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藤原習作さん 
岡田以蔵/武市半平太役

藤原習作さん インタビュー 
…2001年12月23日・下北沢「劇」小劇場前にて…聞き手/tohsei


前回の公演(JAEのKAMIKAZE客演)でちょっとお話を伺ったとき、まだ台本を読んだだけだけど、武市半平太はすごく面白そうだと仰っていた藤原さんに、実際に演じてみた感想と今回の役どころについてお話を伺いました。
なお、岡田以蔵の公演をごらんになっていないと、何を言っているのかさっぱりわからないかも知れません。
1月にビデオが発売されますので、是非、お求めくださいませ(爆)。

◆…tohsei
◆…藤原さん


如何ですか? やってみて。
いや、面白いですよ。難しいけどね…

どのくらい練習なさいました?一ヶ月きってましたよね?
そうですね…20日間もやってないですかね、日にちとすれば。
その代わり夜中までやったりしましたが。

どういう感じで練習していくんですか? 
脚本どおりに台詞を覚えて、肉付けをしていくという感じ?
そうですね、ええ。

乙矢さんとやっていて、最初の1日〜2日と、
3日めくらいからですか、がらっと変わりましたよね?
ああ、芝居がですか? そうですね。
良い意味で芝居に慣れてくるというのかな、
やっと自分のものになってくるというか、そういう感覚はありますね。
最初はいろいろな段取りがあるじゃないですか、
裏に帰ったら刀を持ち替えなきゃいけなかったりとか、
着物を替えたりだとか、そういうのにちょっと追われてしまいますから。
まあ、いつもそういうチェックはしてるんですけど、
思いもよらないハプニングとかありますからね。初日とか…(笑)

ああ、袴の裾を踏んでしまって、よろよろっと…
そうそうそう、あれはまずいよねぇ。
あれは一番やってはいけないキャラクターでしょう、俺は。
彦斎殿もあれをやってはいけないかも知れないけど、やっぱり俺が一番だな。

ああ、二人ともシリアスな役で。彦斎殿は同じ人斬りでも割とドライな役どころで。
そうなんですよね。


では、お芝居の解説をいただこうと思いますが。
最初、岡田以蔵が河上彦斎に向かって
「どんな時代になろうと知ったことか、俺は強くなりたいんだ」っていうでしょ、
で、陰に隠れていた武市半平太が
「さっきから聞いていればなんだその態度は?」 って言いながら出て来ますね、
それで彦斎先生と試合をして以蔵のことをビシバシ叩きますね。
そのあたりの武市半平太の気持ちとしては、どんな感じなんでしょう?
そうですね、最初はね…
もともと岡田以蔵というのは常識外れな男だと思うんですよね。
修行に出して久しぶりに熊本で会って、
「元気にしていたのが嬉しい」 それだけですね、最初は。
それで、自分がついていないとどんどん暴走していってしまう以蔵。
それで彦斎さんと戦うじゃないですか。
戦うときに、自分が教えた鏡新明智流とは違う、
ただ本当に勝つだけは強いという剣で。
ああいうのは礼に始まって礼に終わるというのがあるじゃないですか、
そういうのをまったく無視した彼にやっぱり腹が立つ。
そういうところで怒ってしまう…。そういう気持ちかな。

それで彼を打ち据えて、彦斎さんに向かって、
「ヤマイヌなれば容赦はいらぬ。どうぞご貴殿のご随意に如何様にもなされてください」
と言って、もう岡田以蔵のほうは見ないで、無視して行ってしまいますね、そのあたりは?
最初の1〜2日くらいは、武市自身に割と余裕があって
「こんな奴ですけど、よろしくお願いします」っていう感じだったけど
それが3日めくらいから、ちょっとニュアンスが変わりましたよね?
まあ、それはね。変わってきているのもありますよね、僕自身。
最初はそういう意味だったのかもしれない、確かに。
彦斎さんのことは知っているし、よろしくって意味ではないけど、
あの時点では、彦斎さんがあいつを斬るというか、
何をするということもないと思うんで、
だからただ、本当に今はもう「あの場にいられない」。
あそこまでやってしまって、自分でどうしていいかわからない、
出て行くしかなかったんですね。
だからあの場で「おまえどうしてわからないんだ」って
説教できる人じゃないんですよね、きっとね。
自分もちょっと「柄じゃない」というか、
特にその場に竜馬もいるわけじゃないですか。
それで引っ込みがつかなくなったというかね。

それで、その場は無視して行ってしまうんだけど、
あとでね、ゆっくり歩きながら坂本竜馬に
「おんしの手で人間にしちゃれよ」と言われて。
じゃあ、わしらは先にいくから、という感じで去っていくと、
いよいよ以蔵を呼出して説教が始まりますね。

