心に響いた「世界に一つだけの花」 NHK紅白歌合戦
2003年大みそか放送の第54回NHK紅白歌合戦。今年は、裏番組に集中した格闘系3番組との対決が注目を集めたが、肝心の中身で心に響いたのは、大トリでSMAPが歌った「世界に一つだけの花」など、ごくわずか。疑問を抱かせる人選、選曲も目に付いた。NHKは今回、曲順発表をぎりぎりまで遅らせるなど、異例の視聴率対策を講じたが、その割には寂しく、薄い内容だった。
昨年は、過去最高となる62組の歌手やグループが出演。米大リーグヤンキースの松井秀喜選手が実家から出演したほか、錦織健と女子十二楽坊が共演したり、BEGIN、森山良子、夏川りみの3組で「涙そうそう」を歌ったりと、工夫の跡が垣間見られた。「さくら」の森山直太朗、楽曲制作者の長渕剛と共演した森進一らのステージは、視聴意欲をそそられた。
最大の目玉となったSMAP。CDセールスが200万枚を超えた昨年最大のヒット曲を大トリに添えるのは、当然のことだろう。白いスーツ姿でステージに立った5人の熱唱が、白組を圧勝に導いた。歌う前に5人が平和を願うメッセージを語り掛けたが、歌の趣旨との相乗効果をもたらす好演出だった。
全体の内容や構成を振り返ると、残念ながら、今回も「平板」との印象が強かった。ジャンル、世代を超えた出場者を裁くのは至難の業なのか。ただ、問題点の幾つかは明確なはずだ。倉木麻衣やゆずの初出演は時機を逸していないか? 後藤真希が「オリビアを聴きながら」を歌う意味が分からなくはないか? 和田アキ子、山本譲二をはじめ、現在ではなく、過去のヒット曲を歌った歌手が多すぎないか? “人気アナウンサー”が、はしゃぎすぎではないか?
今年の曲順発表は12月29日。NHKが裏の格闘番組を警戒したためだ。近年は、ニュースやミニ番組での宣伝にも力を入れているようだが、視聴率を意識する余り、その年を象徴するヒット曲、歌謡界を代表する人々の生き様を視聴者に届けるという趣旨が霞んでしまえば、番組の存在意義にかかわるのではないか。NHKには、時代を映す国民的番組を制作する責任や気概を忘れてほしくない。
☆視聴率は、第1部が35・5%、第2部が45・9%(ともにビデオリサーチ調べ、関東地区)で、第2部は過去最低だったとか。一方の格闘番組では、ボブ・サップと曙が対決した「K−1プレミアム2003」(TBS系)が最高(19・5%)だったという。今年は、同じような格闘番組が集中する事態は避けてもらいたいものだ。
(2004年1月3日執筆)