レトロな朝ドラ、正調か?退屈か? NHK連続テレビ小説「天花」
「レトロ」。放送中のNHK連続テレビ小説「天花」を一言で表現しようとする時、この言葉が脳裏をよぎる。保育士として子供たちを育てるヒロインから、太平洋戦争を経験した先達まで、幅広い登場人物を丹念に描写しようとする正統派のドラマなのだが、視聴者の心を躍らせる仕掛けが少なすぎる点も否めない。オーソドックスか、退屈か―。視聴者の評価が分かれる朝ドラと言えそうだ。
ヒロイン佐藤天花(藤沢恵麻)は、母の実家である仙台の笹かまぼこ屋で育ち、高校卒業後に上京。保育士の仕事に出合い、資格を取った後、相徳寺保育園で働いている。祖父(財津一郎)と戦友(中村梅之助)が決めた許嫁竜之介(平山広行)との恋模様が、ストーリーの最大の柱だが、天花を取り巻く人々のエピソードも手厚い。「米」「戦争体験」「子供」などと扱うテーマは実にきまじめで、今作に込めた作者の竹山洋のこだわりが感じ取れる。
ヒロインを務める藤沢は、みずみずしく、あどけなさが残る表情が魅力的。どこか懐かしさが漂う容姿は、レトロな作品を象徴する存在だ。演技は初体験というだけに、ぎこちなく、感情表現につたなさは隠せないが、ひたむきな姿勢はフレッシュで、好印象を受ける。
竹山や藤沢らの心意気は、確実に画面にあふれているのだが、ドラマとして視聴者を楽しませてくれるかと考えると、残念ながら疑問符が付く。次の展開が気になるエピソードや登場人物はごくわずか。加えて、戦争世代や、天花の父信夫(香川照之)の年代の登場人物は、キャラクター設定が的確なのに対し、天花をはじめとする若者たちは、生気に薄い。そのせいか、肝心の天花と竜之介の恋模様にも、今ひとつ心が躍らない。若者の描写への“てこ入れ”は、人気上昇のためには必須だろう。
出演俳優の顔ぶれは総じて地味だが、表現力は一様に高い。香川をはじめ、竹中直人に富司純子ら、演技力や個性でドラマにアクセントを付けている俳優も数多く存在する。彼らとの共演を通じて、藤沢の演技や表情が変ぼうを遂げるのか? 女優としての成長ぶりが楽しみだ。
(2004年6月7日執筆)