気ままなディスク手帖
このコーナーでは最近聴いたディスクについて、気ままに私が感想を書いているコーナーです。
ただ、音楽的知識に乏しいため、ほとんど自分の耳だけを頼りとしているので、あしからず。
マーラー 交響曲第1番「巨人」
小林研一郎(指揮)/チェコフィルハーモニー交響楽団
チャイコフスキー 交響曲第5番
ワレリー・ゲルギエフ(指揮)/ウィーンフィルハーモニー交響楽団
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ひとことで言ってゲルギエフらしい野性的なチャイコフスキーである。所々大胆にテンポを速めるが、それがかえってゆっくりとした優美な部分の美しさを倍化している。
第1楽章の序奏部はゆったりとしたテンポで開始されるが、これから起こる嵐の前の静けさといった趣がある。主部に入ると初めはこれから行くぞ、行くぞと見せかけては手綱を絞り、次第に勢いとパワーを増していき、まずは軽く爆発(4:01)する。ついで再びゆっくりとしたテンポで第2主題が奏されるが、主題の展開に入るとやり過ぎとも言えると加速と共に爆発する(7:01、8:55など)が、まだ余力を残して押さえているという感じで進んでいく。そしてエネルギーを溜めるだけ溜めて大爆発させると思いきや大爆発のないまま第1楽章は閉じられる。この楽章を序奏部と捉えて演奏しているように思える。
第2楽章の序奏部も同様ゆったりと開始される。テーマを吹くホルン、チェロの美しさ、そして所々で合いの手を入れるオーボエの音色も何ともいえず最高である。そしてクライマックスへ登っていくところでのテンポの自在の変化、ティンパニの強奏、そのあとに訪れる間とピアニッシモもすばらしい。この楽章はこのCDの最大の聴き所だと思う。
次に第3楽章であるが、こんなに速いテンポで演奏されるのは珍しいのではないか。ワルツというよりむしろスケルツォのように聞こえる。
そしてフィナーレ。今まで起きそうで起きなかった嵐がついにフィナーレでついに爆発するのだ。やはり始めはおとなしいが曲はエネルギーをためていくかのようにじわじわと力(りき)感を増し、ついに炸裂する(3:02)。このあとは推進力にまかせるままに曲は進み、
最後までガス欠を起こすことなく、コーダに突入する。この間のティンパニの強打も最高だ。最後はまるでフルトヴェングラーのような加速をみせると、リダルダントしながら立派に曲を締めくくるのだ。
私はゲルギエフにはこの路線で進んでいって欲しいし、理性的なサイモン・ラトルと、カラヤンVSバーンスタインのような大きな存在になっていって欲しいと思う。同じ曲を二人がウィーンフィルと共演して聴き比べができるような時が早く来て欲しいものだ。
チェリビダッケの遺産/ロシア管弦楽作品集
セルジュ・チェリビダッケ(指揮)/シュトゥットガルト放送交響楽団
- 収録曲
ディスク1 ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)/ストラヴィンスキー:バレエ組曲「妖精のくちづけ」
ディスク2 リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」/ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」
ディスク3 プロコフィエフ:スキタイ組曲「アラとロリー」/交響曲 第5番 変ロ長調
ボーナス・ディスク プロコフィエフ:交響組曲「ロメオとジュリエット」から
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チェリビダッケのシュトゥットガルト時代の録音の第2弾が登場。第1弾のブラームス交響曲全集では、ミュンヘン・フィルとの演奏からは想像もできないような速いテンポの引き締まった名演(特に第3番)を聴かせてくれただけに今回も大いに期待して購入した。結果は期待に違わぬ名演だと思った。すべての曲について書くのは大変なので、「シェエラザード」を中心にいくつか選んで感想を書いてみたい。
