だよきみもいつしかE


 一方、田原と中川のほうも、パトロールの
連中を始末しはじめていた。

 中川は背中のデイパックの中にいれて
いた張力250ボンドでは、至近距離だと
張りすぎるために張力を200ボンドに
調節したコマンドウ・クロスボウの銃床を
折って、テコの原理で弦を引き絞り、
逆鉤に引っ掛けると、右腿に縛り付けて
ある矢筒から、4百グレインの重さの
4枚刃の猛獣狩り用のヘッドがついた矢を
つがえ、一番近いパトロールの一組の
右側の男に忍び寄る。

 フォールディングナイフを右手に備えた
田原は、そのパトロールの左側の男へ
忍び寄った。

 中川はコマンドウ・クロスボウを肩づ
けし、銃床を右頬に密着させると、
クロスボウにライフル・スコープを装着
したウイリアムズ・クイック・サイド・
マウントのピープサイトの方を使って、
20メーターほど斜め前でぼうっと霧に
霞む青龍組のパトロールの一人の首
に狙いをつけた。

 霧が深いためにライフルスコープでは
よく見えにくいからだ。ピープサイトとい
っても、中川が使っているものは、射撃
競技用の精密な小径の孔ではなく、
狩猟用の大きな孔のものだから、肉眼
でみえる範囲のモノになら、何とか狙いを
つけることができる。

 中川はそのクロスボウを30メーターの
距離で照準あわせをしてあった。

 田原は、フォールディングナイフを構え、
男の首部分を狙っていた。

 田原は、さらに男に近づく。5メーター
ぐらいまで近づいたときに、二人のうち
左側の男が後ろを振り返った。

 驚愕の表情で口を開きかける。そこへ
田原の研ぎ澄まされたナイフが男の
頚動脈を切断した。

 噴水のように血しぶきが空に上がる。
刺された男は必死に手を首に当てるが、
指と指の間から血が吹き出た。

 中川はクロスボウの引き金を絞り落と
した。矢が風を切る音が無気味に聞こえた。

 4枚刃の矢尻は、狙った男へ一直線で
飛んだ。そして、男の気管と頚椎を破壊
した。首のななめ後ろから矢尻とアルミ・
シャフトの矢が突き出る。

 男は声をあげることもできずに、崩折れ
た。

 田原に刺された男のほうも、倒れた。
首に手をやる力も残っていないようだ。
あと数十秒で出血多量と呼吸ができずに
死ぬはずだ。

 中川はクロスボウに矢をつがえ、ブロウ
ガンにダートを差しこんだ。

 田原と中川は慎重に母屋のほうへ
歩き出した。

 その時、イバラの茂みにすくんでいた
メスキジと若いキジの一家が、けたたま
しい羽音をたてて、二人の足元近くから
飛び立った。田原と中川は咄嗟に、
蹲る。

 「何だア?」

 「どうしたああ?」

 と、叫び交わすヤクザの声が響いた。

 怯えたような声で仲間達と、音が聞こ
えたほうにむけ、叫びつづけた。少なくとも
5人はいるだろう。

 田原と中川は、クロスボウとナイフでは
処理できないので、腰の弾倉帯につけた
ホルスターから、口径357マグナムの
S・Wコンバットマグナムの拳銃と、これも
口径357マグナムのコルトパイソンの
拳銃を抜き、撃鉄を起こしておいた。

 二丁とも4インチ銃身のタイプで、ダブル
アクションのリボルヴァーだ。

 しかし、一度銃声をたててしまえば、あと
は撃ち合いになって、今まで自分達が
静かに殺してきた行為は気泡になる。

 二人は、敵のヤクザが静まるのを
願った。

 その時、ヤクザが、

 「ありゃあ、キジが飛び立った音だ。」

 「そうだ。おれもさっきの音は鳥かなんか
の音だと思う。」

 と、言い合った。

 「くそ、びっくりさせやがって・・・。」

 「キジかよっ。そうなのかよっ!!」

 と、ヤクザ達は言い合った。

 しばらくして、当たりに再び静寂が
訪れた。

 田原と中川は、そっとため息をついた。
そして、ニヤリと笑った。さっきの出来事で
他のヤクザの位置関係がわかったからだ。
これから、首尾よくカモを始末していける
わけだ。

 二人は、手に握っていたリボルバーの
撃鉄を親指で押さえながら引き金を
絞った。親指の力をそっと抜いていくと、
撃鉄は静かに倒れ、暴発はしなかった。

 ホルスターに拳銃をしまい、中川は
クロスボウを、田原はナイフを持ちヤクザ
のほうへ向かった。


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