「いつか、きっと・・・。」


 1 海岸沿いの国道

    青く澄み渡る空。
    真っ白な鳩の群れが飛んでいる。

   X   X   X 

  遠くから一台のバイクが走ってくる。
  対向車線からは、大型トラックが走ってくる。
  バイクは、カーブを曲がり損なう。
  バイクとトラックが衝突する。

タイトル「いつか、きっと・・・。」

  救急車の音が遠ざかる。
  道端に残された一台の壊れたバイク。
  そのバイクに一羽のハトがとまる。

 2 回想・高校時代
  
  二年五組の教室。
  机に座りながら、和樹、隼人、潤が、キャッチボールをしている。
  大地と真は、ギターを弾いている。
  教室の隅で、窓の外を眺めている香澄。
  そこに、ボールが飛んでいく。

和樹N「あの頃、何が一番必要で大切かなんて、知らなかった」

 3 海岸沿いの国道

  澄みわたる空。 
  バイクにとまっていた鳩が、大きく羽をはばたかせ飛び立つ。

 4 回想・高校時代

    二年五組の教室。
  和樹の投げたボールが香澄にあたる。
香澄「ちょっとぉ!誰投げたの!」
  和樹、隼人、潤知らないふり。
  香澄、三人にかけよってきて、ひとりひとりにらみつける。
  和樹、目をそらして遠くをみる。
  隼人、目をあわせて笑い出す。
  潤、下をむいておどおどしている。
香澄「犯人、和樹でしょ!」
    隼人、拍手しながら、
隼人「大当たりー!」
  和樹、苦笑いしながら、
和樹「わりぃ、香澄。今度、ジュースおごるから」
香澄「もう・・・今謝るなら、最初から謝んなさいよ」
  潤、少し弱気に、
 潤「そうだよ、和樹」
  大地と真が、四人に気づく。
大地「また、和樹なんかしたんだ」
 真「ばーか」
和樹「うるせー」
  みんな、笑い出す。

 5 「RIP」

  Skyのライブ。
  和樹、大地、潤、隼人がステージにいる。
  隼人のドラムが響く。
  つづいて、大地のギターと、潤のベースもうなりだす。
  和樹、曲が始まってもうたわない。
  演奏が止まる。
和樹「ごめんなさい・・・昨日、大切な人・・・ギターの真を失いました。
だから・・・」
  和樹、涙目になっている。
和樹「メンバーに説得されて、今ここに立っています。でも、もうオレにはうたうことは  できません。ごめんなさい。オレは、オレ自身のSkyとしての活動の幕を今、ここ  で閉じます。今まで、ありがとう」
  和樹、ステージを降りる。
  大地、潤、隼人は慌てる。
大地「えっーと、和樹の言ったとおり、真が昨日この世をさりました。大好きな
   バイクと大好きな場所で。ホント、突然のことで、オレたちもとまどっています」
 潤「和樹・・・和樹はもううたわないっていってたけど、Skyのヴォーカルは、どこ
  を探しても、やっぱり和樹しかいないし。でも、いつかはここに戻って来るってみん  なに約束します。だから、和樹がうたえる日まで、僕らSkyのこと、待っててくだ  さい」
大地「真が欠けても、オレたちSkyはSkyだし、真の意志を引きついで活動をします。  それがいつになるか・・・まだわからないけど・・・本当に、今日はごめんなさい。  今までありがとう。そして、これからもよろしく」

