少、
イメージじゃないですけど実際に自分で見ていた役ですから、
今ふりかえると、そういうのを払拭するのに
多少時間はかかったりしたのかな、と思うところはある。
自分なりのキャラクターにするために努力したということなんですね。
でもどの役も、もう一回やりたいなとは思いますけどね。
そうですか、では今まででやった役で一番好きなのとかは?
高田又四郎はやっぱり面白い。
そうなんですか。
あれは面白い!
今回の岡田以蔵での高田又四郎と竜馬と一緒のときの高田又四郎って違いますよね。
そうですね。
どうでしょう?今回は重要な役回りだったと思うんですけど。
そうですね。
コミカルなだけでなくちゃんと必要なものが増えているんですよね。
じゃあ、高田又四郎は重要なキャラクターに昇格した訳ですね?
(笑)そうですね。
今回のお芝居の話に戻りますが、どうですか、星座の皆さんは?
若くてまだキャリアの短い人が多いので
ただ、一生懸命やってて、みんなカワイイですね。
昨日見ていたらバシバシっといろんな所がカットされてましたが、あれはどなたが?
あれは座長さんが。
いろいろアクシデントがあったにせよ、
やっぱり初日の舞台を見ていてもたれるところっていうか、
いわゆるお客さんがもたれてる、技量で持ってけない部分ってのは分かってらっしゃるんで、
そういうところは切っていったんですね。
そういうのはお客さんのアンケートとか見て決めるのでしょうか?
どうなんでしょう?
座長さんとお話させてもらったりはするんですけど、そこまで深くは関わってないので…
ただ、昨日の切るところに関しては、もともと頭の中では決めてたみたい。
ああ、そうなんですか。
変な言い方ですけど、初日やってみてガラッとよく良くなったりすることもあるんですよね。
お客さんには多少申し訳ない部分もあるんですけど、それを待ってたのかな?
その代わり一日やってみて、ダメなところはスパンと切っちゃう…
それでも役者さんは変化についていくのは凄いですね。
もう、昨日もずっと稽古してましたからね。
ただ、ずっと稽古してたっていいましたけど、稽古する時間が凄い少ないんですよ。
コミュニティセンターとか借りながらやってるんで
そんなに長い時間できないんですよね。
詰めた稽古とか出来ないんで勿体無いなぁ、
もっと稽古やれればいいのになぁって
思うところがいっぱいあるんですよね。
悪役をやりたいという話をなさってました。
どういう悪役を?
たとえば「侠」で城太郎さんがやってたみたいな?
ああー。
また僕のキャラとは違うからねぇ、
きっと僕のやるちょっと悪役っていうのは…
ものすごい大悪党とかいうんじゃなくて。
大悪党とかじゃないと思うんですよね。
小者の悪党?プチ悪党みたいな(笑)
ええ、もともとは小者なんで。
そんなことはないでしょう!
(笑)もともとは小者なんで、
ただやっぱりそういう、何か引っかかるものを
お客さんに見せられるようにはなりたいなと思う。
悪役という言い方をするとちょっとひと括りになっちゃうんですけど、
そういう役がきたときに、引っかかるものを
さりげなく見せながらラストまで持っていけるように
演れればいいかな、というのはあるんですけどね…
分かんないな、
今やってる役がそういう役だから口にしてるのかもしれない。
そうですね、今回のホレーシオの役もちょっと悪役っていうか。
主人公のハムレットを悪いほうへ、マイナスのほうへ引っ張っていくという役割で。
本当はマイナスに引っ張ってる訳ではないんですけど、
結果そうなってる…というところが見せられるといいなと思うんですけど。
今度3月に出られるんですか?
出ます出ます。
あのチラシに名前入ってないからねぇ(笑)
今回は大勢出られるんでしょう?
出ます出ます。
今度のは、ワタクシまた違うバージョンで出ますので、楽しみにしていてください。
面白いですよ。
楽しみですねぇ、今度のはどういうのですか?任侠ものですよね?
そんなに任侠任侠してないですよ。
いわゆるエンターテインメント。
どこまで話していいのかなあ、そんなに任侠任侠したものじゃない。
どっちかっていうと明るく見せていきながらも、うちの…あるじゃないですか(笑)
ちょっとほろりとくるような?
そうです。その辺なんで。
おお〜、楽しみですね。頑張ってください!
ありがとうございました。
ありがとうございました。
という訳で、今回の舞台は初日と、2日目と、この野村さんのインタビュー、
3点セットでごらん頂いた方は、野村さんの凄さを実感していただけたのではないかと思います。
ノムさんのお友達のミスター・ハムレットもなかなかのオトコマエでいらっしゃいましたが、
このノムさんには勝てませんな。( ̄一 ̄)ふっ
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三月が楽しみですね!
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