Daft Punk  /  DISCOVERY

         前作”HOMEWORK”の好評につき、ここ日本でもかなり話題になったダフトパンク待望の
           セカンドアルバム。イメージ的な戦略としてかの有名な松本零士(銀河鉄道999の作者)を迎え、
           きっちりキャラクター作りも行うという新時代感覚な新作発表である。単にアルバム1枚を世に提示する
           のではなく、1つのプロジェクトを推進させるような木目細かさを感じます。
            先にシングルとしてカットされた”ワン・モア・タイム”では間違いなく21世紀の幕開けを狙ったかのような
           ビッグスケールなパーティーチューンを我々にぶつけ、メガトン級の衝撃を与えてくれましたが、この
           アルバムにはそれ以上、いや、何倍もの殺傷力を搭載したものとなっていた。”ワン・モア・タイム”は
           今回のダフトワールドのほんの序章でしかないのです。(とはいっても”ワン・モア・タイム”は文句なしの
           名曲ですが)扉を開ければそこには今まで感じたことのない未来、宇宙のような未体験ゾーンが果てしなく
           広がっていた。明らかに新しい匂いがする。しかし、特に全く新しいジャンルの音楽を生み出したかというと
           そうでもない。とても文章では表現しきれないエッセンスが含まれている。1つの”音”というものにこだわり
           ぬいて洗練されたレディオヘッドの”KIDA”というアルバムが存在するが、その”音”という区別をもう少し
           幅を広くとって、その幅にこだわりぬき洗練させたのがこの”ディスカバリー”というアルバムなのだと思う。
           ”テクノ”というかなり大きなジャンルにも捕らわれない音楽性。新世紀のポピュラー・ミュージックにもなり得る
           といわれるが、正に納得。はるか彼方銀河系の星にも通じる音楽。ひょっとして宇宙から届けられたポピュラー
           ミュージックなのか?とバカな錯覚をおこしてしまう魔力も決してないとは言いきれないのである。タイトルも
           実に明確でカッコイイ。”エアロダイナミック”、”デジタルラブ”、”スーパーヒーロー”、”ナイトビジョン”。
           もう聴く前から”一体どんな曲なの?”と期待を持たせてくれるようなものばかり。またタイトル名と曲の
           雰囲気が驚くほどイメージ通りで、ふっと頭の中でビジュアルイメージが自然と形成されてしまう。
           文句無しのパーフェクトアルバムです。だが決して勘違いしてはいけないのが、これは1枚のアルバムを
           いつも通り発表したのではなく、ダフト流総合エンターテインメントなのである。ミュージックシーンに新風が
           吹き荒れること間違いないでしょう。

 


           Tom Mcrae / 生への癒し

          21世紀に入ろうとする正に世紀末という時期に、こんなオドロオドロしいアルバムを購入
            してしまった・・・。ジャケットの雰囲気と邦題タイトルの”生への癒し”。明らかに尋常でない暗さ。
            閉ざされた地下室で黙々と、明かりはわずかなロウソクで詩的めいた大事な文書でも書いている
            ような姿である。ある意味ジャケ買いで想像通りの音が鳴っていると確信できる親切なアルバム
            かもしれないですね。とにかくジャケットを見ただけでも強烈な彼の世界観が感じられる。
             今作でデビューを果たすトム・マクレ−はイングランドのサフォークにある人口250人のごく小さな
            村に生まれ、両親が共に牧師という特殊な環境のもとで育った。なるほど。歌詞の内容が”生”と
            ”死”に関連した宗教めいた箇所が多々あるのはそのせいか。本国イギリスではポール・ウェラーの
            の前座を務めるなどして結構実力もきちんと認められているようです。サウンドはアコースティックが
            主体で、他にもピアノ、ストリングス、パーカッションなどが存在するが、どの音もトーンを極力下げて
            密室で鳴り響く音の存在感を導き出しているようだ。緊張感漂う、張り詰めた肌寒いサウンド空間から
            繊細でありながらも、どこかしら力強さをフツフツと感じるトム・マクレ−の声。時には残酷に、そして、
            時には優しく歌い上げる彼のボーカルは正に天使と悪魔。強烈な世界観に包まれた楽曲に私は
            わずか数分で幽体離脱。ただ暗いだけではない。ジワジワと膨張して訴えかける不思議な力が
            そこには存在する。これが彼の”生への癒し”なのか?
             アナログプレイヤーの針をそっと落とす音から始まる一曲目にして不気味な”You Cut Her Hair”。
            ピアノ主体で死んでしまいそうなほどの孤独感が漂う”2nd Law”。暗闇の中から徐々に光が差すような
            ”One More Mile”。パーカッションが入り、独特の温かさが伝わる”Hidden Camera Show”。幻想的な
            広がりをみせるストリングスが感動的な”Language of Fools”は唯一のラブソング。伸びやかに歌い上
            げているのが印象的。ピアノと一緒に盛り上がる壮大な”Unitled”はマジで泣ける。ありきたりなポップ
            ソングを歌うシンガーソングライターが多い中、オルタナティブ精神を貫く独自の世界観と魂を揺さ振る
            才能溢れた歌声をもつこのトム・マクレ−は、今後どれだけの人を癒すだろうか。


