配役重視、だが物語や人物描写は… NHK大河「新選組!」


 それにしても、これほど躍動感がないのはなぜなのか? 江戸時代末期の人間群像に深い思い入れを持つ三谷幸喜が脚本を手掛けるとあって、NHK大河ドラマ「新選組!」は放送前から期待が高かった。だが、ふたを開けてみれば、全く盛り上がらないまま約4カ月が過ぎた。ここ数年、キャスティイング至上主義が色濃い大河ドラマだが、今回は脚本を含め、「誰を起用するか」に制作側が気を配りすぎた結果、物語設定や人物描写がおろそかになっている、と言っては言い過ぎか。

 今作は、幕末の京都で、倒幕の志士たちに恐れられた新選組の近藤勇(香取慎吾)とその同士たちの群像劇。香取をはじめ、オダギリジョー、菊川怜ら“旬”のタレントをはじめ、お笑いの山口智充、歌舞伎の中村勘太郎、舞台で活躍する山本耕史ら、幅広いジャンルから起用した“こだわりのキャスティング”が売りだ。

 未来に期する若者たちの熱い思いを描く―。不況が続き、日本人が自分を見失っている時代にあって、掲げられた制作意図は時宜を得ている。しかし、出演者の演技や表情に、エネルギーがほとばしることはない。特に、主演の香取の表情からは、時代を切り開こうとする若者の情熱が読み取れないのが寂しい。「群像劇」であることが災いして、作者や演出ディレクターの情熱が各登場人物に分散しているのか?

 2002年放送の「利家とまつ」で、民放連続ドラマの常連をそろえ、世間を驚かせたNHK。同作は女性層の支持を集めたことで、キャスティングの重要性を認識し、その流れを踏襲し続けている。だが、「利家とまつ」が成功したのは、「戦国ホームドラマ」というコンセプトが明確だったから。賛否は別に、主人公の内面を描くことを徹底した「武蔵」はともかく、「新選組!」は現時点まで「これを描きたい」という部分が伝わってこない。

 とはいえ、ドラマはまだ序盤。新選組の活動が本格化する今後は、ストーリーに動きが生じるはず。激動の時代に人生を切り開こうとする若者たちの情熱や苦悩、激しい殺陣、三谷が得意とするコミカルな描写を、もっともっと期待したい。

 もう一言=ドラマのコンセプトを的確にとらえた服部隆之の音楽、ジョン・健・ヌッツォの歌はすばらしい。時代考証への批判は無意味。その時代を生きた人間が存在しない時代劇は、空想の産物であってもいいはずだから。

(2004年4月24日執筆)