* fragile/5 *
ショーンの肌は、かすかに汗のにおいがする。
ふと鼻先をかすめたそれをもっと確かめたくて、ディヴィッドは彼の首筋に顔を埋めた。
嫌そうに大きく顔を背けたショーンのおとがいに舌を這わせてゆっくりと舐めおろし、鎖骨までたどり着いたところで、歯を立てて吸い上げた。うろたえたショーンが声を振り絞る。
「だ、だめです、痕が残って」
「ボタンを上まで全部留めていればいいんだ。私以外の人間に、あまり肌を見せるな」
そう言いながら、胸元にも噛みつくようなキスを落とす。鮮やかな深紅の花がふたつ咲いて、なかなか扇情的な眺めになった。
「おまえが昔の奴隷なら、私の頭文字の焼き印を捺してやったところだ・・・」
このあたりに、と、はかない所有の印を指先で撫でた。せっかく痕をつけてやっても衣服に隠れてしまうのでは意味がないような気もしたが、少なくともショーンはこれを見るたびに今夜のことを思い出すに違いない。
「・・・だから、このくらいは我慢するんだな」
まるで悪魔を見るような目で、ショーンは自分に覆い被さっている男を見た。急に怖くなったのだろう、視線はディヴィッドの顔に貼りつかせたまま身体をずり上げて、彼の下から抜けだそうとする。もちろん、ディヴィッドは許さなかった。
「だめだ」
厳しく言って、逃げようとする身体を押さえ込んだ。
「じっとしていろ、ショーン。それだけでいい・・・」
光の反射率の狂ったような瞳が、必死にディヴィッドを見上げてくる。うっすらと汗の浮きはじめた額に口づけてやると、ショーンは泣き出しそうに顔を歪め、それでも黙ってもう一度目を閉じた。
ショーンの肌はしっとりとした豊かな質感で、手を這わせても唇をおしあてても、吸いつくような手応えがあった。
ディヴィッドは、まるで女にするように、掌をいっぱいに使って彼の胸を撫で上げ、ぽつんと小さな先端を指の間に挟み込んで嬲った。そこは少し硬くなったが、ショーンの表情を見ると特に感じているというわけでもなさそうだった。寒気に触れたときと同様の生理的な反応に過ぎないのだろう。
指先で摘んで捻ると、今度はかすかに唇を震わせた。
「痛いか?」
こく、と頷かれた。言葉と腕で拘束されたショーンはあれからずっと身動きもせず、きつく目を瞑って、ディヴィッドの愛撫に耐えている。
その顔を間近に見つめながらディヴィッドは、摘みあげたものに吸いついた。触れはじめたときに比べればぷっくりと膨れて鬱血しているようだったが、それでもとても小さく思えた。
反応のなさに焦れ、前歯で軽く噛んでやると、ついに耐えきれずにショーンが声を上げた。
「やめてください、痛いだけです・・・」
「だが、勃ってるぞ」
わざとべろりと舐めてやりながら言うと、ショーンはぎょっとして目を瞠り、羞恥に頬を染めた。そんなはずはないのに、と頭をもたげて、面白がるように自分を見ているディヴィッドと視線がかち合ったのに慌ててしまい、また目を逸らした。
「気を楽にしろ、ショーン」
竦んでいる彼の下半身に手を伸ばしながら、ディヴィッドは耳朶を噛むように囁きを吹き込んだ。そこは完全に萎えてしまっていて、感じていない、というショーンの言葉を裏づけていた。
「こんなことになったのは、おまえのせいじゃない。運が悪かったな」
そう言ったのは、本心だった。
かわいそうに、ショーン。
今もじっと身を固くして、自分の上に訪れるはずの苦痛を待っている。
ディヴィッドは自由にならない片足を引きずって、ショーンの足の間に身体を割り込ませた。膝の後ろに手をかけて持ち上げると、ショーンは片手を上げて目の上を覆ってしまった。
彼の膝が胸につくほど大きく折り曲げて体重を乗せ、奥まった場所を探る。室内はもう薄暗かったが、指の腹で撫でてゆくとその場所はすぐに見つかった。試しに指を埋めてみようとしたものの、なんの潤いもない状態ではそれだけで傷つけてしまいそうだった。
