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『この自由な世界で』ケン=ローチ監督
お題 イギリスの至宝監督が問う自由主義世界
主人公である三十代シングルマザーはセクハラ上司に逆らったこともあり、職業紹介所を解雇される。
住宅ローンもカードローンも抱えた彼女は、とたんに「経済的弱者」の立場になる。
そこで、ルームシェアをしている友人とヤミで不法入国者相手の職業斡旋を始めるのだ。
不法入国者は立場上、最低賃金より安く使われ、労災の対象にもしなくていいし、何より文句を言わずに勤勉に働く。
使う側の資本家(経営者)から見れば、このように都合よく見える。
だが、当事者からすれば「家畜」ではないし、働いたら報酬をよこせというのはあたりまえだろう。
しかし、資金繰りも危うい主人公は賃金不払いという状況に陥り、突然、襲われたりもする。
その父親役は、本物の労働者から起用したというが、常にあたりまえの価値観でセリフを吐き、それが我々にも重くのしかかる。
「こんなのは、おかしいんじゃないか」と。
主人公は賃金だけでなく、昼夜交替の者を同じアパートに住まわせて、両方から家賃を取るなど、しだいにずるくなっていく。
その片方で、イラン中東からの家族を一時的に自宅にひきとるなど、やさしい面も持っている。
だが、新たな労働者とその住宅を多数確保するために、不法入国者の居住を移民局に密告してしまい、モラルの一線を越えてしまう。
これは我々の姿ではないか。何もいろいろな国の不法入国者の問題だけを扱っているわけではない。
アメリカのマクドナルドが、メキシコからの不法入国者に危険で不衛生な労働をさせてコストダウンしているとか、そういうレベルの問題ではないのだ。
派遣労働から解雇され、住所不定になってしまう人々は日本にもどれだけいることか。
ひいては主人公と不法入国者との関係を、国と国に置き換えたらどうだろうか。
ユニクロの衣料をはじめ、安い製品の裏にどれだけ外国の低賃金労働者がからんでいるか。
これはケン=ローチ監督の告発である。
「自由な世界」と題名にあるとおり、自由主義の社会、つまり資本主義世界への告発である。
「イギリスの宝」とホームページにあったが、「至宝」である。
もちろん、このテーマをドキュメンタリー風にだけ描くのでなく、サスペンスとしても観客をひきつけるあたりが至宝なのだ。
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