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『イングロリアス・バスターズ』クウェンティン=タランティーノ監督 ブラッド=ピット、メラニー=ロラン、クリストフ=ヴァルツ
お題 どのジャンルにも属さないごった煮だがエンタテインメント
 タランティーノ監督久々の大作。『キル・ビル2』以来。
 5つのストーリーからなる物語で、例によっていろんなシチュエーションや展開が、ラストのパートで収斂されるというお得意のものだ。
 制作中の情報やカンヌからのレポートで「栄光なき野郎ども」(=イングロリアス・バスターズ)が、ナチス狩りをし頭の皮を剥ぎ取る、というのでゲテモノを予想していた。
 だが、それも杞憂だった。タランティーノ監督はいい意味で王道を行く演出により、観客の予想を裏切ったのだ。
 映画の手法として、オーソドックスにしつつ、ストーリーはマカロニウェスタンあり、戦争ミッション(大作戦)ものあり、サスペンスドラマあり、クライム・アクションありというてんこ盛り。
 そして、ラストパートの切れ目ない盛り上がりは、もの凄い。

 さらに、ブラット=ピット以外に有名なハリウッド(アメリカ)俳優を使わなかったことも、逆に成功した大きな理由だ。
 カンヌでも主演男優賞を獲ったように、ドイツ将校のクリストファ・ヴァルツが絶品だ。
 きわめて冷静で推理力抜群な一方で、激昂する一面も見せるあたりを見事に演じわけている。「007」の敵役にも見られないような、実に嫌みなキャラクターだ。
 ヒロインはフランスのメラニー=ロラン。カトリーヌ=ドヌーヴにも似た顔立ちで、複雑な表情も視線の動きも巧い。
 かってナスターシャ=キンスキーが主演した『キャット・ピープル』の主題歌、デビッド=ボウイが歌うビートのきいたあの曲をバックに戦闘メイクを施すシーンは、この映画では最高に格好いいシーンだ。
 ボウイの曲が、見事にコンバットマーチになっているのだ。
 映画内映画「国民の誇り」をバスターズメンバーとしても出演しているイーライ=ロス監督に演出させ、何よりも映画館を舞台にしたクライマックスを用意するなど「映画への愛」にも満ちている。
 まじめな反戦メッセージ映画でもなく、実録もの、戦争アクションにも「クソくらえ」という内容なのに妙に印象に残る。
 こんなものを撮れるのは、タランティーノ監督しかいない。

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