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『スラムドッグ$ミリオネア』ダニー・ボイル監督 
お題 フィクションの整合性を楽しむためのフィクション
 冒頭で主人公がミリオネアのラスト問題までたどりついたことを示し、問題ごとにエピソードを挿入していく。
 この映画がうまいのは、その時系列の再構成にある。
 スラムで育ち、教養もないはずの主人公がどうしてクイズの答を知り得たか。
 それを紹介しつつ(ボンベイ)ムンバイの過酷な状況をも観客に見せつける。
 エピソードは問題の数だけあるので、飽きさせないし、どれもが面白い。
 そして「ボンベイ」の暴動、イスラム教徒とヒンズー教徒の衝突やムンバイになってからの急激な経済発展など、この都市の歴史をも俯瞰してみせる。
 ダニー・ボイル監督は出演者も実際のスラムから募り、スタッフもインド版ハリウッドつまり「ボリウッド」から雇った。
 だから、インドの雰囲気やスラムの子供達のバイタリティなど「作り物」でありながらリアルなものができたのだろう。
 運命に引き裂かれていく兄弟という大筋と、暴動の夜から行動を共にするしかなかったヒロインの存在など、ストーリーの骨子も巧い。
 買われてギャングのボスに囲われているヒロインに会いたいがために、ひたすらクイズに正解し続け、テレビからメッセージを発信する主人公、その姿は感動を誘う。
 エンディング・ロールの集団ダンスに批判のあるが、ボリウッドの映画を見たことのある者なら、あたりまえだと、むしろ嬉しくなるはずだ。
 また、話が都合良くできすぎという者もいるが、それこそ監督やこの映画の狙いどおり。術中にはまってしまっているのだ。
 ありえない、と思いながらも大団円に感動してしまう。
 主人公も舞台もインドなのにアカデミー作品賞という、この事実こそが奇跡の映画、これがスラムドッグ$ミリオネアだ。

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