「・・・っ!」
たっぷりと唾液をのせた舌で触れると、ショーンの身体が跳ね上がった。初めてこれほどの反応を引き出せたことに満足を覚えて、ディヴィッドはさらに深く顔を埋めた。
ショーンは混乱のあまりディヴィッドの頭に手をかけ、引き離そうとして抗った。おかげでディヴィッドの髪はくしゃくしゃになってしまったが、ふたりとも気にしている余裕はなかった。
「だ、旦那様、そ・・・汚い・・・!」
「いいんだ」
くぐもった声で答え、尖らせた舌先を軽く差しこもうとしたが、抵抗が強くて入らない。それなら、と指で左右に押しひろげるようにしながら再度侵入を試みた。いくらかましだった。
つるりとした、なめらかな粘膜が舌に触れる。逃げようとする足をがっちりと腕で抱え込んで、強引に襞の中に分け入っていった。ショーンのやわらかい体毛が鼻先に触れて、くしゃみが出そうになった。
「やめてください!」
ショーンはもう悲鳴のような声を出していた。無我夢中でディヴィッドの背を蹴りつけ、頭を引き剥がそうとしたが、ディヴィッドは頑として許さなかった。そうやって唾液でべとべとにした場所へ指をあてがうと、今度は楽に飲み込まれていった。
ショーンの腿が、ぶるるっと震えた。
「あ、ああ・・・!」
かすかな、ため息にも似た声がショーンの唇からこぼれた。
期待を込めてディヴィッドは彼の股間に手をやってみたが、そこにはなんの変化も見られなかった。
ショーンは楽しんでいない。
当然のことではあったが、やはりやましい気持ちにはなった。
なにしろ、ディヴィッドのほうは隠しようもなく欲情しているのだ。
掌の下に感じるショーンの心臓の音が、肌の熱さが。
彼の体臭が。
差し入れた指先を締めつける、もどかしいような圧力が。
そういったものがディヴィッドの頭の芯を痺れさせ、心の余裕を奪ってゆく。
「・・・ショーン、早く終わらせたいか?」
そう訊いてやったら、がくがくと頭を振った。うっすらと開いた目の縁を赤くし、どうしようもないほど頼りない目で見つめ返してくる。
わかった、と呟いて、ディヴィッドは身体を押し上げた。無事だったほうの右膝で体重を支え、ショーンの身体に乗り上げた。
ディヴィッドのそれが腿に触れると、ショーンはぎくりとしてまた彼を押しのけようとした。ディヴィッドは抗う彼の両手をつかまえてシーツに縫い止め、もう腹につくほど興奮している自分のものを、彼の足の間にゆっくりと押しつけた。
塗りつけるような動きを何度も繰り返し、そのたびにショーンの体温を味わう。大きく足を開かされ、無様な格好を強いられているショーンが、食いしばった歯の間から呻きを漏らした。
これはレイプだ、と自嘲するくらいの理性はあった。
「力を抜け、ショーン。ゆっくり深呼吸するんだ」
無駄と知りつつ、ディヴィッドは言った。ショーンの両手首をひとまとめにして胸の上に押さえ込み、空いたほうの手を自分のものに添える。
そのまま、ぐっ、と力を込めて押し込んでゆくと、ショーンは弱々しい悲鳴を上げた。
きつく閉じられた目尻に涙が一粒盛り上がって、こめかみへと滑り落ちていった。
ああ、かわいそうに。
容赦なく腰を進めてゆきながら、ディヴィッドは折り曲げられたショーンの膝頭にちいさなキスを落とした。
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ちゃんとやることはやってるのに、あたしが書くとエロくなりません。
先行で(笑)お披露目した某所では、「ラブラブじゃないですか」という
お言葉をいただきましたが・・・・。
ど、どこがなんだろう?(滝汗)
教えて、ショーン!
20030729