* fragile/23 *
靴を脱がせて、ベッドの上に仰向けに横たえると、ショーンは心地よさそうにふうっと息を吐いた。眠くなっていて、背に感じた上等な寝具の感触が嬉しかったのに違いない。
このまま眠らせてやろうかと、一瞬はディヴィッドも考えた。
ぽうっと色の濃くなった唇にまたキスをし、不自由な足を引きずるようにしてショーンの上に覆い被さる。
シャツ越しに触れた肌はあたたかく、その胸の奥で彼の心臓がとくとくと脈打っているのが感じられた。ショーンはぼんやりと薄目を開けて、ディヴィッドの顔を見上げた。
「ショーン」
ただ呼びたいからというだけの理由で、そうした。キスに濡れた唇がかすかに動いて、それに答えた。
「はい、旦那様?・・・」
機械的な答えだったが、掠れた声にはなんともいえない艶があった。ディヴィッドが顔を寄せてゆくと抗わずに目を閉じて、唇がキスに侵されるにまかせた。あたたかく濡れた舌を丹念に味わい、口蓋の内側を舐めてやる。ショーンは子どもがむずかるように鼻を鳴らして、んん・・・とくぐもった声を立てた。
首筋や耳にもキスがしたくなって、離れ際にきゅっと下唇を噛んでやると、ショーンは重そうに腕を上げてディヴィッドの首の後ろに回した。
もぞ、とショーンの腰が動く。ディヴィッドは彼の膝の間に身体を割り込ませ、ゆったりとしたズボンの上から彼に触れた。
硬い手触りがあった。
ディヴィッドは満足して、シャツの上からするすると彼の胸を撫でさすった。
指先に粒が触れるときつく摘んで、持ち上げるようにしながらまるく揺り動かした。ショーンは、痛がって身を竦めたが、ディヴィッドは斟酌しなかった。優しく触れても感じないところならば、痛覚に訴えるしかない。
シャツの襟を引っ張り、コリコリとしこってきたそれを剥きだしにした。
「ツッ・・・」
二本の指の関節でぎゅっと挟んで揺さぶると、ショーンは小さな声を上げて唇を噛んだ。眠気は少し覚めたようだ。顎を引き、辛そうにすがめた目でディヴィッドを見て、彼の首に回していた手をするりとほどいた。
気には入らなかったが、許してやった。
ディヴィッドの腿に、ショーンの怒張が当たっていたからだ。
重なった身体の間に手を差し入れ、ズボンの上から掌を被せるようにあてがった。ショーンは咄嗟にディヴィッドの腕を掴んだが、その手に力は入らなかった。
輪郭を確かめるように撫でると、身体を強ばらせた。ハッ、と短く息を切って目を瞑る。色を見分けるには明るさが足りなかったが、首から上はもう酒と羞恥で真っ赤になっているに違いなかった。
その首筋に唇を落とし、ぎりぎりで髪に隠れそうなところを選んで強く吸いあげた。ぴくん、と跳ねた肩を肘でベッドに押しつけながら、彼の前を愛撫する手は止めなかった。
ズボンの前を開きにかかると、今度こそショーンは声を上げた。
「や、やめてください、私が・・・」
「先に触られるのは嫌か?」
声を低めて囁くと、慌てて頷いた。ディヴィッドは容赦なくボタンを外してしまったが、そこでいったん手を引いた。
ギブスの足をもてあましながら身体を持ち上げ、腰を浮かせた。ショーンの腕がはずれて、ぽとりと腹の上に落ちる。その手首を捕まえて、さらに下へと向かわせた。
ディヴィッドの意図を察したショーンが、不安げに目を上げた。色のない宵闇の世界で、彼の双眸だけは確かに緑に見えるのが不思議だった。
ディヴィッドは、その眉間にちゅっとキスを落として、優しく言った。
「なら自分でしろ、ショーン。見ていてやる」
「そ・・・旦那様」
「私にはさせたくないんだろう? だったら、やるんだ。いつも自分でしているように、手で・・・」
そそのかすように囁きながら、下着の中へ片手を入れさせる。ショーンはしばらく逡巡するふうを見せたが、やがて諦めて腕を伸ばした。
* * *
サスペンダーを肩からはずさせると、ショーンはひどく嫌がって首を振った。今さら裸を見られるくらいで恥ずかしがられてはたまらない。だが、着衣のまま胸と下腹部の一部だけを晒した姿態はかえって淫らにも見えたので、ディヴィッドは彼の好きなようにさせておいた。