 6 回想・高校時代

  昼休みの屋上。
  和樹、大地、潤、空を見上げながら、寝ころんでいる。
和樹「オレ、バイト始めた」
大地「いつから?」
和樹「ん?昨日から」
  潤、起きあがりながら。
 潤「何のバイト?」
和樹「RIPで」
  大地、煙草に火をつけながら。
大地「はぁ?ライブハウスだっけ」
 潤「だめだよ、それ!」
  潤、大地の煙草を指さしながら。
大地「いいの!」
 潤「先生きたら・・・まずいよ」
大地「きたら、潤、逃げろよ!」
 潤「・・・でも・・・」
大地「仕事内容は?」
和樹「チケット売りとか、雑用みたいな」
大地「和樹が、雑用ね」
和樹「なんかさ、すごくいいよぉ。まだ一日しか働いてないけど」
 潤「何で?」
和樹「何か、得るものがある気がする」
大地「得るものって?」
和樹「みんな輝いているんだ。自分の夢とか、今何をしたいかとか、
すごく明確にもってていいと思った。だって、今のオレってそういうのないし」
大地「もう、卒業だよな」
和樹「卒業したら、何したい?」
大地「特になにもないかも。ただ、普通に・・・かな」
 潤「僕は、進学するよ。だって、パパとママがそういうから。それで、いい大学入って、
いい会社に就職するの」
大地「で、結婚して、幸せに暮らすって言うんだろう?」
 潤「うん!何でわかるの?」
大地「世間一般!なんか、親のいいなりじゃん!」
和樹「オレは、そういう生き方イヤだな。なんか、そのままって気がする」
 潤「そのまま?」
和樹「やっぱさ、何かデカイ事してやろう!って思ったことないか、潤」
 潤「デカイ事?」
和樹「それが、どんなことかって、いわれてもすぐには答えられないけど」
大地「そうだな。オレも何か夢中になれるもの、探そうかな」
 潤「・・・僕はそんなこと考えたことなんてなかった・・・でも、もし失敗したら?」
和樹「そういうこと考えたら、何もできないよ」
大地「そうそう。たった、一度なんだよ。自分で決めなきゃ、自分のやりたいことは」
和樹「でもさ、潤。大切なものを失うことがあるかもしれないよ」
 潤「・・・失うもの」

 7 和樹自宅

和樹「いってきます」
 母「帰りは?」
和樹「わかんない」
 母「いってらっしゃい」

 8 坂道

  和樹、RIPへ向かう。

 9 回想・高校時代

  和樹、家をでて、学校へ向かう。
和樹「いってきまーす」
  母「いってらっしゃい」
    母、笑顔で見送る。
  途中で、ギターを背負っている大地と真にあう。

   X   X   X 

 和樹、大地、真、三人並んで歩いている。
和樹「最近、つまんねーよな」
 真「まぁね。」
和樹「大地、何か楽しいコトあった?」
大地「あー、ないな。きっと・・・」
  真「オレ・・・やっぱ、いいや」
大地「お前さ、いいかけてやめるなよ」
  真、立ち止まる。
 真「・・・昨日、香澄に振られた」
  和樹、振り返りながら、
和樹「マジっていうか、オレも少し前にふられてるんだよね」
  真、和樹とと大地追いつき、
 真「かっ、和樹も・・・かよ。好きな人がいるっていってた」
  大地、にやにやしている。
 真「なんなんだよぉ、大地」
大地「好きな人って、オレだったりして!」
 真「そんなぁ・・・」
  真、立ち止まる。
和樹「そんなわけ、ねえだろ」
  大地、和樹と真の顔を見比べながら、
大地「ふたりとも、変な奴」
    和樹、少しふてくされながら、
和樹「うるせーよ」
 真「だから、今日授業ふけるよ」
大地「だからって・・・いつもじゃん」
 真「まぁね」
大地「いつものとこだろ?」
 真「あぁ・・・」

10 回想・高校時代
  
  二年五組の教室。
  和樹、教室のドアを開ける。
 潤「おはよっ」
  潤、にこにこしながら、和樹に近寄ってくる。
和樹「おぅ!」
隼人「真、休みか?」
大地「いつものとこで、いつものこと」
隼人「あっ、またか」
 潤「いつものとこって?」
和樹「屋上。オレもいってくる」
  和樹、教室をでていく。香澄とすれ違う。
    香澄、少し照れながら、和樹に話し掛ける。
香澄「おはよう・・・」
和樹「おっす」
香澄「もう、先生くるよ。どこかいくの?」
和樹「さぼる。真と」
香澄「・・・真君と・・・」
  香澄、うつむきながら歩いていく。

