「過去」か「今」か、異なる姿勢
「僕と彼女と彼女の生きる道」と「エースをねらえ」のSP版
連続ドラマの不振が何年も続く寂しい時代ではあるが、視聴者の心をとらえる作品がわずかながらも存在するのも事実である。秋の改編前に放送された2本のスペシャルドラマは、オリジナル脚本で人生の意味を問い掛ける物語と、人気アイドルを魅力的に見せることに専念する制作手法が支持を集めた連続ドラマの続編だ。両作品を視聴して、過去を振り返るのか、今を描くのかという根本的な姿勢の違いが、作品の魅力に直結した印象を受けた。
その1本は、9月18日放送の「僕と彼女と彼女の生きる道スペシャル」(フジテレビ系)。連続ドラマとしては、今年1月から3月まで放送され、妻に離婚を切り出され、家出された徹朗(草g剛)と娘凛(美山加恋)の親子関係、人生を見詰め直す徹朗の選択などを静かなタッチでつづる秀作だった。今回のスペシャル版は、母に引き取られた凛が、徹朗に会うために乗り込んだ新幹線に乗り込み、隣席の男性らに語る形式で、連続ドラマの内容をダイジェストで紹介。親子や夫婦、恋人関係について、新たなメッセージを期待していた身としては、「過去を振り返るだけではないか」と不満が残った。
もう1本が、9月23日放送の「エースをねらえ」(テレビ朝日系)の2時間スペシャル。「僕と―」と同時期に放送された連続ドラマだが、スペシャル版で描かれたのは“その後”。宗方コーチの死にショックを受けた岡ひろみ(上戸彩)が、別のコーチや仲間らに支えられ、成長していく様が描かれていた。宗方の死に戸惑い、自分自身を見失ったひろみが再生していく姿はすがすがしく、「自分を信じている限り、何があってもやっていける」などという登場人物のせりふも印象深かった。そして、演技や表情、衣装などから上戸の魅力を最大限に引き出そうとする制作陣のエネルギーも、連続ドラマ以上にみなぎっていた。
連続ドラマを見逃した視聴者をターゲットとするのなら、「僕と―」の作りは悪くはない。しかし、「今」がつづられることがなかったのは、なぜか。凛は神戸でどんな暮らしをしていて、どのような成長を遂げたのか? 徹朗はこの半年間、自分の生きる道をどう歩いてきたのか? 徹朗とゆら(小雪)はどのように関係を深めたのか? 「僕と彼女と彼女の生きる道」と銘打つ以上、ごくわずかなせりふの中からにおわせるだけでなく、実写で少しでも見せるのが視聴者への礼儀だろう。
「今」を描かないドラマが「スペシャル」なのか? 制作意図は「視聴率」だけなのか。疑問ばかりが残るだ。
テレビドラマの衰退は、異様なまでに視聴率を重視したり、脚本を軽視したり、新人発掘や俳優の演技力育成を怠ったりしてきたテレビマン自身に問題があるのは明白。手抜きがあるなら、すべて排除すべきだと思うのだが…。
(2003年9月23日執筆)