* アフター・アワーズ *
その日、私が目覚めてみるともう午後も半ばを過ぎていた。
私はまだ風邪が治りきっていないと見なされており、執事を初めとする使用人たちは私の目が自然に開くまでは決して私を起こさないように、細心の注意を払い続けていた。なにしろ、芝生を刈る音すら午前中は聞かれないのだ。
ベルを鳴らして呼ぶと、間もなくしてその執事が紅茶と郵便物の束を持ってやってきた。朝食の用意が調うまでの間に差出人の名前を調べてゆくと、その中に又従兄弟のジョンの名前を見つけた。開いてみると、異国ふうの薄いブルーの用箋に、気取りのない字が躍っていた。学生時代から見慣れた、そして今は私の共同事業主でもあるジョンの字に間違いなかった。
彼は事業の関係でしばらく海外にいたのだが、最近ようやく帰国したのだと書いている。急な話だが、今日の夕方こちらに挨拶に来たいとも。
「変わらないな」
クスと笑って私は、朝食のトレイを持ってきた執事に、来客があることを告げた。
「ジョンが来ると言っている。夕食と、客用の寝室の用意をしておいてくれ」
「かしこまりました。ジョン様は久方ぶりのお越しでございますな」
「そうだな」
まだほんの子どもの頃から、私は陽気なジョンが好きだった。大柄で恰幅のいい彼は私よりもかなり年上で、休暇ごとにこの家に遊びに来ては、両親の目を盗んで私に小遣いをくれたり、遊びに連れて行ったりしてくれたものだ。親戚には私を初めとして、どちらかと言えば人付き合いの悪い連中が多いが、ジョンはまったく別と言えた。
「久しぶりだな・・・」
そう言いながら、私は卵をスプーンに掬った。
「・・・ようこそお越しくださいました、ジョン様」
「バーナード! まだ引退してなかったのか?」
「おかげを持ちまして、どうやら息災でおります」
迎えに出た執事の手に帽子を押しつけながら、ジョンは磊落に笑った。彼はめったに人の名前を忘れないのだ。
あかあかと明かりの灯された食堂に入ってきて、松葉杖にすがって立っている私の姿を目にすると、彼はびっくりして声を上げた。
「知らなかったよ、ディヴィッド! 階段から落ちでもしたのか?」
「いや、事故だ。バイクに跳ねられてね。それより、美味いローストビーフはどうだ? 好物だっただろう?」
「田舎風のな! 先に知らせておけば、君がきっと用意しておいてくれると思ったよ」
ジョンは、いささか不作法なまでに嬉しそうに笑った。
このところずっとひとりで食事をしていたので、気のおけない親戚と楽しむ晩餐は私の心を軽くした。ジョンは、外地の風変わりな習慣や風物を、巧みな話術で語った。私ばかりでなく、給仕をつとめる執事や料理を運んでくる女中たちですら、うっすらと笑みを見せるほどだった。何よりも、ジョンのにこやかな丸顔につられて、愉快な気分になってしまうのだ。
だがやがて食事を終え、普段なら応接室へ通すところを、私が病み上がりだからというので二階の居間へ案内することになった。
いつものとおり、ショーンが私の介添えをして階段を上がらせた。ジョンは感心したようにその姿を下から眺めていた。相変わらずその目の色は明るかったのだが。
* * *
夏にしては気温の低い夜だった。私は暖炉に小さな火を焚かせて、気に入りのカウチに腰を落ち着けた。ジョンは客用の椅子に掛け、私と同じく窓辺に陣取って静まりかえった夜の庭をじっと見透かした。
「相変わらずだね、この家は」
「古いからな」
「幽霊が出そうだ」
そんな話をしているうち、ドアに礼儀正しいノックがあって、ショーンが酒とグラスを運んできた。極上のブランディだ。
テーブルにトレイを置いて、そのまま出ていこうとしたショーンを、ジョンがふと呼び止めた。
「初めて見る顔だね? バーナードの手伝いかい?」
「え、・・・はい」
主人の客である紳士に親しげに話しかけられて、ショーンはどぎまぎしながら答えた。
「旦那様のお世話をするのに・・・その、ケガをなさったので」
「ディヴィッドは優しい主人だろう?」
