* fragile/41 *

ショーンは苦しそうにしていた。
ハッハッと、荒く細い息を継ぎ、ディヴィッドが顔を上げさせようとするとひどく嫌がって首を振った。
今の表情を見られたくないというのだが、あいにくディヴィッドは見たくてたまらなかった。
「ショーン」
咎めるように呼んで頬に手をかけると、高潮した顔が半分だけこちらを向いた。
彼の彫りの深い美貌は痣と傷でまだらに彩られていたが、ジェイドグリーンの瞳の美しさは少しも変わらなかった。その切れ長な目の底に、曖昧な躊躇と怯えがちかちかと瞬いていた。
なかば開かれた唇はしっとりとした吐息に湿り、キスを待っているようにさえ見える。もちろん、そうでないことはディヴィッドにもわかっているつもりだった。
ディヴィッドは喉元に突き上げるような渇望をなだめすかし、薄い瞼の上を撫でて目を閉じさせた。そのままその手を彼の項から肩へ、また背中へと滑らせてゆく。女のようなやわらかさはないが、しなやかな筋肉と薄い脂肪の層に覆われたこの身体の感触が、とても好きだった。うっすらと汗ばんだ肌はとてもきめが細かく、日焼けしているのに荒れてはおらず、手のひらに吸いつくようだ。
なめらかな背中に浮き出た肩甲骨の縁をたどり、脊椎に沿って腰へと降ろしてゆくと、ショーンがまた不安そうに身をよじった。後ろで仕事をしていた指の動きもつい止まったので、ディヴィッドはその肘をつかんで軽く揺さぶった。
「続けろ、ショーン」

ショーンの指は、彼の手足がどこもそうであるようにすんなりと長く、ただの農夫の息子にはもったいないような繊細な印象がある。
ディヴィッドは身体をずり上げて、その手がしていることをじっくりと眺めてみた。
そして、その乱暴なことにあきれて、顔をしかめた。
ショーンはただ、狭い入り口を広げることにだけ専念しているようだった。第二関節のあたりまで埋めこまれた二本の指はぐいぐいと開いたり閉じられたりするが、そのまま奥へ入ってゆこうとはしていない。
ディヴィッドの視線を感じたのか、ショーンがちらりと目を上げた。
「・・・」
なにか言いたげに開かれかけた唇は、しかしすぐにまた閉じられてしまった。
ぱちぱちと、彼は二度瞬きをして、それから焦って指を増やそうとした。
油のついた薬指が、無理に開かれた場所へ押しあてられる。まだ痛いに違いない。思い切って押しこもうとして、ショーンが腹にぐっと力を入れたのがわかった。

ディヴィッドは彼がそうする前に手首をつかみ、ゆっくりと引き抜かせた。
ショーンはぎょっとしてまた目を見開き、このまま犯されるのではないかとばかり、心配そうに主人の顔色を窺った。

「私がそんなやりかたをしたことがあるか?」
ディヴィッドはぶっきらぼうに言い、ショーンがどう受け止めたかは考えずに、彼の身体を引きずり上げて膝をつかせた。向かい合って抱き寄せると、ショーンは戸惑いながらも素直に身体を預けてくる。思うように動かせないギブスの下で、寝台の骨組みがさすがに軋んだ。
ふたりの姿勢が落ち着くのを待って、ディヴィッドはショーンの背後に手をやった。
ショーンは気まずそうに身じろいだが、やはり抗おうとはしなかった。
たっぷりと油をまとわせた指で、ゆっくりと狭間を押し開いてゆく。ディヴィッドは手首をひねりながら指の付け根まで飲みこませて、いったん引き抜いた。さらに足した油でショーンのデリケートな部分をべたべたにしてしまってから、あらためてじっくりと攻略にかかる。
二本の指をそろえて挿しいれ、指の腹で奥を小刻みに擦ってやると、ショーンの腰がもぞもぞと動いた。ディヴィッドの肩をつかんでいる手にやや力がこもり、ショーンの内心の動揺を伝えてくる。ディヴィッドは彼の背中をあやすように撫でてやりながら、中へ入れた指を探るようにうごめかした。
「・・・ほら、こうやって、いいところを探すんだ」
耳朶を噛むように教え、鉤型に曲げた指の関節でぐるりと内壁を刺激する。ショーンが慌てて腰を浮かせようとしたので、ディヴィッドは喉の奥で笑った。
ショーンはいつも、ディヴィッドが彼の感じるところに触れようとすると、まず逃げようとする。
「だ、旦那様・・・!」
今度もショーンは、ディヴィッドの胸に手をついて、身体を離そうと試みた。
「旦那様、もういいです・・・」
「馬鹿を言え」
しかしディヴィッドはもう取り合わず、片腕をショーンの腰にしっかりと絡ませて、さらに指を増やしていった。


