破壊班員@
10月の冷たい
雨が今も振り
続いていた。
田原は松村の
秘書から奴を
抹殺する仕事を
引き受け、
それの下準備に
入っているのだ。
深夜だ。田原は
麻布桜田神社の
そばに愛車である
フィアット社の
クーペフィアットを
停めた。20Vの
タイプで色は
黄色だ。
かなり目立つ。
だが、東京では
フェラーリもポルシェも
ランボルギーニも
ありふれた日常だ。
クーペフィアットが
停まっていたところで
地方の田舎じゃ
あるまいし、車の
中まで覗いたり、
嫉妬して警察に
通報する馬鹿も
いないだろう。
いたところで、
罰金15000円を
払えば、済むことだ。
それに、松村は
警察関係者にも
かなりのコネクションが
あるので、揉み消し
など造作ないだろう。
逆に通報してきた
愚か者を突き止めて
なぶり殺しにしてやる
のだ。
ラヴァーソールの
靴の上から黒の
ビニールのオーヴァー
シューズを履いている。
黒のズボンに
灰色のTシャツを着、
パーカーを上に
羽織っている。
まだ10月だが、
少し肌寒く感じる。
田原は歩きだした。
コンビニの手前で
右に曲がる。
12階建ての
マンションが建って
いた。
オークヒルズ麻布だ。
中級より少し上と
いった感じの
趣だ。
裏側に回る。非常
階段が設置されて
いた。
鉄柵をよじ登り、
階段を上がる。
足音はあまり
たてないように
気をつける。
屋上についた。
庭園風に
なっていて、
賑やかだ。
ヒヤシンスの華が
綺麗に咲いていた。
手で握りつぶす。
田原は手についた
花の匂いを
かいで、
ニヤっと笑う。
屋上と建物内部に
連結している扉に
近づく。
鍵がかかっていた。
ズボンから2本の
針金を出す。
先端部は焼き入れ
されている。ドアの
ロックをといた。
田原は心臓の上の
内ポケットから、
銀張りのシガレット
ケースを取り出し、
金色の吸い口が
ついたウエスト
ミンスターの
ターキッシュAAを抜き
取って、銀の
ダンヒルで火をつけた。
そのライターは特殊だ。
超高性能爆弾が
仕込まれている。
蓋を強くねじると、
安全ピンが抜ける。
そうやると、
20秒後には手榴弾の
ように爆裂する。
シガレットケースも
また特殊なものだ。
特殊合金の防弾
板で覆われている。
心臓の上に
普段は収め致命傷に
なりえる一撃を
防ぐのだ。そして、
ケースの中には
電気雷管で
着火し、ロケット式に
自走する4・5ミリ
口径の弾丸が5発
仕込まれている。
非常に小さな
弾なのだが、
弾体自体にも
爆薬と起爆装置が
組み込まれている
ため、至近距離で
放てば、大口径の
マグナム弾に決して
劣らない性能だ。
頭に食らえば、
圧力で眼球が
ドロッと飛び出し、
射出孔から
血と脳漿が
ドヴァッと
飛び出ることだろう。
田原はそれを思い、
クククッと笑う。
それらの武器は
どうしようもなく
追い詰められたときに
使う。無防備だと
油断しきった相手の
度肝を抜いてやる。
一服が終わると、
オーヴァーシューズを
脱ぎ、
中に入る。
廊下を歩く。
階段には大理石が
張ってある。
ここだけを見れば、
高級マンションだ。
ラヴァーソールは
音を立てない。
運良く、廊下に
人影はない。
順調に目的地へ
進む。8階まで
降りた。822号
室の前でとまる。
針金でドアを開く。
中に入る。
女の香水の
残り香とコーヒーと
タバコの臭いが
ミックスされたような
臭いがした。
玄関で靴は
脱がずに土足で
入る。心は
痛まない。
万年質に模した
懐中電灯を
つけた。
各部屋を点検した。
誰もいなかった。
当然だ。
田原に今日の仕事を
言い渡した松村の部下
からこの部屋の住人は
留守で、今忍び込むようにと連絡が
あったのだ。
寝室に入る。
壁にぴったりと
横をつけたダブルベッド
があった。しーつは
綺麗に変えられて
いる。だが、
ごみ箱からは
男の精液と女の
愛液の臭いが
した。くさい。
だが、我慢する。
田原はクローゼットに
入った。そこで
ここの住人が
帰ってくるまで
待ちつづける。
タバコは臭うから、
吸えない。
3時間が過ぎた。
玄関のドアに
誰かが鍵を
差し入れる音が
した。左腕に
つけたオメガの
スピードマスターを
見ると、2時30分を
指している。
田原はニヤリと
笑う。
リビングルームに
女と男の
足音がする。
さっきまで食べていた
キムチの批評を
していた。
男女が寝室に
入ってきた。
ベッドに抱き合ったまま
転がる。
戦闘を開始したようだ。
「し、締まるうぅぅ。
オゥゥゥゥ。」
と男が唸って、
スペルマを発射
したのが、3時13分。
3分後には
お互いの寝息が
聞こえてきた。
田原はニヤッと
笑い、表に
でる。
女は21歳ぐらいの
痩せてはいるが
巨乳だった。
とりあえず、乳首を
つまんで、遊んで
おく。田原の手が
胸全体に
延びたとき、
顔色が変わった。
「くそが・・・。
こいつも、豊胸
手術者かよ。
なめてんじゃ
ねええってんだよ!」
男のほうは40
ぐらいの肌が
茶色を通り越し
黒人のように焼けた
脂ぎった男だ。
田原はズボンから
ブラックジャックを
取り出す。
ブラックジャックは
殴打用の武器で、
外傷は残さないが
内部出血を
させる便利な武器だ。
男の頭を
手加減して殴る。
轢き殺したカエルの
ようにベッドに
平べったくなり
失神した。
そのとき、女が
眠りから覚め
悲鳴を上げようとした。
田原は女の
頬っぺたを
ブラックジャックで
軽く殴る。
口が裂け、血が
飛び散った。
すかさず、つま先で
腹を蹴って、
壁にぶつける。
田原はクローゼット
から、気絶してる男の
背広のネクタイを
とってくる。
女の首に巻きつけた。
田原は、それで首を
締め付けながら
ニヤニヤ笑った。
女は首に食い込む
ネクタイをはずそうと
もがくが、徒労だ。
やがて、女は眼球が
飛び出し、膨れ上がっ
てきた紫色の
舌を突き出し、
人間の動きを
やめた。
申し分ない
死に様だ。
見事だ。
しかし、女が
漏らした脱糞には
閉口した。臭すぎる。
死んだ女の
右腕をつかみ、
男のほうに引っ張る。
そして、女の爪で
男の顔を引っかく。
田原は棍棒を
しまい、変わりに、
注射器を
取り出した。
アルコールを
男の内股の静脈に
注射する。
居間に生き
適当に酒棚から
スコッチをもって
くる。それを
男の体と
女の体に
振りまく。
残りを、男の
口に流し込む。
咳き込みながら、
男は気絶から
さめた。
田原はもう一発
ブラックジャックで
頭を殴り、男を
壁に思いっきり
投げつけてやった。
跳ね返ってきた
ところを腹に力を
加減した蹴りをいれ
また壁にぶつける。
3回ぐらい
それを繰り返して、
部屋を出た。
翌日のニュースで、
オークヒルズ麻布に
住む、医師の
加藤鷹夫容疑者が
アルコールに酔った
末、妻を絞殺したと
いう情報が
流れた。
原因は痴話喧嘩では
ないかと伝え
られる。