「はい、よくしていただいています」
ショーンの返事はごく誠実に聞こえた。彼は端正な顔を引き締め、かすかに頷きながら答えたものだ。
ジョンは、その顔を見てますます笑みを深くした。
そして言うには。
「そうだろうね。ベッドの中ではもっと優しいだろう?」
私は、どうにか無表情を保つことができたと思った。
なぜジョンがそう考えたのかはわからなかったが、ただ新顔の召使いをからかってみようと思っただけなのかも知れなかった。
グラスの酒をすすりながら横目で様子を窺うと、しかしショーンは明らかに動揺して、私の顔をじっと見ていた。私が、彼に話したのだと思ったのだ。そんな顔をしたのでは、ジョンには何もかもわかってしまう。
すぐに私は腹をくくった。同性愛はこの国では犯罪だが、まさかジョンが私を告発するとも思えない。
私はショーンの目を見つめ返しながら、黙ったままでまたグラスに唇を当てた。日焼けしたショーンの頬に、ゆっくりと血の色がのぼってくる。秀麗な眉をひそめて彼は、もう一度ジョンに向き直った。
ジョンはニコニコと笑いながら、椅子の腕木に肘をついて、ショーンの反応を眺めていた。
「なんだ、うぶな坊やじゃないか。・・・ディヴィッド、どうかな。今夜は私に彼を貸さないか?」
「ジョン」
少しばかり憂鬱そうな声が出た。だがジョンは意に介したふうもなく、私の言葉など無視して続けた。
「その足じゃ、満足に可愛がってもやれないだろう? 大丈夫、君のものを奪おうなんて思っていないよ。ただ、寝酒のつもりで少しばかりお楽しみが欲しいだけだ」
あまりにあからさまな言いように、ショーンは本気にしていいものかどうかすらわからないでいるようだった。私の顔とジョンの顔を交互に見比べ、私がくつくつ笑い出すと困ったように眉を寄せた。
学生の頃にも、こんなことがあった。
そのときはジョンが連れてきた娼婦を、一晩ふたりで共有したのだ。
もちろんあの女とショーンではわけが違うが、ジョンにしてみれば同じようなものだ。
私にとってもまた、同じであるべきだった。
「いいとも、ジョン」
私は笑いながらショーンに目配せをし、松葉杖を握った。
「寝室へ行こう。・・・ショーン、私たちのグラスを持ってこい」
私が杖につかまって歩き出すと、ショーンは慌ててグラスと酒瓶をトレイに集め、私のためにドアを開けた。
寝室はまだ暗く、冷え冷えとしていた。サイドテーブルの上にトレイを置くよう、首だけ振ってショーンに指示して、私はベッドの端に腰を下ろした。この部屋には、椅子がなかったのだ。
ジョンは、私たちの後から入ってきて、当たり前のようにドアに鍵をかけてしまった。カチリ、という音を聞いたショーンが、また驚いて後ろを振り返る。ジョンは大股に歩み寄ってきてショーンの肘をつかまえ、それでいて強引ではない仕草で、彼を引き寄せてベッドに座らせた。
「いいかい、ディヴィッドがあそこで見ている。せいぜい羨ましがらせてやろうじゃないか?」
楽しげにそう言いながらショーンの肩を抱こうとすると、彼は激しく首を振りながら
「いやです」
と答えた。その頬ははっきりと青ざめ、引きつっていた。ジョンは声を上げて笑い、腰を浮かせかけたショーンの肩を上から押さえつけて、聞き分けのない子どもに言い聞かせるように声を低めた。
「ほらほら、坊や。気を楽にするんだ、ご主人様のご命令だろう・・・?」
困り果てたショーンの肩や、二の腕をなだめるように撫でてやりながら、いつの間に、と思うほどなめらかな手つきでショーンのシャツのボタンをはずし始める。ショーンはその手を振り払って逃げることもできず、ジョンにしっかりと肩を抱かれたままで頭だけを巡らして私を見た。
私は軽く頷いて、ショーンに冷酷な宣告を下した。
まさか、私がほんとうに許すとは思わなかったのだろう。ショーンは愕然として緑の目を見ひらき、もう言葉もなく私の顔に視線を当て続けていた。
ジョンはくつくつと笑いながら、ショーンの耳もとに唇を寄せた。ショーンは嫌がり、首をすくめて逃げようとしたが、ジョンは長い腕で彼の頭ごとしっかりと捕まえてしまったので、とても逃げられなかった。