はい。

あれは師匠が弟子に向かって説教をするシーンだと思っていたんですが、
3日めくらいから意味が変わりましたか?
それは彦斎さんに「どうぞご随意に」って言ったのを受けて
後ろのほうも意味合いが変わったんですかね?
うーん、そうですねぇ…ただ初日のほうがそういう面では
脚本に忠実にやってるのかもしれない。わかりやすく。
そのほうがわかりやすいんだろうな。
それで、ある程度役を消化して、だんだん自分の気持ちとか
感情とかも入ってくるんで。
要は、いかにもっていうのはやっぱり嫌だなぁと思うんですよ。
いかにも師匠が弟子に対して説教っていうかな。
教えを説くみたいな。
そういうのはあくまでベースだと思うんですよね。
それではなく、もっと人間・武市半平太が、
もちろん師匠なんだけれども、もっと人間として、という感じかな。

「師匠」という立場をずっとキープしていた
武市半平太の本心が出るシーンですよね。
岡田以蔵ごときに自分が命をかけていることについて
「どうなろうと関係ない」みたいに言われたことがすごくショックだったというか。
それでおまえごときに何がわかるんだ! という気持ちがダーっと出てるのかなと…

ああ、それはもちろんあります。すごく。
だから、彼のことも凄く思うんだけども、仕事のことと、以蔵のことと、
二つ分かれているんですね。
それで進んでいかなきゃ、以蔵のことだけで進んでいっちゃうと
変なヒューマンドラマだけになっちゃうというか。
こいつの面倒も見たいし、人間としてちゃんとさせてやりたいんだけど、
結局最期は自分が斬るっていう訳じゃないですか。
自分も死んであいつも死んで、
でも勤皇の志が残っていけばばいいな、と思う、
仕事の部分もうち出していかなきゃいけないな、というかね。
なんだかんだ言って人間としてちゃんとしてあげたいとは思ってるわけですから。
謝ることしかできないじゃないですか。
なんだかわかんないけど怒ってるから謝る…
でも、結局後半でお金を出せ、と言ったときにはもう謝りもしないですよね。
逆につっかかってくるわけですよね。
それでもう気持ちが離れてしまったな、と思うわけですね。
そこで切れなかった自分にも腹が立つしね。

宇郷玄蕃を斬るという手紙が置いてあって、
武市が岡田に「読んだのか?」って聞くと、
「いいえ、何て書いてあるんです?」 と聞き返しますね。
そこで武市が「おまえには関係ないことだ」と答えて手紙をしまうでしょ。
それが岡田にはすごくショックだったのかなと。

うーん。そのへんはどうなんだろうなぁ…

武市先生の汚れ仕事は全部自分が背負ってるんだ、
というのが岡田のプライドだったわけですよね?

うん、プライドだった。

それをおまえには関係ないと言われて
目の前でシャッターがだーんと下りてしまったというか。
それで後のシーンで志士の皆さんに突っかかって
人斬ってみろや! みたいな凄い啖呵を切りますよね。
でも先生は志士の皆さんの肩を持つので更にショックを受けて、
それで荒れていってしまったのかなと。
うん、そうなんでしょうね。

で、岡田以上の気持ちが自分から離れていってしまって、
本当は誤解をどこかで解きたいんだけどうまくいかないというか。

誤解を解きたいんだ、といってそうやれる人じゃないからね。不器用だから。


菊松と一緒に歩いていて、
もう一緒にいると危ないから…と言って菊松が振られますね、
そのあと高田さんが出てきて以蔵が竜馬の所にいると聞いて
すごくほっとしているでしょ?

そうだね、やっぱり坂本竜馬は自分とは路線は違うけれども、
あいつに預けておけばとりあえず安心か…っていうのはありますね。
自分の手からは離れていったけども、嬉しい…嬉しいんだな。
ちょっと残念なところもあるけどね、結局は自分の手で出来なかったっていう。
で、要は菊松も振った訳ではないんですよね。
あの子のためにもう一緒にいちゃまずいなと思うから、
もう会わないほうがいいだろうと思う訳だし。
宇郷玄蕃守のことは、以蔵が読めるわけではない…っていうことは
菊松が読んでる訳じゃないですか、

ええ、ええ。
なんとなくそう思ってる訳じゃないですか。

おお、なるほどなるほど。
だから、どっから、どう繋がってね、菊松が…っていう話に
ならないこともないと思ったんですよね。きっと。

うん、なるほど。
だからもう、これは切るしかない、
つまり菊松とはお別れするしかないと思って別れるんですよね。
同時に高田又四郎も、あの人も土佐勤皇党なんですけど、
「俺もいっていいか? どうせ死ぬんだったらもうちょっと広い世界を見てみたい」…って。
つまり自分は狭い世界に居るわけですよ。
なんていうかな、土佐勤皇党っていう、竜馬から比べれば細い道をだーっと行く訳じゃないですか、
でも竜馬んとこは勝先生とかいて、でかい訳ですよね、視野が。
そうすると高田又四郎も、どうせ死ぬんだったら、あっちへちょっと、行っていいか? って言って。
それ自体がどんどん自分から離れていくんだなぁって思うんですよね。
そのへんがやっぱり「頭が固すぎていかんなぁ…」っていうね。