11 回想・高校時代

  和樹、真、大地、隼人、潤は屋上で寝ころんでいる。
 真「オレ、ひとりでふけようと思ってたのに、何でいんだよー」
和樹「そんなこと、いうなよ」
大地「ふたりで、傷なめあえば」
 真「うるせー」
  潤と隼人、くすくす笑っている。

   X   X   X 

  潤と隼人、空を眺めている。
 潤「ねぇ、みんな空きれいだよ」
    隼人、冗談っぽく、
隼人「心が洗われるようだよ」
大地「隼人がいうと、気持ち悪いぜ」
隼人「大地がいってもな!」
  和樹、大地、潤、隼人は笑い出す。
 真「オレ、生まれ変わったら・・・」
大地「だからー、真」
  真、空を見上げながら、  
 真「・・・鳥になってみたい・・・」
隼人「真ー、アタマ平気?」
  真、つぶやく。
 真「自由に好きなところに飛んでいける」
  潤「そういうのって、いいよね。青く澄んだ空をひとりじめだね」
  和樹、突然叫び出す。
和樹「つまんねー」
  真、ギターを弾き始める。
  つられて大地も弾き始める。
 潤「僕、みんなと何かしたいな」
大地「たとえば、何?」
 真「暴走族っていうか、走り屋」
隼人「ダメじゃん。真しか、免許ないし」
 真「そっか。じゃー、音楽やんない?」
 潤「それだよ、僕やりたい!」
 真「やっぱ、やるからにはいくとこまで行こうぜ!」
大地「じゃ、オレと真は、ギターで決まり、だろ?」
隼人「オレ、太鼓やりてー」
 潤「僕さ、ベースがいいな。兄貴のがあるから」
和樹「オレは? もしかして、あまりものか・・・」
大地「いいじゃん。和樹は、歌うまいし、もてるし」
和樹「もてるっていうのは、違うだろ。アイツに振られてるんだぜ」
 真「じゃ、初披露!香澄に捧げる曲」
  みんな、一斉に笑い出す。 
  真、鼻歌混じりで、ギターを弾き始める。
和樹「なんか、いいよ。そのサビ」
 真「だろ!けど、この曲、詞ないんだよね。和樹、頼む。
      なんか思ってることとか書いてみて」
和樹「うん。考えとく・・・誰かのために・・・」
  和樹、独り言をいいながら、屋上を後にする。
  大地と真は、ギターを弾いている。

12 回想・高校時代

  学校の帰り道。
  和樹、真、潤、隼人、並んで歩いている。
 潤「ねぇ、せっかくだから、バンド名つけようよ!」
和樹「あぁ・・・そうだよな」
隼人「かっこよく、きざな感じがよくない?」
和樹「そういえば、大地は?」
 潤「えっ、知らない」
隼人「最近、よくいなくなるよな」
 真「彼女とか、できてたりして・・・」
隼人「最近さ、大地と香澄、仲いいよね」
 真「えっ、マジ?」
和樹「言われてみれば、少し怪しいかも」
 潤「ねぇー、バンド名!」
和樹「何か、候補でもある?潤」
 潤「うん!Skyがいいんだけど。」
和樹「それって、どうして?」
 潤「それはね、今日の空みたいに澄んだ心でずっといたいから」
和樹「いいね。そんな願いがあってもいいよな」
 真「うん。潤らしいね」