「大丈夫だよ、ほら、そんなに怖がらなくていい。私はとても優しいんだからね」
持ち前の柔らかな声で囁きながら、ジョンはショーンの首筋に顔を埋める。そうする間も彼の手は休むことなく、いともやすやすとショーンの衣服を剥いでゆく。遊び慣れたジョンにとって、飾り紐もペチコートもないただのシャツを脱がせることくらい、造作もないに違いない。抵抗する術を持たないショーンは首が折れたように俯いたまま、それに耐えた。
肩から胸、そして腹の上まで大きな手で撫で回されると、ショーンは身を竦ませてまた私の顔を見た。どちらかといえば内気なショーンが、珍しく、すがるような目をしたというのに、私はすげなく無視してしまった。
* * *
大丈夫、大丈夫だよと、ジョンは何度も囁きかける。私のベッドの上で、すっかり裸にしたショーンを背中から抱きすくめながら。ジョンももう服を脱いでいた。ずっと白夜の国にいたジョンは肌が白く、濃い色の体毛が生々しかった。薄い鳶色に日焼けした、金髪のショーンとは対照的だ。
「・・・だね? 君が・・・ディヴィッドも・・・」
ごく低く、ショーンの耳に直接息を吹き込むようにしてジョンは囁き続けていた。あまりに柔らかな声音なので、私には切れ切れにしか聞こえなかった。もっとも、内容についてはおおかたの想像がつく。ショーンはもう首や胸元まで真っ赤にして、しきりに首を振っていた。
ごしごしと、彼の肌を温めてやろうというように、ジョンの手はショーンの肩や二の腕を擦っている。がっしりした両腕に拘束されて動けないショーンは、時折もぞもぞと腰を動かした。ジョンのものが尻に当たっているのだろう。ジョンはベッドの上に胡座をかいて、ショーンを後ろから抱いている。
膝を立てるよう促され、静かに左右に割り開かれると、ショーンは嫌がって身を捩った。膝に胸がつくほど身体を折り曲げ、ジョンの手を追い払おうとする。
ジョンは優しく、それでいてきっぱりと言った。
「足は、開く。いいね?」
ショーンの身体を起こさせ、金色の淡い茂みの中でまだ竦んでいるショーンのものに手を伸ばす。片腕はショーンの胸をまさぐっている。ショーンの両手がその腕をきつくつかんだ。
こうして見ていても、ジョンのやりかたはまるで壊れ物を扱うようだった。東洋の華奢な陶磁器の肌を確かめるようにショーンの肌を撫で、何度も何度も、朱に染まった首筋や耳朶にしっとりとしたキスを繰り返した。
だがその手で愛撫されても、ショーンの前ははかばかしい反応を示さなかった。こちらへ向けて開かれた、すんなりと伸びた足の間で、ショーンのものがまだ萎えたままでいるのがはっきりと見えた。ジョンは焦らず、ちゅっと音を立てて彼のこめかみにキスをした。
「物足りないのかな。・・・してごらん」
ジョンは彼の頭を前に倒させて、そのままベッドに這わせた。両腕で腰をつかんで持ち上げ、膝を立てさせる。
ジョンに向かって突き出される格好になった尻と腿は、そこだけが抜けたように真っ白だった。その尻の向こうに、もうなかば頭をもたげたジョンのものが揺れていた。腰にずきりとくるほどの、扇情的な眺めだった。
ショーンはシーツに片頬をつけて、両腕を脇へ投げ出していた。ジョンの指が後ろに触れると、びくりと背を震わせた。だが、もう逃げようとはしなかった。
「・・・きついな」
ふとジョンが顔を上げて、私を呼んだ。
「ディヴィッド、何か使っていないのかい? 君の可愛い坊やを、傷つけたくはないんだがね?」
「ああ・・・そこのキャビネットに、油がある」
以前、ショーンが持ってきたマグに布を被せて、人目につかないところに入れてあった。ジョンは私が指を伸ばした先へ立っていって、キャビネットの下段からマグを取り出し、中を覗いて驚いたらしかった。
「ほんとうにただの油か。今度、もう少しましなものを送るよ」
「頼む」