おお、なるほどなるほど。
で、それが寂しい気持ちなんですよね。
でもちょっと嬉しいような。
嬉しいっていうか、ちょっとほっとするというかね、以蔵の事に関しては。
春になれば満開の花が咲く…っていうことで、
奴らは奴らでやっていく、俺は俺でやっていこう…という感じかな。

それでその後以蔵と再会して。
急になんか、傘に入れよ…と。
そのへんはどうでしょう?
うん…どうでしょう(笑)

戻ってきて嬉しい。

喜怒哀楽でいえば喜でしょうね。もちろん。
それだけではないでしょうけども。
ただそんな、おお、帰ってきたか! とか言えないし。
菊松もいるし…(笑)
どうなんでしょう、うまく言えませんが…


志士が集まって、
河上彦斎が「あれはいずれ幕吏に捕まって一切合財喋るから
口を封じなければ」という話をします。
仕事の部分ですよね。
藩の勤皇の火を消さないように自分は京都に残るという話をして。
自分は死んでも残った者に後を託したいって言って、どーんと行こうとすると
「岡田君はどうする?」という私情が入ってくる訳です。
そこでちょっとおかしくなってしまうんですね。

そこで河上彦斎がもう1回彼に挑戦したい、という闘志をむき出してね。
それをぐっと押さえ込んで、あれは私が手塩にかけて育てた者だから、
私にしか斬れないと。
僕も勝てないんですよ、奴には。本気でやっても。
勝てないことはわかってるんですけど、相打ちにでもなれば、
どうにかなればと思ってやるんですよね。
他に斬らせるくらいなら俺が斬る。だから…心中のようななもんですね。

以蔵が話を聞いていて「先生、刀を抜いてください。お願いします」って言って
本当に抜いたときに、「うっそ、マジで?!」っていう顔をしますね、
そのときは以蔵も、ああこれで心中なんだ、って思うんですかね?
うん、でも奴は斬れないんですよ。
僕は本気で斬りに行きますけど。

当身を食らって、以蔵が逃げて行くと、わしを捨てよ! って言いますね、
この時点ではもう、相思相愛というか。
うん、結局はそうなっちゃうんですね。
両方立てるにはあれしかないんですね、仕事のことと、あれのことと。

で、それを見ていて彦斎さんが、
「御貴殿のお弟子は強うござるな、参り申した!」 って言ってね、涙をぽろっと流すという…
城太郎さんに伺ったら「俺、ああいうの駄目なんだよ、可哀想でさぁ…」って。
あはは。

これは、だから悲恋物語ですね?
そうですね。そんな感じです。


乙矢さんが最初のころは可愛い感じで演じてましたが、
途中からワイルドな感じに変わりましたね、ああいうのはどうでしたか?
一緒にやってらっしゃる方としては?

いや、やりやすいですよ。
結局、実際に人をバンバン斬っていったらああいう風に変わると思うし。
やりやすいですね。

ああいう風に変えようとか何かお話したんですか?
いや、それはないですね。奴が変えてるんです。

舞台に立ってみたらその日突然変わってた?
そうです。

凄いですね。
そうですね、彼は凄い。

それでも動じずに、こちらも受け皿が大きいから、
見ていても安心していられるという感じで。

結局、バッと来られたほうがやりやすいことはやりやすいんです、芝居はね。
ずーっとお芝居やていると感覚が麻痺してくるというか、
いつもこのへんをつねられるのが、ちょっと場所が変わったりすると新鮮な感じになるでしょ。
そういう感覚で奴は変えていってるんだと思うんですね。
そうすると、こちらも受けやすいです。

城太郎さんとやるのと、乙矢さんとやるのとでは?
そうだねぇ、城太郎さんは昔はよく一緒にやってたんですが、
最近は二人のシーンってけっこう少ないんですが、
城太郎さんも凄く面白いです。

どんな感じで面白いんですか?
城太郎さんて、すごいけっこうリアルを追及されるかたなんで、
生身の城太郎さんが伝わってくるというかね。

蒲生哲也をやていたときの兄貴の城太郎さんとかですね?
そうそう。

今日はどうもありがとうございました。


…というわけで、藤原さんが役をとても丁寧に演じていらっしゃる様がおわかりいただけたでしょうか。
公演をごらんになってない方は是非、本作品のビデオをお求めいただき、
ごらんになることを強く強く、お勧めいたしますです。
凄いイイ男っぷりです。マジで。

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