13 回想・高校時代

  香澄と大地、学校の近くの坂道を楽しそうに歩いている。
  角を曲がったところにある、楽器屋に入る。
  二人でギターをみている。

14 回想・高校時代

  屋上で、青空の下、練習する五人。
  
15 回想・高校時代

  海岸沿いの国道。
  真、バイクをとばして海へ行く。
  背中には、ギターを背負って。

16 回想・高校時代
 
  海岸で、ひとりギターを弾く真。

17 回想・高校時代

  「RIP」でSkyの初ライブ。
香澄「ドキドキするよね。みんな頑張ってね!」
大地「Sky!行くぜ!」
  香澄に励まされ、五人はステージにたつ。

   X   X   X 

  ライブ後、お客さんの反応。
 A「今のバンドなんか、いいよね!」
 B「特に、ヴォカールの声好きかも」
 A「次のライブ、いつかな?また見に行こうよ」


18 和樹自宅

和樹「お袋、仕事行って来るから」
 母「はーい。いってらっしゃい。今日も、遅いのかしら?」
和樹「あー、朝かも」
 母「はいはい」
和樹「いってきます」
  母、笑顔で見送る。

19 坂道・夕方

  和樹、鼻歌をうたいながら、歩く。
  ここで、くちずさむ曲は真の作った曲。
  和樹、空を見上げる。鳩が飛んでいる。

20 ライブハウス「RIP」

  和樹、地下へと続く階段を降りていく。
  香澄とすれ違う。
香澄「あっ、和樹、遅いよぉ」
和樹「そうかっ」
香澄「今日は、和樹チケよろしくね!」
和樹「おっす」

   X   X   X 

  午後五時、ライブハウスオープンの時間。
  受付で、チケの引き替えをしている和樹。
 A「ノアーのチケ、二枚」
和樹「はい、四千円です」
  AとBは、和樹の顔をみて、はっとする。
 A「Skyの人・・・」
  和樹は、答えずにうつむく。

   X   X   X 

 A「ねぇ、今の人そうだよね?」
 B「そうそう。たしか、今活動休止でしょ?」
 A「えっ、解散じゃないの?だって、和樹はもううたわないんでしょ」
 B「ギターの人死んじゃったんだよね」
 A「はぁ・・・Sky好きだったのに!」
 B「和樹の声って、めちゃくちゃ好きなのに・・・」
 A「でも、ここで働いてるってことは、またうたってくれるのかな」

   X   X   X 

  時計は、二十三時をまわっている。
和樹「香澄、もう帰れよ」
香澄「えっ?」
和樹「あと、オレやるし。それに、今日、遅刻したから」
香澄「でも・・・」
和樹「今日、お袋さんの誕生日だろ。みんな待ってるんじゃないのか」
香澄「うん。でも・・・」
和樹「大丈夫」
香澄「ありがと」
和樹「じゃーな」
  香澄の足音が遠ざかっていく。

21 坂道・真夜中

  香澄、ひとりで歩いている。
香澄「あの日のことがなければ、和樹は・・・」

22 回想・高校時代

  大地の部屋。香澄と大地が話している。
大地「実はさ、オレ達のバンド、最終選考まで残ってたんだ。それでさ、結構有名らしい
   プロデューサーの人がすごく和樹のこと気にいちゃって・・・」
香澄「それから?」
大地「でも、結局ダメになった」
香澄「どうして?」
大地「どうして?って、それは・・・」

23 「RIP」
 
  和樹、ステージに座っている。
和樹「オレ、何してるんだろう・・・今」

24 坂道・真夜中

  香澄、「RIP」前に戻ってくる。

25 回想・高校時代

  坂道を香澄と大地が歩いている。
  香澄、うつむきながら、
香澄「大地くん、ごめんね・・・」
  大地、少し笑いながら、
大地「他に好きな人がいます・・・っていうんだろう。顔に書いてあるよ。
   お前、わかりやすいもん」
香澄「大地くん・・・」
大地「オレ、前から知ってたよ。和樹のこと好きなこと。けど、お前、和樹のこと
      振っただろ。だから、オレはお前に和樹のこと忘れさせようと思ってきた。
      今まで。けど、ムリだよな。毎日、和樹と顔あわせるしな・・・」
香澄「ごめんね・・・あるがとう」
大地「和樹にちゃんと気持ち伝えろよ!」
香澄「うん・・・」
大地「絶対に!オレのこと、振ったバツ」
  香澄、苦笑い。
香澄「いつか・・・ね」
大地「きっと・・・だよ」