私は上の空で頷いたが、聞いていたショーンはそれどころではなかった。上げさせられたままの腰をぺたりと踵の上に落とし、片手で頭を抱え込んでジョンが戻ってくるのを待っている。
ジョンはベッドを軋ませながらまたショーンの後ろに陣取り、膝を立てるよう優しくショーンを促して、油に濡れた指でゆっくりと彼を攻略にかかった。
「力を抜いて・・・すぐに気持ちよくなるんだからね」
ジョンはまだ笑みを含んだ声で言い聞かせながら、彼の後ろに指を埋めてゆく。ジョンの手はしっかりとして、大きく、節も太い。ショーンの顔は見えなかったが、入れられた瞬間、彼がヒクッと呼吸を詰まらせたのはわかった。
見ているほうが苛立つほどの慎重さで、ジョンはそこを馴らしていった。私にしても、まだショーンとはそれほどの回数を重ねたわけではない。だがあのきつく絞られるような圧迫感を思い出さずにはいられず、私は緊張を振り払うようにぬるくなった酒を取り上げた。
やがて、ジョンは指を全部引き抜いて、ショーンの背に覆い被さった。前へ回した手で彼をゆるく慰みながら、私には聞き取れない声でなにごとか囁きかけている。シーツに顔を伏せたままで、ショーンはふるふると首を振った。伸びかけた髪が、ぱさぱさと乾いた音を立てた。
感じていないことをやんわりと責められているのだ、と直感した。
「・・・ジョン、君のせいじゃない。彼はいつもそうなんだ」
「なんだって?」
顔を上げたジョンは、咎めるような目で私を見た。まるで「君はとんでもなく不名誉な男だ」と言わぬばかりに。美しい愛玩犬を手元に置いていながら、ろくな躾もできない飼い主のように思われたのに違いない。
私はうすく笑って、グラスを一息に呷った。汗をかいていたグラスから水滴がしたたり落ちて、私の膝を濡らした。
「とても臆病なんだ。男にやられると思うと怖くて、感じないらしい。・・・そうだろう、ショーン?」
聞こえているだろうに、黙ったままショーンはシーツに顔を伏せている。彼になんと答えさせたいのか、私にもわからなかった。ジョンはそれなら、とばかり彼の腰を両手でつかまえて引き上げ、もう腹につくほどそそり立ったものを彼の後ろに押し当てた。
「あ・・・ああっ」
ショーンの長い指がシーツを掴み、伏せた顔のそばに放射状のギャザーを寄せた。私に教えられたとおり、できるだけ深く、ゆっくりと息をしようとしている様子が窺えた。ジョンはそのタイミングを読むようにしばらくじっとしていたかと思うと、やがてゆるやかに抜き差しをはじめた。突き入れるたびごとに、見えている部分が少なくなる。ジョンのものは彼の体躯にふさわしく、長大だった。
それをすっかりショーンの中に飲みこませるには、ゆうに数分はかかった。さすがにジョンはもう笑う余裕をなくして、汗ばんだ眉間にも縦皺を刻んでいた。彼に揺さぶられるたびにショーンは低く呻いたが、その声は嗚咽にとても似ていた。
三人の男の体重を引き受けているベッドが、みしみしと軋む。
ジョンは荒い息をつきながらいったん動きを止めて、ショーンの髪をつかんで顔を上げさせた。私へのサービスというところだろう。
ショーンの頬はずっとシーツに押しつけられていたため、赤らんでうっすらと腫れていた。緑の双眸は涙に濡れ、その目でじっと見上げられると、たまらなかった。
私は不自由な足を持ち上げ、彼のほうへいざって行って、その顔を間近に覗きこんだ。
はあっ、はあっと胸をあえがせ、ショーンは涙に曇った目で私を見上げた。ぱちりと瞬きをすると、その目の縁からまた涙がこぼれ出す。
私は涙と汗でぐしゃぐしゃになった彼の頬に手をやり、優しく撫でてやった。ショーンが軽く目を閉じて、私の膝に顎を載せようとしてくる。ジョンが気づいて、少し拘束を緩めた。
私はガウンの前を開けて、ショーンの頬を引き寄せた。ショーンは体重を前に掛けて私の股間に顔を埋め、震える指で私のものを取り出して、そのまますっぽりと口に入れた。
くちゅくちゅ、と唾液の中で先端が泳ぐ。苦しいだろうにショーンは、私を楽しませるために懸命に舌を使った。あたたかく、濡れた彼の口の中はとても気持ちが良かった。私を甘やかすように柔らかに、ただの快楽が私に触れてくる。声を出しそうになって、唇を噛んだ。