* * *


寝台の上は、もうすっかり暗かった。白いシーツの上に横たわっている無様なギブスは、まるで醜悪な化け物のようだ。
ショーンはその足の上にまたがって座り、ディヴィッドの執拗な指を受け入れていた。
「んっ、・・・あ・・・」
「ここか? ・・・」
「・・・」
ふたりはろくに会話も交わさなかった。一歩離れればもう聞こえないほどの、低い囁きだけで十分だった。
だが、室内はそれなりに騒々しくはあった。
ディヴィッドが深く指を突きこむたび、ショーンは大きく口を開けて息をつく。そのはあはあという荒々しい呼吸音、じっとしていられずに爪先がシーツを掻く音。 彼の後ろからは、品のない男がわざと口を開けてものを食べるような、どこか淫らな水音もしていた。
「あ、・・・旦那様、も、ううッ!」
ショーンはもうなにもしゃべれなかった。彼がなにか言おうとするたび、ディヴィッドがわざと強い刺激を与えるからだ。
いまやショーンの上半身からはすっかり力が抜けてしまい、ディヴィッドの首にすがりつくように回されている手も、ともすれば肩からはずれて落ちてばかりいた。そのたびにディヴィッドは彼の腕をつかみ、また自分の首に絡ませてやった。
重なりあった腹の間では、すっかり熱をもった互いのものが擦れあっている。ディヴィッドの手がそれをひとまとめにつかんで、やわらかく揉み続けていた。
「わかったか、ショーン?」
まだ余裕のあるディヴィッドは苦笑しながら言い、じっとりと汗ばんだ彼のこめかみにキスを落とした。
片手に握っているのは、ショーン自身だ。その硬く張りきった先端からはとろとろとした体液がこぼれてきている。いっそ握りつぶして一生使いものにならなくしてやろうかとも思うほど愛しかった。
「ショーン・・・?」
重ねて呼ばれると、彼は潤んだ瞳をうっすらと開けて、切なげにディヴィッドを見上げた。

暗がりの中でふたつの泉のようにきらめく瞳に向かって、ディヴィッドは穏やかに命じた。
「ショーン、もうできるだろう? 自分で入れてみるんだ」
ぎゅっと眉をひそめたショーンの眉間にもキスをして、ゆっくりと背中をシーツにつける。ショーンはしばらく不安げに主人を見下ろしていたが、やがて許しを求めるようにそろそろとディヴィッドの腹に手のひらを置き、自分の腰を持ち上げた。
濡れた肉塊がそっとつかまれる感触、そして狭隘な入り口に先端が押しつけられるときの圧迫感。
その次にきたのは、熱くぬめるような粘膜を押しわけて、ショーンの中へ迎え入れられる快感だった。
たっぷり時間をかけて慣らしただけのことはあり、そこはもうとろとろに溶けていた。普段は固く引き締まっている入り口もほどけるように緩んで、もっとも太い部分が通り抜けるのにもさほどの抵抗はなかった。
「うう、くっ・・・・」
今にも泣き出しそうに唇を歪めながら、それでもショーンは必死に腰を沈めていった。
ディヴィッドが急かすように膝を揺らすと、すでに湿っていた肌に新たな汗が浮いた。
ようやく根元まで飲みこませたときには、ショーンはもうふらふらになっていた。ビクリ、ビクリと小刻みに震え続ける彼の腰を、ディヴィッドは両手で支えてやった。
「なにをしている。動かないか」
性急な要求だったが、ショーンはやはり従った。
彼はきつく目をつむったまま、力の入らない膝を叱咤するように腰を上げては、またディヴィッドの上に落とすことを何度か繰り返す。彼の平らな腹が、ディヴィッドを深く飲みこまされるたびに細かく震えた。
しかし、その動きにはいささか無理があった。
ショーンは自分の身体の仕組みを考えたつもりで、間違えていたのだ。

ディヴィッドは彼の尻をぴしゃりと叩いて動きを止めさせ、軽くなじった。
「まったく、使いものにならないやつだな」
彼の上にぺたりと座り込んでいたショーンは、途方に暮れたように頼りない目で、ディヴィッドを見下ろした。
「それでは、続かないだろう。女とするときにはどうするんだ」
ぼうっとしていたショーンは、その言葉の意味を理解するのにしばらく時間を要したらしかった。
それからゆっくりと重心を前に移して、彼らしい飲みこみの速さで前後に腰を振りはじめた。







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いつも思うんですよ、あたしが脳内に描いた映像をそのまま
文章にしてくれるこびとさんが、夜中に出てきてくれないかと。
あたしのへぼい文章にすると、どんな萌えシチュエーションも
萎え萎えな感じになってしまう気がします。
ごめんね。

20040313