赤間の日記
9/1 水曜日
また薬打たてしまいましたぁ。爽快です〜。
金は全部取られちゃったけど、まぁいいや。
ちょっと動悸がするかなぁ。
阿部には逆らえないし。
さっきまで具合悪かったのも一応おさまるし。
………ま、いいか。
9/2 木曜日
この日記………9/1。……これはボクか……?
……どうでもいいか。もう…疲れた。
阿部は本当に今、浅黄さんに何もしていないのだろうか………
……信じられないな。
阿部は…あの日以来、ボクの近くにいる。
いや……ボクがずっと、阿部の近くにいさせられている……。
とにかく、阿部といる時間は結構長い。
……だから、少しは浅黄さんから離せるかもしれない。
けど………けど…………………
最近のボクは、もうクラスでも知られています。
男子も女子もみんな無視だ。変に集られたりするよりマシか……。
でも佐久間さんは、ボクと今までと同じように……接してくれた。
絶望…か。
9/3 金曜日
阿部………。
今日の放課後……。事は起こった。
阿部と数名の男子が、写真を撒いていた。
ほとんどの女子は無視していた。
そして、ほとんどの男子はその写真に釘付けだった。
その写真は……言うまでもないものだった………。
ボクは机にだれたまま動けなかった。
浅黄さんも机に顔を向け、うつむいたままだった……。
ひどい……ひどすぎる。
今のボクは……阿部への憎悪を持ちながら……何もできない。
力が出せない………。
「約束が違うじゃないか……。ボクは君の言うことに従っているじゃないか」
ボクが言ったことに対し、阿部は笑っていった。
「約束はしてないさ」
…………………浅黄さん…ごめんなさい。ボクは…………ボクは………
9/4 土曜日
ボクは辛かった……。浅黄さん………。
それでもボクは…阿部には逆らえない………。なんて事だ。
そして……今日もボクは薬を打った。打たれたのではなく………。
だが今日は、どんなに気分が変わっても阿部を憎む心は変わらなかった。
(阿部を殺そう)
誰かが言った。耳元で聞こえる。けれど、誰もいないここはボクの部屋。
そんなことはできない。
多量の薬で半分死んでいた理性はそれを拒否した。
ダメだ……人を殺しちゃいけない………いけない………………。
9/5 日曜日
ボクは…………………どうしたらいいんだ。
浅黄さんをこのままにはできない……。ならどうすればいい?
阿部には何をしても……だめだ。
よく分からないが、阿部を追いつめれば同時に浅黄さんさえ追いつめることになる。
阿部が浅黄さんに夏休み中に何かをした……。おそらくボクと同じ。
強制とはいっても……警察沙汰にはできない。
そうなると………。
今日、何度も何度も考えました。けれど、最後の部分に来ると……………。
(阿部を殺そう)
そう聞こえてきます……。ボク自身、それしかないかもと思いかけています。
ボクは、"思いかけている"状態になってしまったら、完全にそう思ってしまうので
多分……やはり………それしか…………。
………………………………それしか。
9/6 月曜日
やはり殺すしかない…………。
今日、ボクの耳元で話す声はいろんなことを言ってきました。
声は言いました。
(浅黄さんを助けるには それしかない)
そう…殺すしかない。だけど…人を殺すなんて…………。
(自らが生き残るために殺すことの何が悪い?
