てもっと自由なもんD


 買戻しの交渉は難航した。それは、
バーストリテイリングの柳沢一族という
よりも、メインバンクの東京四菱信託
銀行が猛反発したからだ。

 しかし、その交渉も回を重ねるうちに、
互いの妥協点を探り合い、なんとか
今日の最終段階まで持ち込めた。

 バーストリテイリングは東京四菱からの
特別融資と自分たち兄弟が溜め込んだ
隠し金の一部を出すことによって、
樺山の会社から株を買い戻し、そして
その株を時価から9.99パーセント
値引きした価格で東京四菱に引き取って
もらうことで合意が取れた。

 バースト側が買い戻した株を、10
パーセント以上値引きして東京四菱に
渡したら、東京四菱は贈与税を取られて
面白くない。

 東京四菱はバーストに役員を5名送り
こむことができた。そして、バースト側は
樺山との一件が落ち着けば、恩返しに
東京四菱に3割の無償増資を行うこと
も決まっている。

 柳沢の別荘を管理している老夫婦が
サロンにはいってきた。アルコール
バーナー付のワゴンを押している。
香しい松露入りのコンソメ・スープ
からディナーが始まった。

 グラビアアイドルでもある童顔巨乳の
小酒井若菜がテーブルについた男達に
ボルドーのワインを注いで回った。

 男達から、生唾を飲む音がかすかに
聞こえる。若菜の濃艶な香水の匂いが
いっそうズボンの前を膨張させた。

 その頃、霧に包まれた柳沢の別荘の
庭に4人の男たちが姿をあらわした。

 4人の男は、左から田原、鈴木、桜井、
中川と言う名前だ。身長は165から185
と様様だった。全員、米特殊部隊用の
カモフラージュ色戦闘服をまとっていた。

 同じ色彩のヘルメットをかぶり、顔や
首や手にも同様のペイントを塗っている。

 4人とも、腰にM16自動ライフル用の
キャンヴァス製の弾倉帯を巻き、それに
拳銃のホルスターと、破片型手榴弾と
焼夷型手榴弾を3個づつ差していた。
銃剣もつるしていた。

 背中には小型のデイパックを背負い、
肩からM16A1自動ライフルやロープを
かけている。

 彼らが放つ雰囲気には、冷酷なものが
漂い、身振り動作に隙はない。山誠会や
青龍組のヤクザとは明らかに違う凄みが
あった。

 4人の戦士達は音もなく、母屋のほうへ
近づいていった。

 母屋の周りを警戒する山誠会と青龍組の
パトロール部隊に見つかる範囲までくると
彼らは二人で一組になり、左右に分かれた。

 桜井と鈴木の組は母屋に向けて進む
内に、一組のパトロールを見つけた。
忍び寄る。そのパトロールは腕に黒の
腕章を巻いていた。樺山の山誠会の
連中だ。

 潅木の茂みに身を隠した桜井と鈴木は
カモ二人が通り過ぎてから間髪入れずに
行動に入った。

 そっと起ちあがった桜井が、ガーバー
マークTのナイフでパトロールの男の
延髄を抉った。

 延髄とは、頚椎と頭蓋骨の間にある
脳の最下部のボンのクボといわれて
いる部分だ。ここを攻撃すれば、
一瞬で即死させることができる。

 桜井は突き刺したナイフをねじった。
完全に破壊する。

 刺された男は、一瞬間を置いて倒れた。

 鈴木も桜井と同様、もう一人の男の
心臓に錘刀を突き刺していた。そいつは
何事もなかったように数歩歩いた。
錘刀は外傷を残さずに攻撃できる武器と
して有名だ。刺されたものは自分が
何をされたのかも気づかない。

 そして、錘刀で攻撃された男も延髄を
破壊された男と同じように地面に倒れた。

 二人とも即死だ。


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