束のウイークエンA


バー・セットから、
ローガンのスコッチの
壜が出され、
オールドファッションの
グラスに半分ほど
注がれた。

奴は、それを
通ぶって飲む。
マッカリ酒のほうが
好みだが、気取って
みたりもしたかった。
マディスンの葉巻を
交互にくわえた。

自分ではかなり
クールだと勘違い
しているが、月の
表面と見間違うほど
デコボコな頬を持つ
奴がやっても
空しいだけだ。

「おい。海の野獣号から
連絡はこないのか?」

奴は苛立って、
秘書に問うた。

「はい、ミサイル全弾を
発射するように命令は
したのですが、
それ以来、音沙汰が
ないのです・・。」

「くそう。何を
しておるのじゃ。」

17歳の少女が、奴の
グラスに唾を
垂らした。

奴は、グラスを
人差し指と中指の
間に挟み、ゆらゆらと
回した。

「芳醇な香りが
いっそうするで
ごわす。」

少女の唾液入りの
スコッチを飲み、
再び、少女に
むしゃぶりつく。

「会長、海の野獣号から
連絡がきました。」

「ツナゲ。」

奴は、少女との交わり
を、中断され
いささか不満げだ。

海の野獣号から、
芳しくない状況が
説明される。

一発目のミサイルは
ウランが抜き出されて
いたことや、ミサイルの
発射で自衛隊と
アメリカの軍隊が
海の野獣号を包囲する
ため動き出した
ことなどが
告げられた。

「貴様、それでも
人間か?
ガッツとファイトが
たりんのじゃない
のか?それが
栄えあるわしの
軍隊の取るべき
行動か?」

奴は、悪までも
徹底抗戦を
希望した。

「貴様ら、心を
鬼にせい。自衛隊や
アメちゃんが怖くて
この先、天下とれると
おもとるのか?
海の野獣号は
天下無敵の
一匹狼じゃんか?
本気出せば、
世界を相手に戦える
原子力潜水艦じゃん。
成せばなる、
成さねばならぬと
いうじゃないか?」

海の野獣号は、その頃
完全に位置を特定
されていた。

自衛隊の超音速
戦闘機が数機、
すでに野獣号の
上空付近を飛んで
いた。そして、
日本屈指の最新鋭
超巨大原子力潜水艦
ゑひめ丸が
サブロックミサイルの
発射準備を行って
いた。

全世界に張り巡ら
された、諜報機関から
の情報で、すでに
海の野獣号が
中共のものであることが判明していた。

海の野獣号から
すでに一発の
中距離ミサイルが
日本国内に発射
されている以上、
日本とアメリカの
軍隊が攻撃を
開始する大義名分は
十分に成立する。

野獣号は、レーダーで
包囲されていることを
理解した。ミサイルを
一発発射したの
だから、主要都市に
向けて、攻撃を
加えるという脅しは
もはや通用しない。
しかも、ミサイルは
ウランが抜き取られ
不能なのだ。
さらに、深海へと
野獣号は潜って
いく。

その時、沈没などは
絶対にしそうにない
ゑひめ丸から、
対潜水艦ミサイルで
ある、サブロック
ミサイルが発射され、
轟音が響いた。
計5発放たれた。

そして、マスの目状に
区切られたレーダー
から、先ほどまで
存在していた海の
野獣号の反応が
消えた。

「がっぺむかつく
じゃん!!!!」

奴は、唸った。

「会長、海の
野獣号から、
反応が消えました。
連絡も取れない
状態です・・。」

日本政府とアメリカ
政府は、日本の
領土内で、核を
保有する原子力
潜水艦が沈没
したという情報を
公表しなかった。

奴は、涙を
こぼした。

「畜生・・。
くそう・・・。
俺の一番の
お気に入りだったん
やぞ。あれは・・。
くそう。絶対
何としてでも
償いはさせてやる。」

少女の胸の谷間に
顔をうずめたまま、
奴は、寝息を
立て始めた。


トップへ戻る