まず一番はじめに聴いた「シェエラザード」から。ヴァイオリン好きの私は、この曲はヴァイオリン・コンチェルトのひとつとして捉えているので、どうしても独奏ヴァイオリンのほうに耳がいってしまう。この演奏では、独奏は目立ちすぎることもなく、引き過ぎることもなく、適度なバランスでオーケストラの中に溶け込んでいる(一般に評判のよいデュトワ/モントリオール盤の独奏は控えめ過ぎて、私には物足りない。どうせなら、ロストロポーヴィッチ/パリ管のように濃厚に弾いてくれた方が私は好きだ)。
全体の印象としては、かなりテンポは遅目で、「シェエラザード」の物語を語るというよりは、純粋な管弦楽曲として演奏されている(演奏家としては当然のことかもしれないが、聴くほうとしてはどうしても物語として捉えてしまう。この辺がまだ私の聴き方が未熟なところだ)。かと言って、聴いていて物足りないということは全くない。
第一楽章の冒頭のシャリアール王の不気味な主題がゆったりとしたテンポでものものしく奏されるのを聴いただけで、ひきつけられてしまった。ついで現われるシェエラザードの主題の美しさも格別だ。特にハープの透明な音色がすばらしい。主部は、ゆったりとしたテンポが大海原の波のうねりを想像させ、中間部で入るオーボエの合いの手も粋である。クライマックスでのオケの厚みもこれ以上ないぐらいで、時折入るチェリの気合の声も全然いやではない。
第二楽章のテンポの遅さは尋常ではない。ファゴットのソロを聴いただけで驚いてしまった。この部分は抵抗のある人も多いだろう。しかし、音楽がもたれてしまう事はないし、こんなに優美な演奏はないと思う。中間部の荒々しい部分に入るとテンポも普通になり、活き活きとした演奏が続く。それが終わると再び遅いテンポに戻り、最後はテンポを速めながら、クレッシェンドして、壮大な終結を迎える。この尋常でない遅さがあって、はじめてこの終結が生きるのかなと思った。
第三楽章はこの曲で最も優美な音楽。ここでも中間部のクラリネットのソロの部分がかなり遅く、もう少し活き活きとした演奏で聴きたいな、と思った。
第四楽章は大胆なテンポの対比があり、個人的には最もお気に入りである。冒頭のヴァイオリン独奏はかなり濃厚に歌っており、伴奏する低弦のおどろおどろしさはこれまでに聴いたことがないぐらいだ。主部に入ると、曲想によりかなり大胆にテンポを使い分け、先のブラームスの交響曲全集で聴かれたような引き締まった演奏が聴かれる。特に後半の壮絶さはすさまじく、今まで聴いたことのある演奏の中で最高のものだと思う。それゆえ、最後のヴァイオリンで奏されるシェエラザードの主題がなんともの悲しいことだろうか。聴いていて、心が締め付けられるようだ。
次に、すでにミュンヘン・フィルとの録音が出ている「展覧会の絵」について。なんと10分近くも演奏時間が違う。しかし、演奏時間が短いからといって、スケールは全然小さくなっていないし、「バーバ・ヤーガ」から「キエフの大門」への移行部分などは、むしろシュトゥットガルト盤のほうが立派に聴こえた。本当に音楽というものは摩訶不思議である。この曲が好きな人には、どちらも持っていたい名演であることは確かである。
他の曲についてはもう少し聴いてから書くことにします。
加羽沢美濃(piano)/A
WHOLE NEW WORLD
ディズニー音楽をピアノ・アレンジしたアルバム。ピアノ・ピュアシリーズの最新盤。
- 収録曲
1 いつか王子様が〜<白雪姫>より
2 右から2番目の星〜<ピーターパン>より
3 ビビディ・バビディ・ブー〜<シンデレラ>より
4 町のクルエラー〜<101匹わんちゃん>より
5 ララルー〜ベラ・ノッテ〜<わんわん物語>より
6 困った時には口笛を〜<ピノキオ>より
7 美女と野獣〜<美女と野獣>より
8 狼なんかこわくない〜<三匹の子ぶた>より
9 チム・チム・チェリー〜<メリー・ポピンズ>より
10 くまのプーさん〜<プーさんとはちみつ>より
11 いつか夢で〜<眠れる森の美女>より
12 ハイ・ホー〜<白雪姫>より
13 愛を感じて〜<ライオン・キング>より
