続くんだねD


田原は車の陰から
出た。ハイエースは
すでに田原の視界から
消えていた。

すぐにフィアットに
戻る。リモコン式の
ボタンを押す。
ハザードランプが
点滅し、開錠された
ことを示した。
普通のセダンとは
違い、スポーツカーでは
ありふれた窓枠部分に
ドアをあける場所が
ついている。

田原はキーを差込み、
エンジンをかけた。
官能的なエンジン音が
地下に反響した。

ギアを一速に入れ、
クラッチをつなぐ。
弾かれた様に
車は飛び出た。

ハイエースを追う。

「クソッタレガ・・。
あんな荷車なんか
すぐに追い詰めて
やるぜ!!!」

田原は歯軋りする。

フィアットが螺旋の
ように目が回る
地下から地上へ
上るための通路を
進んでいると、
突然、車の
ハンドルが重く
なった・・。

田原は必死に
ハンドルを握り、
車の体勢を
立て直す。

急激にブレーキを
踏むような真似は
せずに、田原は
車を地下1階の
駐車場部分へ
滑らせた。

平坦な場所で
車を止め、
サイドを引く。

車から降り、
タイヤを見ると、
車重1300キロの
重みを受け、
右前輪の
タイヤがへこんでいた。

田原の口の周りが
白っぽくなる。
眉間に皺が
よった・・。

その頃になって、
自分の心臓の
上にまだ針の
ような黒い物が
突き刺さっていた
ことに気づく。

田原の護身用の
武器のひとつで
あるシガレットケースに
遮られて、服の
表面に一部が
出ていた。

長さ1センチ、
太さ4ミリほどの
針だ。

先端3ミリ部分
までに、茶色っぽい
汁が塗られていた。

田原はその針を
ティッシュで包み、
保管しておく。

車に再び
乗り込む。

田原は自分の
駐車スペースへ
車を走らせる。

先ほど、タイヤが
パンクしたところに
近づくと、
釘が無数に
落ちていることが
わかった。

釘を足で壁の隅へ
蹴散らした。

田原は車を降りた。
今度はワルサーを
いつでも、抜き撃ち
できるように、
エレベーターまで
走った。

しかし、誰も
襲ってこなかった。

田原は一度地上
1回部分まであがる。

防犯上、この
マンションは地下の
ガレージからは
直接マンションの
住居部分へあがれない
仕組みになっている。

田原は一階部分で
エレベーターを
降り、もう一度
自分のフラット
まで上がれる
ものに乗り換えた。

慎重に自分の
部屋の前まで
進んだ。

自分の部屋の
前にくると、
ドアの上端を
見上げた。

ドアの上から鴨居に
渡して両端を
アラビアゴムで
固定していた
髪の毛が
揺れている。

誰かが無断で
部屋の中に
入った証拠だ。

田原はさっとドアから
飛びのいた。

鍵を持った
左手だけを
伸ばして、
ドアのロックを
解く。

ゆっくりと
ドアを開ける。

「撃たないでくれ。
私だ。杉村だ。」

部屋の中から
聞きなれた声が
した。

田原は舌打ちする。

「勝手に入るなよ。」

「いや、すまな
かった。悪いとは
思ったんだがね。」

「何か、用か?
こっちは今、
むしゃくしゃ
してるんだ。」

「何かあったのか?
仕事のほうは
順調に進んでる
ようだが?」

「さっき、ここの
ガレージで
襲われましたよ。」

田原はそう言い
ながら、ティッシュに
包んだ針を
杉村に見せる。

「毒針か?」

「そうでしょうね・・。
当たり所が
悪かったら、
殺されて
ましたよ。」

杉村はティッシュで
それを包み直した。

「この部屋もいつ
襲われるか
わかりませんよ。」

「そうみたいだな
・・。」

杉村は携帯電話で
暗号のような
言葉を使い、
誰かと連絡を
とった。


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