ショーンは両手をズボンの前へ差し入れて、ごそごそと動かしていた。開かれたウールの間に、下着のリネンが覗いている。ショーンの手は、またその下だ。膨らみきったものを彼の両手が掴み、躊躇いがちに扱いている様子が布越しにもはっきりとわかった。
窮屈そうだったが、自分からそう言い出すまでは待ってやろう、と思った。
見られているのを知りたくないとばかり、ショーンはきつく目を瞑って顔を背け、いっしんに手を動かし続けている。その反った首筋や耳朶に触れるだけのキスを繰り返しながら、ディヴィッドは彼の横顔をじっと見下ろしていた。
ショーンはまったく声を立てなかった。呼吸音を聞かれることすら嫌がるように、短く、浅く息を継いだ。それがいつもの癖なのだろう。ディヴィッドには物足りなかった。
燃えるように熱くなった彼の身体は肌にもじわりと汗が浮き、ディヴィッドはそれを唇で知った。最初は肘から先だけを小刻みに動かしていたのが、今では肩さえ振れている。眉尻のすっきりと上がった眉を苦しげに寄せて、ただひたすらに快感を追うショーンはゾッとするほど色っぽい顔をしていた。その集中を途切れさせるのが惜しく、ディヴィッドは黙ったままで、ただ汗ばんだ肌やこめかみにキスを落とし続けた。
やがて、ショーンがディヴィッドを押しのけるようにして身体を折ろうとした。そこへ至ってはじめて、ディヴィッドは彼のものに手を伸ばした。
「アッ!」
下着の上から、ショーンの指ごと握りしめた。思わず悲鳴を上げてしまったショーンは潤んだ目を見ひらき、もう何も言えずにゆるゆると首を振った。限界が近かったのだ。
ディヴィッドは手早く彼のズボンと下着を一緒に引き下ろし、ショーンに抗う暇も与えず片足を抜かせてしまった。もう片方は膝に引っかかったままだったが、ディヴィッドは放っておいた。
ショーンの指は、シロップのような先走りに濡れていた。いったんは下着のリネンに拭われた先端からも、また新たな滴がにじみ出している。ディヴィッドはその手を引き剥がし、自分の前を開けて、やはり涙をこぼしはじめている自分の屹立にそっと触れさせた。何を求められているのか理解したショーンは一瞬もどかしそうな表情を見せたものの、おとなしく指を絡ませてきた。
ショーンの手は熱かった。庭や台所でも働く彼の指先は荒れてかさついていたが、それすらもディヴィッドには快い刺激だった。自分のものもディヴィッドのものも構造的には変わらないというのに、どこをどうしていいかわからない、というようなぎこちない手つきで、先端やくびれのあたりをそろそろと撫でている。その間に、ディヴィッドは露わになった彼の片膝を腕で掬い上げ、奥まったところを探ろうとした。
ショーンはピクリ、と肩を揺らして反応した。ディヴィッドのものを慰める手が止まったので、持ち上げた膝が胸につくほど強く体重をかけて、耳朶に唇を寄せた。
「続けろ、ショーン・・・」
もう油を取りに行かせる余裕などない。指先に互いの滴をすくってショーンの後ろに押し当て、それで足りればいいが、と思いながらなじませた。ショーンはもう覚悟していたらしい。ディヴィッドの指が身体の中に分け入ってきても、わずかばかり身じろぎしただけで逃げようとまではしなかった。
その夜、初めてショーンはディヴィッドのものを受け入れながら果てた。
「ア、アアッ・・・やめてください、もう・・・!」
いやです、やめてください、とうわごとのように繰り返しながら、汗ばんだ手でディヴィッドの胸を押し返そうとする。本心からそう言っているのではないことは、ディヴィッドの腹にぐいぐいと当たってくるものを見れば一目瞭然だった。彼が達する瞬間は、絞り込むようにディヴィッドを締めつける内部の動きでわかった。
ショーンに少し遅れて、ディヴィッドも放った。
ぐったりと横たわったままでいた彼の情人は、身体の奥にはじけた熱を感じて、満足そうな吐息を漏らした。
* * *
それからの数日が、ふたりにとっては蜜月だった。
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ビバG豆。<おとめちっくがウリなので、微妙に伏せる
でも、萌えに筆力が追いつきません。くうう!
えっちって、ほんとに難しくて恥ずかしい。
20031019