<本日のお題>

「二人の事件簿」(1975〜1976/大映テレビ・ABC)

タイトルを見て、「なんだこれ?」と思った人は回れ右してよろしい(笑)

 まるで新婚夫婦の事件簿みたいなタイトルだが、れっきとした「刑事物」である。
 主人公は二人の若い新人刑事 宮坂伸彦(篠田三郎)真樹一夫(高岡健二)。
 
 宮坂刑事は財閥の御曹子。いつもスリーピーススーツで決めた。自称「フェミニスト」
 で家同士の決めた婚約者(いいとこのおじょーさまの筈なんだが、どーいうわけか職業
 は開業医で監察医もやってる(笑))がいる。
 
 かたや真樹刑事は、女手一つで育ててくれた母親を学生時代に亡くして天涯孤独。皮ジャ
 ン愛用で「関西のほうで一生懸命グレていた」経歴の持ち主。(をひをひ)
 
 二人は学生時代、共に「ボクシング部」(学校は違うらしい)に所属、リングで対決し
 たライバル同士。就職後、なぜか同じ所轄署に配属されたが、育ち方や考え方は正反対。
 事件の度に反発をくり返しながら、刑事として成長していく……
 
 と、いうのが基本設定。
 言ってしまえば、ありがちなライバル物。流れとしては「俺達の勲章」超ライト版といっ
 たところか?まあ、この頃のドラマだから、シナリオの出来不出来は激しいし、笑っちゃ
 うような設定(宮坂刑事が捜査中にスポーツカーを乗り回してた、とか…所轄の刑事が
 何故かヨーロッパ(!)まで犯人を追って出張しちゃう、とか(笑))も多々あるんだ
 けど、とにかくキャラクターが良かったんだよね。
 筆者にとっては、まさに、初めて「キャラクターに惚れて」見続けたドラマなわけだ。
 
 主人公二人もだけど、彼等を取り巻く脇役陣?が、なかなか個性的だった
 まず彼等の所属する刑事課の課長役が植木等。軽妙な中に決めるとこは決める厳しさを
 秘めた課長は理想の上司っぽい。
 次に真樹刑事が父親代わりとして慕う「釘師」鉄さんを演じた高橋悦史。これまた高倉
 健ばりの渋さでカッコ良かった。
 それと筆者のお気に入りは宮坂刑事の婚約者「みやこさん」(資料が無いため、漢字、
 名字ともに不明(滅))演じた女優さんも顔は判るんだが名前がわからーん!(をひっ
 て)とにかく…事件の現場にさっそうと白衣を着て現れ、にっこり大人の微笑みで刑事
 達にアドバイスする聡明な女医…といった役柄で、単に番組の花で終わらない魅力的な
 キャリアウーマン像だったのだ!
 フェミニスト=プレイボーイ(何せ、番組の初登場シーンは、婚約者以外の女性と、ホ
 テルのベッドの中だった(笑))の婚約者宮坂との掛け合いも絶妙で(彼女の「伸彦さ
 ん」という呼び方が好きだったなア)ドラマ的にも後半、大きなウェイトを締めるよう
 になったのも頷ける。イイ女…好きっす(爆)
 
 そして肝心の主人公コンビ。
 敢えて「コンビ」と言っちゃうね、ここは(笑)
 日本のTVドラマは正当派のバディストーリー(所謂「相棒もの」)が苦手なのか、主
 人公が二人いると、必ず「対立する」図式になるんだけど…(例外は「あぶない刑事」
 …ま、これはまたじっくり(笑))「二人の事件簿」の場合は、その図式が結構うまく
 働いていたと思う。
 これは、一つには、彼等の「若さ」によるところが大きい。先輩刑事や課長から「ひよ
 こにもならない卵刑事」と呼ばれてしまう2人(後にひよこに昇格(笑))は、未熟で
 ナイーブで未完成…だからこそ、相手の考え方や心の動きが読み取れなくて、対立もす
 るし喧嘩もする。でもそれは、「若さゆえ〜♪」なんだよね。
 
 この件に関して筆者お気に入りのエピソードがある。
 捜査中に犯人の愛人の罠にかかって「飲酒運転による事故」を起こしたとして逮捕され
 てしまった宮坂。「あいつならやりかねない」とあくまで態度の冷たい真樹。しかし護
 送中に起こった事故で宮坂は脱走……「逮捕するために」探していた真樹は、雨の中、
 いつものスタイリストぶりの影も無く排水溝にうずくまる宮坂を発見する。
 (ここからシナリオ風に(笑))
 (排水溝…雨に濡れ、疲れ果てて座り込む宮坂の側に、子犬が一匹寄ってくる)
 宮坂「…………(子犬を抱き上げて微かに疲れた笑みを浮かべる)」
 (排水溝の外に人の足音…顔をあげる宮坂…しかし逃げ出す気力は無い)
 真樹「(宮坂の姿を見て足を止める)……………」
 宮坂「(真樹に向かって笑いかける)………お前か………」
 (そのまま気を失う宮坂…彼の側に近寄り鳴く子犬の姿を見つめた真樹は、黙って宮坂
 の身体を抱え上げて排水溝を出る…)
 そして真樹は宮坂を警察ではなくて婚約者のいる病院に連れていくわけだ(^^)
 
 「だから何?」と言われてしまえばおしまいなんだけど(笑)この二人の一種もどかし
 い距離感が、何か新鮮で良かったのだ。最初から信じあってる「相棒同士」ももちろん
 かっこいいけど、相手を理解できずに右往左往し、ぶつかり合いながら、お互いを少し
 ずつ理解していくっていうのもなんかいいな…と自然に思えるエピソードが結構マメに
 積み重ねてあるドラマの作りだったと思うんだよね。
 
 そして、その自然さは、二人の刑事それぞれのキャラクターによるところも大きい。
 宮坂は、所謂「おぼっちゃま」で「プレイボーイ」、下手をすると嫌味になるか頼り無
 くなりそうな設定なんだけど、内に秘めた優しさや強さがちらちらと見え隠れするとこ
 ろがナイス。(ちなみに筆者は宮坂ファン(笑))回を重ねるに従って、落ち着きや思
 慮深さ、周囲との信頼関係も出来て、スタイルだけではないかっこよさも身についてい
 く過程が楽しかった。(特に婚約者との関係。最後はひじょーに「いい感じ」だった…)
 真樹は、人情家だけど感情が先走る所謂「暴走型」、ストレートな感情表現は視聴者的
 にはついていきやすかったものの「おいおい落ち着けよ」的な思い込み行動や犯人に騙
 されるパターンも多かった(笑)でも、やはり成長していく段階で、一面だけではない
 物の見方、自分なりの刑事としての信念みたいなものが確立していって、頼れるタフガ
 イ(の卵(笑))に近付いていった。
 
 そのうえで、二人の間に出来ていった(どこか素直じゃないけど(笑))信頼関係……
 犯人に拉致された宮坂を救うために、共犯者に銃を向け「俺は、回りの人間を守るため
  に刑事になったんだ…宮坂はいい奴なんです!」と叫ぶ真樹なんて、番組開始当初は影
  も形も無かったものねえ…(しみじみ…)
 この台詞を聞いた時には、「君達、ほんとに相棒同士になったのねえ…」と感慨もひと
 しおだった筆者(当時ローティーン(爆))
 
 再放映も全然ないドラマだけど…今になってもう一度見たいと思う。いや「今の」二人
 が見たいのかな?きっといい男になってるだろね、二人とも(笑)
 
                              1999.11.1 By cosmos