「大人になると見えなくなる・・・」

2009年9月2日 中島 康

 

 あなたは、子供の頃、妖精を見たことがありますか?

水の妖精、花の妖精、森の妖精、光の妖精・・・。

それは、いつから見えなくなりましたか?

大人になってから・・・?

 

 その娘と巡り会ったのは、12月、冬の雨の降る遅い夜でした。

雨の中、その娘は、白いコートでビニールの傘をさしていました。

ぼくは、雨にぬれながら、自転車。

そして、

「寒いね。。」

その娘の戸惑った顔。

それが、ぼくらの始まりでした。

 

 始まりの後は、週末いつも、ドライブ、食事、酒、ぼくの部屋でした。

話すことは、

ぼくは、

30代後半で転職をしていること、

結婚をしていない理由、

その娘を愛する証明。

彼女は、

大学で起こったこと、

友達との出来事、

ぼくを愛する証明。

 

 春の頃、その娘が話してくれました。

「あのね、わたし、お姉ちゃんがいるんだけど、

お姉ちゃんは、大学を卒業すると、

スチュワーデスになったの。」

ぼくは、ビールを飲みながら、その娘の話を聞きました。

「だけど、お姉ちゃんは、大学の頃から付き合っていた人がいて、

就職して1年も経たないうちに、仕事を辞めて、

その人と結婚したの。」

ぼくのビールは、進みます。

「両親は、最初は反対したんだけど、

早いうちに結婚することはいいことだと考えていて、

結局は、賛成したの。

実際、両親も25ぐらいで結婚しているの。」

その娘の置かれている状況を、その夜は、ぼくは、深くは理解できませんでした。

その話の本当の意味を知ることはできませんでした。

 

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 夏の頃は、ぼくが転職がかなったこともあってか、楽しい太陽を満喫しました。

海、プール、花火。

その娘もぼくも、心から、開放感とともに幸福を感じました。

しかし、この頃から、未来は、夏が終わるように、

変わろうとしていました。

「ところで、来年は卒業だろう。

就活は進んでる?」

「うーん、それを言わないで。。

進んでないの。

どうしよう。。」

「何をやりたいかをしっかり考えた方がいいよ。」

「うん。。。」

ただ、ぼくを両親に紹介する話しは、この頃も、一度も出ませんでした。

ぼくからも、その話しをしたことはありませんでした。

先に、セミは、ミンミンゼミから、ツクツクホウシに変わっていました。

 

秋の頃、その日、ぼくたちは、隣同士に座って、お茶を飲んでいました。

いつものように他愛も無い話しを楽しくしていました。

その時、話しが途切れ、間が訪れました。

いつでも起こる、なんでもない間。

しかし、この時の間は、完全に未来を変えるものでした。

その娘は、突然、ぼくの膝に顔を伏せると、

「ごめんなさい。

ごめんなさい。」

と、詫び始めました。

「どうしたんだ、一体?」

「・・・・。」

「ちゃんとわけを話して?」

その娘は、やっと顔を上げると、話し始めました。

さびしそうな顔で・・・。

「前に、両親は、早く結婚した方がいいと思ってるって話したでしょう。

それで、黙ってたけど、夏にお見合いをさせられたの。」

「・・・。」

ぼくは、言葉を失ってか、黙って話しを聞きました。

「最初は、両親が勧めるから、仕方ないと思ってたんだけど、

会ってるうちにいい人だなと思うようになったの。。。」

話しは、その娘から、いろいろ続きました。

その男の人のこと、両親の反応。

そして、

「結局、その男の人と結婚前提で付き合うことになったの。

両親も賛成しているの。

それで、、、それで、、、悪いんだけど、もう会えない。。。」

その娘は、涙をこらえていました。

ぼくは、

「それは、そうだろうな。

ぼくとは、歳が離れすぎているし、

転職もできたばっかりだし、

両親にとっては、

その男の人と比べようもないよな。」

と、なぜか冷静に答えました。

店の中の雑音は、二人からは、消えていました。

「ごめんなさい。。。」

涙は、とうとうこぼれました。

 ぼくは、聞きました。

「最後に、教えて。

今でも、ぼくが好きかい?」

「うん、大好き。」

「ありがとう。

本当にありがとう。」

 

 これで、ぼくとその娘は、冬の雨の中、巡り会って、愛し合い、

そして、その冬が来る前に、巡り会う前の同じ時間のない二人に戻りました。

 

 例え好きでも、永遠に一緒にいることができない。

それは、なぜ?

それは、大人になると、妖精が見えなくなることと同じ・・・。

大人になったその娘には、ぼくは、もう見えないのでしょう。

 

 

END