26 「RIP」前

香澄「和樹、まだいるのかな」
  香澄、ゆっくり階段を降りていく。
  音楽がかすかに聞こえてくる。
香澄「あれっ?たしか、電源おとしたはず・・・」
  香澄、慌てて走り出す。

27 坂道・明け方

  和樹、「RIP」をでて、駅にむかう。
  駅の近くで、ギターをもっている少年とすれ違う。
  和樹、立ち止まって、少年を目で追う。
和樹「アイツら、どうしてるのかな」
  和樹、空を見上げる。

28 和樹の家・朝

和樹「お袋、おはよう」
 母「おかえり。やっぱり、朝ね」
和樹「なんとなく、ステージにいたくてさ・・・」
 母「和樹、もしかして、忘れられないの?」
和樹「忘れるとか、そういう問題じゃないよ」
 母「・・・」
和樹「ただ、高校時代のことを思い出してたんだ」
 母「・・・」
和樹「なんかさ、急にアイツらのこと気になったんだ」

29 和樹の家・昼

  和樹、昼頃目覚める。
  部屋の奥から、アルバムを探し始める。
  アルバムを懐かしそうにめくっていく。
  一枚の写真をみつけて、はっとする。
  (この写真は、和樹・大地・香澄・真・隼人・潤で写っているもの)
  アルバムを閉じて、カレンダーで今日の日付を確認する。

30 花屋
   
  花屋から、でてくる和樹。
  赤いガーベラをの花束を持っている。
  和樹、赤いガーベラをみつめている。

31 和樹の回想・高校時代
 
  学校帰り、和樹と真が歩いている。
  花屋の前でたちどまる。
 真「オレ、花屋になろうかなー」
  真、まじめに話す。
  和樹、笑いながら答える。
和樹「お前が? にあわねぇ」
 真「好きなんだよ。和樹、ガーベラって知ってるか?」
和樹「花の名前なんか、ひとつも・・・」
 真「ガーベラがすきなんだよ、香澄は」

32 墓地

  和樹、ある墓の前に座り込む。
和樹「久しぶりだな・・・真・・・」
  和樹、ガーベラをたむけて手を合わせている。
和樹「ガーベラ・・・香澄は相変わらずだよ・・・オレもな」
  大地、隼人、潤が遠くから歩いてくる。
隼人「ひさしぶりだな、和樹」
 潤「和樹、元気してた?」
和樹「あぁ・・・」
大地「一年か・・・」
 潤「もう、一年たっちゃんだね。あの日から」

33 喫茶店

  懐かしさをかみしめながら、たわいのない話をする四人。

   X   X   X 

  突然、大地、潤、隼人がだまってしまう。
  そして、大地が話を切り出す。
大地「・・・和樹さ、また一緒にやってみないか?」
 潤「僕たち、三人は真のためにも再開しようと思ってるんだ。和樹と離れてるから、
   僕は僕なりに考えてた。進学を考えたりしたけど、そこに僕のやりたいことは
      見えないんだ」
和樹「・・・(ため息をつく)」
 潤「僕、また和樹と一緒にいたいんだ。大地だって、隼人だって、そう思ってる。
高校の時みたいにって・・・」
隼人「和樹!」
  和樹、握りこぶしをつくりながら、
和樹「真が、アイツが死んだのは、どうしてか覚えているのか?」
大地「あれは、お前のせいじゃないだろう。事故だ」
和樹「事故じゃない。オレのせいなんだよ」
大地「だったら、オレも同じだろう。あのとき、一緒にいたのはオレだった」
和樹「いまさら、なんだよ、大地。真・・・真はもういないんだ」
大地「・・・」
和樹「オレは、もう歌わない。一年前のあの日、そう決めたんだ」
 潤「そんなの真は望んでないよ」
和樹「オレは、決めたんだ」
  和樹、喫茶店をでていく。潤が追いかけていく。
大地「アイツは、まだ・・・」
隼人「こだわりつづけてるんだな」
大地「うん。それが、普通なんだよ」

