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BUTTERFLY KISS

イケル・ウインターボトムの劇場作品は現在5本あって、この「バタフライ・キス」は日本では1998年になってから「日陰の二人 ( JUDE )」「ゴー・ナウ ( GO NOW )」に続いて3作目として劇場公開されたが、彼の初監督劇場作品にあたる。他に「ウェルカム・トゥ・サラエボ ( WELCOME TO SARAJEVO )」、「アイ・ウォント・ユー ( I WANT YOU )」と全劇場用作品が公開済みで、日本でも人気の高い監督の一人だと思うが、彼は depressive movie を作るのが非常に上手い(←誉めている)。残念ながら I WANT YOU は観逃してしまったけれど、予告編から察するに、あれも十分 depressive な作品であると思われる。他の4作品も( GO NOW はハッピー・エンドではあったけどその素質は十分あり)スタイルは違うものの、ディープでヘヴィで時にブラックなウインターボトム・ワールドが繰り広げられている。
れから、もう一つ。彼の映画は音楽の使われ方が上手い。既製の楽曲を、さも彼の映画の為に作った曲であるかの如くにピタリと置く。歌詞が悲しいほど美しく情景に溶け込んでいる。それが観ている人をより深く作品に引き込んでいく。

タフライ・キスの物語は複雑ではなく、登場人物も少ない。いわゆる“ハリウッド映画”の様に派手なSFXやアクションもないし、奇麗でグラマーなオーチャンは出てこない。舞台は北イングランドのランカシャー州という所で主人公はミリアムとユーニスの女性二人。女性二人のロード・ムーピーと言うと「テルマ&ルイーズ」を思い出すが、この二人はあの二人とは似ていない。あの二人は、エンディングはどうあれ、たくましかった。あの二人にはパワーがあった。この二人にはあの強さはないように思う。もっとも、旅をしている理由自体が違うのだけれど。

リアムは片耳が難聴で、祖母と二人でアパート暮らしをしていた。ある日、働いている街道沿いのガソリン・スタンドに「ジュディス」という名前の女性を捜しているユーニスが来て、ミリアムは変わる。毎日を過ごすだけの人生から、職場と自宅の往復の人生から飛び出し、自分で何かをする道を選んだ−−選んでしまった。ジュディスを探して放浪するユーニスを追って家も仕事も後にした。(ここでミリアムの祖母がどうなったかなんて考えてはいけない。きっと近所の人がミリアムの代わりに親切に世話をしてくれていただろう。)そして、ミリアムは発見してしまう。ユーニスの歩く後に残された屍に。彼女が築いてきた死体の山に。それでもミリアムはユーニスの後を追う。「何故?」そんなミリアムの疑問にユーニスは答える、神様は自分の存在を忘れてしまっているのだと。だから、自分がいくら人を殺しても、神様は自分を罰してはくれないのだと。それは悲痛な響きだった。ユーニスは神様への呼び掛ける。「私に気付いて」と。「私 はここに居るのに」と。

ーニスは殺人を犯す。「あんたに私が救えるの?」と問うかの様に。ミリアムは追う。彼女しかユーニスを救える者はいないのだと信じているので。残虐な、そして孤独なユーニスに惹かれてしまっているので。

人は一つの答えに辿り着く。静かな海。寄せては返す波。誰もいない砂浜。無邪気に波の間で戯れるユーニスとミリアム。子供の様に、何もなかったかの様に。 そして、そのシーンに重なるように、クランベリーズの「ノー・ニード・トゥ・アーギュ」が流れる。 「There's no need to argue anymore. I gave all I could but it left me so sore. And the thing that makes me mad is the one thing that I had. I knew I knew I'd lose you. You'll always be special to me...to me...」 そしてユニースがミリアムに合図をする。


画が終わって客席の薄暗いライトが点き、観客が無言のまま重い雰囲気の劇場を後にする。例え映画館の外にあるのが晴れ渡った夏の青空だとしても、冬の澄み切った空気だとしても、足取りは重い。重い、重過ぎる。空がやけに眩しく感じたりする。見終った後までしっかり引きずる。余韻?う〜ん、ちょっと違う。だけど、見終った後に重く圧し掛かってくるウインターボトム・ワールドって、たまらない。

=== 作品データ ===
<タイトル> Butterfly Kiss (1995)
<監督> Michael Winterbottom
<出演> Amanda Plummer as Eunice, Saskia Reeves as Miriam,他
<音楽> John Harle
<挿入歌> The Cranberries, PJ Harvey, Bjork,
<時間> 85分
<ジャンル> ドラマ
<言語> 英語

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