<本日のお題>

「黄土の奔流」(生島治郎/光文社文庫)

人に知られぬマイナージャンルを扱うのがモットーのこのサイトだが(知らなかった?
 実はそうなんだよ、明智くん(古))そういう意味では、この本は有名すぎか?…まあ
 いいや、好きなんだから(爆)
 
 時は大正12年、第一次大戦が終わり、日本では軍需景気にも陰りが見え始めた頃…上
 海で経営していた貿易会社が倒産し無一文となった主人公紅真吾は、元は自分の商売敵
 である日本の大企業の依頼を受け、治安乱れる中国大陸の奥地へ、いずれも事情や過去
 を抱えた一筋縄ではいかない男達を連れて冒険じみた取り引きに旅立つことになる。
 その冒険行を彼の右腕として共にすることになる葉村宗明…二人の男の間を繋ぐ、皮肉
 な運命は揚子江の激流の中で決着する……
 
 一言で言って、「男と男の話」ってやつ。
 主人公の紅(中国読みで=ホン。こっちのほうが日本語読みよりしっくりくる)と、そ
 の対極に立つ葉(同じく=ユエ)の間に旅の途中で育つ信頼関係と、その反作用のよう
 に存在し続ける互いを牽制しあう緊張感が物語の本筋だと、信じて疑わない筆者。
  冒険小説とは言いながら、冒険そのものの成功より、人間関係が主眼だと思うわけだ。
 好きだねえ、こういうの(*^_^*)
 
 舞台設定がまたいい。
 大正末期の中国大陸の、雑然とした、退廃と肌を切るような危うさの同居した空気、そ
 して人の運命まで呑み込むような揚子江の流れ…映像が頭の中に拡がっていく感じがす
 る。誰か映画化してくれよ、ほんと…但し主人公二人の配役は、下手な役者じゃ許せな
 いけどね(^_-)☆
 
 ちなみにこの小説には2本の続編がある。筆者が一番好きなのはなんといっても一作目
 だが(まあ、そういうもんでしょ)二作目は、また別の意味の面白さを持ってることも
 特記しておこう。タイトルは「夢なきものの掟」。ラストが、結構好きだ。口にすると
 ちょっと恥ずかしいけど(笑)
 
 実は三作目は、ハードカバーで見つけただけで、まだまともに読んでない…もう文庫に
 はなったかな?ちょっくら探しに行ってみるか……
                             
                                  1999.11.1 By cosmos