34 坂道

  和樹、走っている。ただ、前だけをみて走っている。
和樹N「アイツから、離れたいと思った。少しでも遠い場所に。そして、
オレはあてもなく走り続けた」

35 回想・高校時代

  大地の部屋。和樹と大地が話している。
大地「この間のこと、残念だったよな。でも次は待ってろよってね」
  大地、笑いながら、和樹は思いつめたように、
和樹「そのことで、お前に相談がある」
大地「なんだよ、あらたまってさ。そういえば、和樹気に入られてたよな」
和樹「・・・うん」
大地「相談ってなんだよ」
  和樹、少し言いずらそうに、
和樹「お前さ、バンドいつまで続ける?」
大地「難しいこと、聞くなよ。オレひとりがって、問題じゃないし。でも、高校
  卒業したら、ばらけるよな。進学したり、就職したりでさ。和樹は、どーすんの?」
和樹「オレは、続ける。今のオレには、これだけだし、自分の居場所・・・探せた気がす  るんだ」
大地「そうか。潤がさ、進学考えてるよ。アイツやめちゃうかもな」
和樹「潤は、そうかもな・・・」
大地「隼人と、真はどうかな」
  和樹、ためらいながら、
和樹「実は、オレ・・・一人でやってみないかっていわれてるんだ。この間のひとに。
   でも、返事はまだしてない。みんなの気持ち確かめてから、決めようと思ってる」
  大地、急に怒り出す。少し、悔しそうに話し出す。
大地「・・・オレは、できればやめようと思ってるよ。だって、今まで五人でやって
     きたけど、この先どうなるか、なんてことはわからないし、このままって不安なん  だよ」
和樹「大地・・・」
大地「お前には、才能があるかもしれない。でも、オレにはないんだ。オレは何をやって  もお前には勝てない」
和樹「オレには、お前が思ってるほどのものなんか、何もないよ」
大地「あるよ。だから、こんな話がお前だけにくるんだろう。迷うことないさ。やりたい  ことなんだから、やればいいじゃないか。お前がそうすれば、オレはせいせいするよ」
和樹「大地、そんなこというなよ」
大地「だったら、そんなのすぐ断れよ。お前はどこかで迷ってんだよ。そして、何かを
   期待してるんだ。だから、ひとりじゃ決められないんだ」
和樹「オレ・・・」
  ドアが開く。真が立っている。
 真「なんだよ、今の話。お前、そんな奴だったのかよ」
和樹「・・・」
 真「なにか、いえよ。和樹。ちがうって否定しろよ」
和樹「・・・」
 真「お前!」
  真、吐き捨てるように言って、部屋を飛び出す。
  真のバイクのエンジン音が遠ざかっていく。

36 海岸沿いの国道
 
  一面に海が広がっている。
和樹N「気がつくと、そこは真が最後に・・・最後にいた場所だった。あの時、
一瞬でも気持ちの迷いがあった自分自身が情けない。アイツに何も告げられないまま、
いってしまった。手の届かない遠いところへ」