14 ジッパ・ディー・ドゥー・ダー〜<南部の唄>より
15 ミッキーマウス・マーチ<ミッキーマウス・クラブ>より
16 みんなネコになりたいのさ〜<おしゃれキャット>より
17 ホール・ニュー・ワールド〜<アラジン>より
18 星に願いを〜<ピノキオ>より
19 イッツ・ア・スモールワールド〜ディズニーランド・アトラクション<小さな世界>より
20 スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス〜<メリー・ポピンズ>より
- コメント
冒頭から、加羽沢美濃の、海面に光が反射してきらきら光っているようなピアニズムに惚れ惚れさせられてしまう。7や13や18ではなんとも切なく、美しいメロディーが胸を打つ。かと思えば、3や15,16,20にみられるコミカルな曲で、うきうきして思わず踊り出したくなるような気分にさせてくれる。
どの曲にも、独特の間があり、美しいメロディーに浸っていると、突然正反対の曲想に変化してしまうなど、美濃節ともいえる、アレンジでいっぱいである(かなり宇野功芳的な表現)。大袈裟かもしれないが、ヴァイオリニストでいうと、前橋汀子の粋な節回しとナージャ・サレルノ・ソネンバーグの大胆な表現が同居しているように私は思う。
なかでも白眉は19である。低音のテーマで曲が始まったかと思うと、チャイナ風なメロディが現われ、コミカルなディズニーのテーマが始まる。この冒頭を聴いただけで完全に引き込まれてしまう。中間部で短調に転調されると、”さくら”(さくら、さくら、と歌う文部省歌)という純日本的なメロディーが現われ、そのままディズニーのテーマに突入し、最後は一歩、一歩かみ締める様にゆっくりと奏されると、冒頭の低音のテーマが現われ、曲を締めくくる。一見同居し得ないと思われる、ディズニー、純日本、チャイナ風のメロディーが彼女の手にかかれば、こんなにも見事に、何の違和感もなく、ひとつの曲の中で溶け合っているのである。
そして、このあとにコミカルな20を配しているところなど、選曲の妙を感じる。
とにかく、このアレンジの妙を聴いたら、他のアルバムも聴かずに入られないこと請け合いである。
- 加羽沢美濃について詳しく知りたい人は、ラブリーな人たちのコーナーへ。
ベートーベン ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 <皇帝>
創作主題による32の変奏曲
内田光子(p)/クルト・サンデルリンク/バイエルン放送SO
コメント
皇帝は大好きな曲で、内田光子/サンデルリンクという組み合わせも魅力的だったので、かなり期待していた。期待が大きかったせいもあるかもしれないが、この演奏には少しがっかりした。
冒頭のオーケストラの音から、何か物足りない気がする。再生装置のせいもあるかもしれないが、サンデルリンクの指揮でいつも感じられるような、どっしりとした厚みのある響きがしない。しかも普通なら、ピアノの登場で一気に曲の中に引き込まれるのだが、それもない。普段買ってきたディスクをはじめて聴く時は、スピーカーの前に座り込んでじっと聴き入るのだが、そういうこともなかった。ただ、別の用事をしながら、気がついたら演奏が終わっていたというう感じだった。”うーん、どうした内田光子”、というのが率直な感想である。
枯れた表現に私の感受性がついていけなかったのか、それとも不調だったのか、録音のせいなのか、わからないが、最近少しがっかりさせられた1枚である。
しかし、創作主題による32の変奏曲はとてもすばらしかった。変幻自在の変奏に圧倒された。この1曲のために、このディスクは置いてておかないと。
追記
産経新聞発行のクラシック情報誌”MOSTLY CLASSIC”で、私の敬愛する音楽評論家宇野功芳氏は、表現の雄弁さとニュアンスの変化に舌を巻く、と激賞されている。また、音に関しても私とは全く逆の印象を述べられている。
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