男くさい群像劇、薄い三谷幸喜の個性 大河ドラマ「新選組!」終了


 三谷幸喜が脚本を手掛けた今年のNHK大河ドラマ「新選組!」。26日放送の「スペシャル」を見直して、幕末の動乱期に信念を貫こうとした人々の生き様を描く、例年以上に“男くさい”作品だったことを再認識した。その一方、コミカルな風合いを持ち味とする三谷の個性は薄く、年間を通じてインパクトに欠ける作品だった。

 新選組の近藤勇(香取慎吾)とその同士たちの群像劇である今作のコンセプトは、「未来に期する若者たちの熱い思いを描く」ことだったが、前半は「群像劇」であることが災いしてか、「情熱」が今ひとつ伝わってこなかった。だが、近藤と隊士との葛藤や、官軍優勢の情勢の中で近藤らの苦悩や挫折が色濃くなるに連れ、ストーリーに動きが生じ、登場人物から「男の情熱」が発散するようになった気がする。

 舞台俳優、お笑いタレント、アイドルら、多彩な顔ぶれが“売り”だった今年のキャスティング。鈴木京香ら一部を除き、優香、菊川怜ら出演女優の存在感は総じて薄かったのに対し、男性陣は各自の持ち味を発揮していたのが印象的だった。中でも、土方蔵三役の山本耕史、切腹して死んだ山南敬助役の堺雅人はひときわ個性的。特に山本は、現存する土方の写真と風貌までそっくりで、存在感は抜群だった。

 ここ数年の大河ドラマは若い視聴者層を意識して、キャスティング重視の傾向が続いているが、NHKは今回、喜劇作家の三谷を脚本に起用。「トレンディー大河路線」に膨らみを持たせようとの意図が感じられ、好感を持って受け止められたが、終わってみれば、三谷が書いたのは「ごく普通の大河ドラマ」。坂本龍馬と近藤が遭遇するなど、史実を超えたとされる意表をつく設定は見られたものの、コミカルな描写、軽妙な掛け合いは散発的で、「三谷らしさ」の発露が中途半端だったのが実に残念だ。

 来年1月から始まる次の大河ドラマは「義経」。主演の滝沢秀明をはじめ、石原さとみ、上戸彩、後藤真希ら若い顔ぶれが数多く並んでいるが、平清盛役の渡哲也、武蔵坊弁慶役の松平健の存在感や演技力に飲み込まれはしないだろうか? 「トレンディー大河路線」もそろそろ目新しさがなくなってきた時期だけに、作り手には本格的な人間ドラマを見せてほしいところだ。滝沢の健闘を期待したい。

(2004年12月28日執筆)

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