上々の青春ドラマ、綾瀬はるか好演 連続ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」


 売り上げが300万部を超えた片山恭一のベストセラー小説をドラマ化した「世界の中心で、愛をさけぶ」(TBS系)。ヒットした映画に続いての連続ドラマ制作となったが、白血病の少女と同級生の悲恋を描く青春ドラマとして、出来映えは上々のようだ。初々しい演技の中から美しさ、はかなさを醸し出すヒロイン綾瀬はるかの存在感、周辺人物の手厚い人物描写などが印象的だ。

 高校生の松本朔太郎(山田孝之)と、白血病で亡くなった亜紀(綾瀬)の純愛を、成人した朔太郎(緒形直人)が振り返るという基本構造は、映画と同じ。この「3者」(実際は2人だが)にふんする大沢たかお、森山未来、長澤まさみに加え、柴咲コウ、山崎努を加えた5人に特化して物語を展開させていた映画と比べると、朔太郎と亜紀の家族や友人の描写が多く盛り込まれ、全体のバランスが良い。陸上競技の県予選のエピソードなど、ドラマ独自のみずみずしい描写も随所にちりばめられている。

 特筆すべきは綾瀬の好演だろう。オ−ディションで723人の中から選ばれたというが、醸し出す新鮮さ、清潔感ともに抜群。亜紀になり切っていた映画版の長澤と比較しても、その存在感に遜色はない。ドラマは病棟のシーンに移ってきたが、死に直面する亜紀の心情も的確に表現してくれるものと期待が膨らむ。

 対する男性陣。緒形は、忘れ得ぬ亡き恋人の面影を追う現代の朔太郎を堅実に演じているが、やや“湿っぽさ”が前面に出過ぎか。自然かつナイーブな演技で、喪失感と新たな一歩を踏み出す意志を表現した大沢の朔太郎の方が、素直に共感できる。一方、山田は演技にやや力みが見え、朔太郎の高校生らしい無邪気さが薄すぎる。若き朔太郎は、主役級に成長する過程で新鮮さが消えた山田ではなく、綾瀬のようなフレッシュな若手を抜てきしても良かった気がする。

 ウオークマン、深夜ラジオ、渡辺美里の楽曲などを使い、1980年代後半の“におい”を色濃く醸し出したり、大人の朔太郎と恋人(柴咲)の関係が描かれたりと、原作を超えた独自色が強かった映画版。「純愛」「永遠の愛のありよう」などを自分の視点で見詰めようとする行定監督らのこだわり、もしくは「覚悟」がスクリーンから伝わってきた。対するドラマ版は、作りは丁寧ながら、演出の堤幸彦監督らの「思い入れ」のようなものが見えてこない。

 終盤に向け、朔太郎と亜紀の永遠の別れが描かれることになるが、悲しく、美しいであろう描写の中から、この作品に懸ける作り手の「意志」を感じたい。

(2004年8月7日執筆)