  バイクが一台、和樹の目の前を通りすぎる。
  手をあげている。
和樹「真ー」

和樹N「真だと、思いたかった」

37 海岸

  和樹、一人で海を眺めている。
  少し離れたところには、潤がいる。

   X   X   X 

  遠くの方の砂浜から香澄が歩いている。
  香澄、和樹のとなりにすわる。

   X   X   X 
  和樹、驚きながら、
和樹「お前、どうしてここに・・・」
香澄「どうしてかな・・・」
和樹「おい、香澄・・・」
香澄「みんなに・・・大地に聞いたんだ」
和樹「アイツら・・・」
香澄「ねぇ、高校の時のこと、覚えてる?」
和樹「・・・うん・・・」
香澄「あの頃の和樹、好きだった・・・」
和樹「えっ、でも、お前はオレのことを・・・振った。そして、大地と・・・」
  香澄、和樹の言葉を遮るように。
香澄「そんなの、忘れちゃった。和樹、前みたいに」
和樹「オレ、もう戻らない。戻れないんだよ」
香澄「それじゃ、前には進めない。そんなの和樹の本心じゃないよ。本当は、うたいたい   の」
和樹「そんなことない」
香澄「うそ。私、知ってるの。母の誕生日ではやく帰った日、ステージにいる和樹をみた。
   マイクを持って、すわってた」
和樹「香澄、お前・・・」
香澄「高校の頃ってさ、みんないつも一緒って考えてた。でも、時にはそれがまちがった
   ことかもしれない。だからね、和樹がやりたいようにすればいいの。その形がどう   であれ、和樹はうたいたいんだよ」
和樹「でも、オレは・・・」
香澄「また前みたいに、みんなとやることが必ずしも正しいとは、限らなくて、
   それぞれ離れることも必要じゃないかな」
和樹「・・・」
香澄「ねぇ、素直に・・・なってよ」

38 坂道
 
  和樹、海からの道を歩いて帰る。
  その後ろを潤が歩いてくる。
和樹「おい、潤!いつまでついてくんだよ」
 潤「・・・だって・・・ねぇ、一緒にやろうよ」
  和樹、少しあきれて、笑いながら、
和樹「バカだよ、お前は」
  潤、和樹の笑顔をみて、笑う。
 潤「だって、僕本気になれたんだ。今までのどんなことより。だから・・・」

39 和樹自宅

  和樹、部屋で考えながら、つぶやく。
和樹「素直・・・か。オレだって、本気だったよ」

40 「RIP」

  仕事が終わり、帰る香澄。
香澄「じゃーね」
和樹「あぁ・・・気をつけて帰れよ」
香澄「うん」
  香澄、階段を上がっていく。
  和樹、ステージにすわっている。

41 坂道・夜

  香澄、歩いている。
  一度、振り返る。

42 「RIP」

  和樹、赤いガーベラをみつめている。

43 坂道・夜

  香澄、立ち止まる。
  突然、「RIP」の方へ走り出す。

44 「RIP」
 
  和樹、マイクを握りしめ、うたいだす。
  みんなの言葉が、心に響いている。
  みんなの一生懸命な顔を思い出す。

45 「RIP」前

  香澄、ドアの前で息を切らしている。
  香澄、少しドキドキしながら、耳をすます。何かが聞こえる。
香澄「もしかして」
  香澄、階段を降りていく。
  和樹、うたっている。
香澄「和樹・・・」
  香澄の頬に涙が流れる。

46 大地自宅

  曲のアレンジをしている和樹と大地。
  大地、ふと思いだしたように、はなしだす。
大地「和樹、何かあったのか?」
和樹「何かあったかって、何だよー」
大地「お前、かなりの意地っ張りだったぜ」
和樹「そうかっ」
大地「そうだよ」
和樹「大地たちと久しぶりに会った日。オレ、真が最後にいた場所で、真に似た奴みたんだ。あの道をバイクでかけぬけていった」
  大地、うなずきながら、
大地「きっと、それは真だよ」
和樹「でも、真は」
大地「アイツは、生きてるよ。オレ達の心の中で。そうだろう?そして、これからもずっ  とさ」
和樹「そうだな。それと、潤には負けたよ」
大地「はぁ?潤」
  和樹、苦笑いをしながら、
和樹「アイツさ、喫茶店から、ずっと追いかけてきたんだ。あの場所まで。何もいわず
・・・ただ追いかけてきた」
大地「潤がか・・・」
和樹「なんか、潤らしいよ・・・」
大地「うん。潤強くなったよな」