彼の口の中にごつごつと先が当たると思ったら、ジョンがまた腰を動かしはじめていた。もう私の顔など見ていない。ショーンの背中に額を当てるようにして抱きしめ、ただただ欲望を叩きつけているばかりだ。空気と水の混じったような粘る水音が、そこから聞こえていた。ひどく淫らな音で、それを聞くだけでも自分が彼を犯しているような錯覚を覚えた。
やがて、ジョンが唐突に動きを止めた。ぐっと彼の中に深く腰を押しつけ、胴震いをする。ショーンが思わず空気を求めて喘いだので、ジョンが果てたことがわかった。私も、もう限界が近かった。ショーンの金髪に指を差し入れて引き寄せ、これ以上ないほど深く喉の奥まで押し込んだ。ショーンの喉が音もなく鳴って、また新しい涙が彼の頬を伝い落ちた。
「・・・う、く・・・!」
なめらかで熱い粘膜の擦れる感触を味わっていると、
「ああ、勃ってきたじゃないか・・・?」
ジョンの、満足そうな声が聞こえた。
私がショーンの喉に白濁を飛沫かせたのと、ほとんど同時だった。
* * *
元通りに服を身につけ、礼儀正しい紳士に戻ったジョンは、私が執事を呼ぼうかと言うのを一笑に付した。
「案内など必要ないとも。あの東翼の部屋で寝ればいいんだろう?」
「ああ、たぶん」
どの部屋を用意しておけ、とは言っておかなかったが、客用の寝室ではそこがいちばんよく使われる部屋だ。以前ジョンが泊まったときにも、その部屋を使っていた。私は頷いて、無意識にショーンの髪を撫でた。
「ではおやすみ。楽しませてもらったよ」
ジョンはウィンクしながらドアを開けようとして、自分が鍵をかけていたことを思い出したらしい。またにやりと笑って大げさな動作でロックをはずし、こほん、と咳払いをした。
「ディヴィッド。・・・明日の朝、その坊やにちょっとしたメモを渡してもいいかい? 君が彼に飽きたらいつでも連絡が取れるように、アドレスを書いておきたいんだがね」
私は黙って首を振った。病み上がりだというのに思いがけず夜更かしをして、眠くなっていたのだ。
ジョンは仕方がない、というように首をすくめ、もう一度おやすみを言って、そのまま部屋を出ていった。
ショーンは、私の傍らで眠っていた。
シーツにくるまって丸くなっている彼の髪は汗に湿っていたが、しっとりと指先に絡む感触が心地よかった。
「ショーン・・・?」
彼の上に屈み込んで呼んだが、一度にふたりの男の相手をさせられて疲れ切った彼は、短い眠りの中で目を覚ます気配もなかった。
だが、朝までここで寝かせておくわけにはゆかない。執事はショーンがグラスを下げてくるのを台所で待っているだろうし、それでなくとももうショーンは階下に降りていなければならない時間だった。
「ショーン」
ぴくり、と瞼が動く。もうすぐこの目が開くのだ、と思ったら、柄にもなく緊張した。
ショーンは私を責めるだろうか。
でなければまた静かに泣いて、私をいたたまれない気持ちにさせるのだろうか。
だが起こさなければならない。
グラスを持って行かせなければ。
「ショーン・・・ショーン?」
私は彼の名を低く呼び続けた。
* FIN *
■INDEX■
こんなヘッポコサイトに、のべ1万超ものお客様。ありがとうございます。
その一万ヒットを踏んで下さった澪さまより、このようなリクを承りました。
内容は「旦那様、ご友人に豆さんを貸与」!!
「不自由な身体で思うさま豆にアレコレできない欲求不満と、
もしかしたら豆を本気で愛しちゃっているのかもしれない自分に対する
否定とで、暴挙に出ちゃう旦那様。豆に興味を持った友人に
一晩レンタル・目の前での鑑賞権利付」
原文ママです。つい張り切らずにはおれず、こんなことに。
さまざまに紆余曲折はございましたが、着地点はココでした。
澪様、いかがでしょうか。
こんなものですが、ご笑納いただけますか・・・?(ドッキドキ)
20031011