人間も生命のひとつ。生命なら生きることを第一に考えなえれば……)
……人間ってそんなものなんだろうか。
………とにかく、ボクは阿部を殺します…。
浅黄さんが…このままではいけない。ボクは…いい。
あの浅黄さんを……こんなところでダメにしてはいけない。
自分の浅黄さんへの思いを感じたとき、ボクは決めていました。
浅黄さんが困ったときは、必ず助ける………と。
純真なあの日の誓いを……果たす。
阿部を殺す。
9/7 火曜日
今日、阿部は学校に来ていませんでした。しかし……何も問題はありません。
殺すにしたって計画も無しにはボクの身が危ないですから……。
今日は久しぶりに体が辛かったです…。薬が欲しくなりました。
でも………いけません。もうこれ以上は、戻れなくなる……そう感じます。
今ならまだ…我慢できるくらいですから………。
……もし、ボクの予測が正しければ……浅黄さんもボクのようになっているはず…。
浅黄さんを…壊させない。
………どうやって殺すかは、これから考えます。
9/8 水曜日
今日も阿部は学校に来ませんでした。…あと、佐久間さんが風邪で休みました。
阿部がいなくても、クラス中にその姿が知られてしまった浅黄さんは………毎日辛そうです。
阿部のせいで…学校に来ないわけにはいかないんですね………。
阿部を殺す計画は…できました。
事故死に近い方がいいと思い、それなりの方法を考えました。
近くの川は、人気や深さなどの条件も結構そろっています。
それに、司法解剖で薬物がでてくれば過って転落とも…………。
………問題は、時間のみ。さぁ…何時やるか…………。
チャンスを伺わないと。
9/9 木曜日
阿部と佐久間さんは今日は学校にきていました。
しかし阿部はボクには特に触れず、授業が終わるとさっさと帰ってしまいました。
いつもの場所に行くときには阿部に連れられ川のそばを通り、帰りはいつも日が暮れています。
その時が狙いだと思いましたが……………なるべく、早めに決めてしまいたいものです。
そういえば、9/27は浅黄さんの誕生日です。
………それまでには、なんとかしてあげたいです。およそ二週間……。
9/10 金曜日
最近、全然阿部が連れて行かなくなりました。
ボクも時々、悶えるように苦しくなってしまいます………。
なんで……なんで今になって連れていかないんだ。
ボクの計画を知っているはずはない……。
ボクの耳元では今日もささやきが聞こえます。
(要はお前が生きれば良いんだ……)
この言葉はボクに何を言いたいのか、よくわかりません。
この声はボクにしか聞こえないみたいです。
授業中にも聞こえてきます。授業は聞こえてないのに……。
ボクが生きるより、やっぱり浅黄さんを守りたい。そんな気持ちです。
そのためにも阿部を………。
9/11 土曜日
また一日…ボクはなんとしても9/27までに決着をつけたい…。
焦りが生じます。最近のボクはただでさえ冷静さを欠くようになっています。
そしてこの時間……夜の帳も落ちるとただただ暗く辛い気持ちになります。
鈴虫が鳴いています……。
窓の外を見ると、その暗闇に何かが見えそうで…見えない。水の流れる音もする。
夜の闇は暗い気持ちにはさせるけれど冷静さを取り戻させてくれる。
…………今は待つしかない。まだ時間はある。
絶対に……殺してやる。
9/12 日曜日
ボクは……本当に人を殺せるんでしょうか?
……殺せませんでした。
今日やっと……阿部に連れて行かれました。帰り…阿部の後ろを歩きながら橋を渡りました。
ここは人通りも少なく………まさに都合はよかった。そして、その通りの状況だった。
だけど……いざ殺ろうとした時、ボクは固まった。
手が震え……息が大きく深くなり…………
阿部の背中を睨み付けてはいましたが……………。
結局橋を過ぎてしまった。
ボクは手を見ています。
そして、握ったり開いたりしています。これはボクの手だよね?
なにか今日は、手に糸が絡みつく感じがします。
息を吹きかけると、糸は消えます。そしてまた手を握ったり開いたり……。
気がつけばまた糸が………。この糸はなんだろう?
