考えちゃいそう
ノー・マンズ・ランド 鬼が来た! デッドマン・ウォーキング

ノー・マンズ・ランド ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ

☆☆☆☆☆
どっかの賞(あいまいでスンマソ)を獲った作品。セルビアとボスニアの内戦に国連軍が介入し、そこにマスコミと政治がからんでくる話。…こう書くとおかたそうだが、映画はむしろユーモラスな調子。殺し合いの最前線なのに妙にのんびりしている。ピリピリしたムードの中に、人が持つ哀しさの中の滑稽さが見え隠れ。使命ってなんのため?

鬼が来た! チアン・ウェン、香川照之

☆☆☆☆
戦争の狂気を描いた作品。第二次世界大戦中、日本占領下の中国の貧しい村が舞台。何者かが村民に“預けもの”をする。中身はなんと日本兵と中国人通訳。期日になっても引き取りに来ない。さあ、このやっかいな2人の身柄をどうしたものか、というところからストーリーが始まる。自国を占領し、暴力・略奪・強姦なんでもありの敵兵など憎いが、預けた人間が引き取りに来た時に暴行の跡があったり死んでいたりすれば村民全員が殺される。匿っていることを日本軍に知られても殺されてしまう。苦悶しながら、結局村民は2人に食事を与え、下の世話をし、自殺しないように気を配る。数ヶ月が過ぎ、心の交流を互いに感じあえた村民と日本兵。引き取り人も来ないし、そろそろ日本兵が部隊へ戻ってもいいのではということになるが。。。。
かなりユーモアを交えて描かれてはいるが、極悪非道な日本兵の振る舞いに同国民として観ているのはツライ。しかしこれは『こんなに日本はヒドイ国なんだ!』という、冷戦時代にソ連との戦いを描いたハリウッド映画のような一方的なエンタメムービーとは違う。だから日本のことを悪く描きすぎとか占領下の日本だってアメリカ兵に同じようなひどいことをされたとかいう論点ではない。そういう目くらましにひっかかってしまいがちな人は観ても不愉快な気持ちしか残らないでしょうから初めから観ないか、アメリカ占領下の日本が舞台と頭の中で変換して(難しいけど)観られるがよろしい。個人的には村民のすったもんだがちょっと長く感じられたので☆4つ。最後の方の戦争の狂気がいよいよ爆発していくあたりをもっと時間をかけて濃厚に描いて欲しかった。軍人だけでなく人間性豊かな村人までも鬼になってしまう。どんなドンパチ映画よりも、戦争というものはこうも人を狂わせるのかとひしひしと戦争の恐ろしさを感じた作品。香川照之、若いときはクドさが目立ちましたがいい役者さんになりましたね。

デッドマン・ウォーキング スーザン・サランドン、ショーン・ペン

☆☆☆☆☆
死刑制度という非常に重いテーマ。デート中のカップルを仲間とレイプ&殺した罪で服役中の死刑囚と、死刑制度に疑問を感じ男の特赦嘆願を手伝う修道女。男は心を閉ざしていたが修道女との交流の中で生きたいという希望を持ちはじめる。が、自分が犯した罪については弁護士が悪いだの国家が悪いだのといって悔い改めようとしない。修道女は死刑を止めたい一方で、男に罪を認めさせ、神の前で悔い改めさせたい。この修道女の、修道女たる純粋な気持ちと行動を通して、殺されたカップルの親の話など「殺された側の人権」にも深く触れていく。
ともすればお涙ちょうだいのエンタメ感動ドラマになりがちだが、これで賞を獲った2大俳優の力量もあって情に溺れない映画になっている。降ってわいた暴力的な殺人と、死刑制度の上で起こる死。殺された側の人権と罪を犯したものの人権。最後までこの2つの死を平行に並べて見せる描き方に作り手の商業的でない一筋縄では行かない意志を感じる。個人的には「もののけ姫」を観たあとのような感じを持った。どっちが正しい悪いとは一口には決められない。その問題になるに至ったバックボーンからよく知り休みなく考え続けていかなくてはいかない、問題そのものだけでなくそうなるに至った背景(この映画の場合は若者の凶悪犯罪→家庭環境・教育環境・貧富の差・銃社会)をも含めて改善していかなくてはいけない、という気持ちにさせられる。「感動した」「絶対泣ける」という言葉で紹介したくない作品。それならもっとエンタメよりの「アイアムサム」(←ドラマちっくコーナー)をお薦めする。