目玉不在の平板なステージ NHK紅白歌合戦
2004年大みそか放送の第55回NHK紅白歌合戦。元プロデューサーが詐欺容疑で逮捕された後、そして海老沢勝二会長の進退に注目が集まる中、その出来映えが注目されたが、視聴率は第2部が39.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最低を大幅に更新。目玉も特徴的な演出も少ない平板なステージでは、「愛、感動、希望の歌を」というコンセプトが視聴者に伝わるはずがなく、当然の結果と言える。
今回は56組の歌手やアーティストが出場。アテネオリンピック(NHK関連番組テーマソングを歌ったゆず)、韓流(『冬のソナタ』のRyu、『美しき日々』のイ・ジョンヒョン)、新潟中越地震(小林幸子の大トリ起用)など、2004年の時流を歌で具現化しようとする工夫の跡は見受けられた。出演者の中では、紅白の歴史を再現した氣志團の演出は見事。韓国文化観光広報大使イ・ビョンホンの真摯な挨拶、紅白を真っ正面から斬った波田陽区の気概には、拍手を送りたい。
唯一、目玉と呼ぶことができたのが「マツケンサンバU」。NHKホールのステージが狭いからか、腰元ダンサーズが多すぎたのか、ステップを踏む松平健の動きが若干窮屈だった気もするが、衣装と踊りのインパクト、観客に「見せる」というプロ意識の強さで、群を抜いていたのは確か。紅白が松平のためのステージだったと言っても過言ではなく、強烈なまでの存在感を見せつけた。
今回、NHKは不祥事を受け、出場してほしい歌手男女15組を尋ねるアンケート調査の結果を公表するなど、視聴者に改革をアピールする手法を採用した。その一方、昨年に続いての本番2日前の曲順発表など、番組作りとは別の所に神経を使うスタンスは継続。作り手の視線が視聴者でなく、視聴率(=組織内部)に向けられていたことが、今年も明らかになった。ならば、サザンオールスターズ、SMAP、宇多田ヒカルら出演を断られたアーティストの“そろい踏み”の実現などに心血を注ぐべきだろう。
紅白の基本線は、あるステージコンセプトの下で、1年を象徴するヒット曲や、音楽界の一線で活躍するアーティストの魅力を視聴者に紹介することではなかろうか。人気凋落が著しい今こそ、作り手は「基本」に立ち返る時だ。
もう一つ付け加えるとすれば、アナウンサーの“はしゃぎぶり”は年々見苦しさを増している気がしてならない。視聴者が紅白で見たいのは、局アナの活躍ぶりでも涙でもないはず。謙虚な仕事を心掛けてほしい。
(2005年1月9日執筆)