独りよがりな「悩む武蔵」 NHK大河ドラマ「武蔵」終了
剣豪宮本武蔵の生涯を描くNHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」が、12月6日で終了した。4月以降は番組への関心が薄れ、平均視聴率は16・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、低調な結果に。悩むばかりの武蔵像は魅力に乏しく、視聴者に受け入れられる訳がない。制作者の思い入れを追求する独りよがりなドラマ作りが、今日的なテーマを内包した題材を台無しにしてしまった気がしてならない。
最終回は、大阪夏の陣以降の武蔵の人生が描かれたが、大半は1年間を回顧する内容に。武蔵(市川新之助)と柳生宗矩(中井貴一)の対決は、あまりに非現実な気がしたが、何より驚いたのが、晩年の武蔵の描写が異常に粗かったこと。晩年の姿は、数カットしか放送されなかったが、番組の不人気で、例年より番組終了が一週早かったことが理由なのか?
振り返れば、ドラマが一定の盛り上がりを見せたのは、3月までだった。悩み、惑う若き武蔵が成長を遂げていくロードムービーとしては優れた出来映えで、吉岡一門との決闘も迫力があった。自分を信じ続ける武蔵の人生を描くことで、暗い世相を生きる現代人にエールを送ろうとする制作側の狙いも、明確に伝わってきた。しかし、4月以降、作り手がそのテーマを意識し過ぎたようだ。武蔵の内面を深く見詰めようとするあまり、エンターテインメント性を排除した展開に陥り、ドラマから躍動感が消え去った。
今回、吉川英治の原作には登場しない、巌流島以後の武蔵やお通らの人生が、10月以降、2カ月以上に渡って放送された。この間、柳生一族との確執、真田幸村との交流などが描かれたが、史実の枠をあまりに超え過ぎている気がして、素直に視聴できなかった。
出演俳優の中では、又八役の堤真一、佐々木小次郎役の松岡昌宏らは、好演、健闘が光った。一方、主演の新之助は、武蔵の若年時代こそ熱演だったが、武蔵が剣の腕を上げたころから演技の迫力が消え、惰性で演じている印象さえ受けることも。新之助との熱愛報道があった、お通役の米倉涼子は、最後まで感情表現も発声もつたなく、演技力は全く向上しなかった。
さて、来年1月からは、新たな大河ドラマ「新選組!」が始まる。人気者を並べる「トレンディー大河」路線と、三谷幸喜脚本の持ち味である軽妙でコミカルな風合いが、どこまでマッチするか。俳優の魅力を引き出すところで終わらせることなく、激動の時代を駆け抜けた近藤勇らの人間性を深く掘り下げてほしい。
(2003年12月12日執筆)