   X   X   X 

大地「真さ、たくさんの曲残してくれたんだ。だから、その曲のすべてに
   お前の言葉をのせろよ。和樹らしい今の気持ちとかを」
和樹「まかせとけよ」
大地「もう一つ、大切なこと、あるだろ?」
和樹「大切なこと?」
大地「はやく、きづいてやれよ。香澄のこと」
和樹「香澄?」
大地「いつも近くにいて、気付かなかったとかいうなよ。まぁ、和樹らしいけど。
   オレ、香澄には振られてるんだぜ、これでもね。」
和樹「まてよ。オレだって高校の頃、振られてるし、お前は・・・」
大地「香澄っていいよな。何をするのも一生懸命でさ」
和樹「・・・」
大地「でも、アイツ高校の頃から、お前ひとすじだぜ」

和樹N「大地に言われて、気付いた。この一年、香澄は、ずっとオレ達・・・オレといた」

47 「RIP」

  RIPの階段にはってあるポスターをみているAとB。
A「ねぇねぇ、このポスターみて!」
B「えっ!Skyが活動再開!」
A「しかも、RIPでワンマンだよ!」
B「行くよね!行こうよ、絶対に」

48 墓地 

  澄み渡る空。
  一羽の真っ白い鳩が飛んでいる。
  ひとりで、和樹は真の墓へむかう。
和樹「真、いよいよ今日だよ」
  鳩が、和樹の前に舞い降りる。
和樹「香澄のこと・・・オレが守るから。いいよな、真」
  鳩が、空に飛び立っていく。

49 「RIP」

  たくさんのファン。歓声が、響いてくる。  
  和樹、大地、潤、隼人、そして香澄の笑顔。
和樹「今までの曲、すべてを僕たちSkyにとって、大切な人が残してくれました。
今日が約一年振りの復活ライブになります。今まで、ファンのみんなには、たくさんの
心配をかけてきました。今ここで、新たなるスタートをきりたいと思います。ギターの真は、もうステージの上には立つことはないけど、僕らの心の中に、みんなの心の中にもずっといて、そして、今日初めて僕らSkyを知ったみんなも真の作った曲をひとりひとりが、感じることはできるはずだから・・・」
  ファンの歓声が響く。
和樹「ラストの曲、きいてください。ガーベラ・・・」
  ガーベラの演奏が始まる。

  フェードアウト(F・O)  

50 坂道・夜

  五人で、歩いている。
 
香澄「今日、最高だったね」
大地「あたりまえだろ。オレ達なんだぜ」
和樹「まだまだ、これから。もっと、暴れるぞ。真と一緒に上をみてるんだ」
大地「真のやるからには、いくとこまでいこうぜって忘れてないんだぜ!」
 潤「今日のライブさ、真みててくれてたよね」
  潤、少し涙目になっている。
隼人「おーい、潤泣くなよ!」
大地「そういう隼人もステージで目赤かったじゃん!」
香澄「えっー、みんな目赤かったよ」
  大地、笑いながら、
大地「あっ、オレね、あれ目にゴミがはいったんだよ」
隼人「はぁ?そんないいわけするなよぉ」
  和樹、半分冗談っぽく、
和樹「オレのMCに感動したんだぁ」
大地「全然!」
  大地、笑っている。

   X   X   X 

和樹「香澄、オレさ、大切なもの・・・みつけたんだ」
香澄「・・・大切なもの?」
  大地、香澄の耳元でささやく。
大地「香澄のことだよ」
  香澄、頬を赤らめて、立ち止まる。
  四人は歩いている。
  和樹は、立ち止まっている香澄の手をとって走り出す。

和樹N「きっと、自分らしく生きていくことで、大切なものが見えてくるんだよね」

51 海岸

  一羽の鳩が、大きく羽を羽ばたかせて飛んでいく。


                 
                             END