             the delgados / THE GREAT EASTERN

         常に独自の個性溢れるアーティストを産み出すグラスゴー・シーン。そのグラスゴーの現在を
          支えるケミカル・アンダーグラウンド(bis、アラブ・ストラップ、モグワイなどを輩出する。)を立ち上げた
          バンド、デルガドスの3作目となるアルバム。決して流行の音に傾倒せず独自のアートを創作しようとする
          のがこのレーベルのカラーであり、中心的存在である彼らは当然その意志を周到している。弦楽器、
          ストリングスとギター、ベース、ドラムの音が上手く溶け込み合い、独自の幻想的な世界が広がる音響空間
          の中に男女の囁くようなボーカルが交互に、または重なり合って語りかけてくる。リスナーである我々の意識を
          天使達が何処か遥か彼方の異空間へ運んで行くような陶酔感を感じさせる。フレーミング・リップスなんかと
          通じる癒し系のサイケデリアである。デルガドスというイメージ的にごつごつした名前とは裏腹に、このアルバムは
          非常に繊細できらびやか、更に神秘性をも感じ取れる正に天界のシンフォニーのようだ。
          昼間のポカポカした時にこのアルバムを聴いてうたた寝するとかなり心地良い気分になれます。


             TONI BRAXTON / THE HEAT

         自己破産によるレコード会社とのトラブルを乗り越え、3年ぶりにカムバックを果たしたラフェイスの
          R&Bシンガー、トニ・ブラクストンの新作。若手R&Bグループが展開するチキチキサウンドとは一線を
          画し、世代的に一歩前進したきらびやかで官能的な深みのある楽曲が多い。アルバムタイトルの
          ”THE HEAT”からもわかるように一曲一曲に含まれる彼女の恋愛に対する熱い感情がヒシヒシと
          伝わってくる。まろやかで深みのある彼女のボーカルとドリーミーで非常に品のあるきらびやかなサウンドが
          一握の黄金の砂のように手のひらからサラサラと流出する。たまに登場するラテン風の哀愁漂うギターとの
          溶け込み具合が心地良い。TLCのレフトアイとコラボレートしているアッパーで攻撃的な歌詞の楽曲にも
          挑戦し、違った一面も垣間見る事が出来る。しかしどこを取っても彼女の官能的なボーカルは顕在ですな。

      


            DAY ONE / ORDINARY MAN

         マッシヴ・アタックのメランコリック・レーベルから出てきたブリストルの新星ユニット、デイ・ワン
          のデビューアルバムである。ブリストルといえばトリッキー、マッシヴ・アタック等に見られる
          HIPHOPと独特の陰鬱をミックスさせたダークな曲を想像してしまうが、彼らはそのブリストルサウンド
          の特色を取り入れポップな歌を作ってみましたといった感じ。最新のテクノロジーを使ったであろう
          ビートとサウンドアレンジやHIPHOPの匂いを醸し出してるのがいかにも新世代の感覚らしい。
          派手さ、力強さを全て削ぎ落とした超ラフで気が付くとその辺で鳴っていそうな程馴染みやすい
          アルバムである。かといって手を抜いているのではなく、そう見せる為に緻密なアレンジ、ミキシング
          を行っているのでしょう。だってプロだもんな。

   


         D’ANGELO / Boodoo

         ヒップホップ世代と絡み合ったニュー・クラシック・ソウルの開拓者ディアンジェロの
          2作目となるアルバム。ジャケットのいかつさとは裏腹に音、ボーカルと共に実に緻密な
          作りとなっている。生音主体で独特の密室的とも言える濃密なサウンドと、粘りとファルセット
          が交錯した繊細かつエモ−ショナルなボーカルの共存はこれぞソウルとも言うべき汗臭さ
          を感じる。真のソウルミュージックとは派手なサウンドなしにしてどれだけインパクトの有る
          曲を作れるかにあると思う。それを見事に具現化してる男こそこのディアンジェロである。
          ヒップホップ好きも取りこむようなファンクな曲もあり、実際にメソッドマン、レッドマンが参加
          している曲も有る。新世代のモダンソウルとして希有な存在であると思われる。