……ボクの最後の良心の様な気がします。
今も苦しむ人がいます。ボクができることを考えます。
………まだ時間はある。殺らなかった事を後悔したくない……。
9/13 月曜日
阿部が学校を休みました。最近よく学校を休みますが、具合が悪いとは思えません…………。
……阿部がボクを誘いに来るまで少なくとも三日はあるでしょう。
困ったことには、ボクの体はだいぶ薬を欲しがるようになってきました。
阿部は……少量なので平気なようです。
阿部は何をしたいんでしょう?浅黄さんとのことで邪魔なボクを消したいんでしょうか…。
でも……消えるのはあいつの方です。
今日も手には糸が絡んできます。ボクは手のひらと手の甲をすりあわせて糸を消しています。
気がつくとこの糸は腕や足の甲にも降りかかってきていました。
阿部を消したとしても………ボクは消えてしまうかもしれません。
9/14 火曜日
今日も阿部は学校を休みました。
HRの時に話がでましたが、阿部のアパートに連絡しても阿部はでないようです……。
阿部はまた、ボクが知らないところで何かをたくらんでいるんでしょうか………。
帰りに佐久間さんに誘われてボクは佐久間さんの家に行きました。
佐久間さんはボクを心配してくれていました。
「このままだと赤間の体が心配………」「1人で背負い込まないで………」
ボクは大丈夫…なんとかなると言っておきました。本当はその場で佐久間さんに泣きつきたかったです……。
きっと…佐久間さんは最後のボクの味方なんだろうと思います。
耳元で聞こえる声も言います。佐久間を大事にしろ ……と。
この声は……ボクに何を言いたいんでしょう。
最近疲れてしまって………もうわかりません。
早く…阿部を殺さないと………。
9/15 水曜日
阿部は誰にも行方を知らせずに姿を消したようです……。
実家の方にも連絡を入れましたが帰っていないらしいです。
今日、各クラスに誰か行方を知らないか聞くようなったようですが……誰も知らないようです。
……阿部はいったい何をしているんでしょうか。
9/16 木曜日
阿部の家族が警察に捜索願を出したそうです。
……警察まで動き出せば、阿部は変なことをすることもできないのではないでしょうか…………。
これは…少し安心していいのかな?
警察まで動けば………大丈夫じゃないかな………。
浅黄さんの表情も今までよりずいぶん楽そうです。
阿部がいなくなったことはやはり浅黄さんにもよかったんでしょう。
ボクも学校に来て阿部がいないと分かると、ほっとします。
………でも、浅黄さんはクラスの人からは無視状態です。
浅黄さんが辛いなら…学校に来なくても……。でも、ボクは寂しいかも………。
このまま…阿部が永遠にいなくなってくれたら……。
9/17 金曜日
阿部はまだ見つかっていません。
先生の話では警察は何らかの事故に巻き込まれた……という在り来たりな推測がされているようです。
それで十分です…。もう二度と現れるな………。
耳元で今日も誰かがささやきました。
(よかったな)
ボクは思いました。きっとこいつはボクの味方なんだ……と。
でも、その声が最後に聞こえてからは何もいってきません。
相変わらず、ボクの手には見えない糸が絡んできます。
そして、阿部はボク1人では薬を手に入れられないようにしていたのでボクは時々悶えます。
そうすることで阿部はボクを支配するつもりだったのでしょう。
……逆に言えば、ボクは薬をもう手にすることはない………元に戻れると言うことです……。
………………がんばれ。
9/18 土曜日
最近、母さんがボクに冷たくなっていました。仕方がないことです……。
ボクは日増しにおかしくなっていたでしょうし……。ボクは本当のことは言わないし。
だから今日、母さんに言いました。「もう大丈夫」って。
母さんは悲しそうな……でも、嬉しそうな顔で笑って、ついにはそのまま涙を流しました。
……思えば阿部はボクの生活を本当にめちゃくちゃにかき乱してくれた。
阿部がこのまま戻ってこなかったとしても……ボクは元には戻れない。
特に人間関係……学校ではもう、ボクはダメだ…。
それに浅黄さん……もしかしたら、いなくなってしまうかもしれない。
その時はもう二度と会えないだろうな……。阿部がいなかったら……今はもっと幸せだったはず。
阿部……もう現れるな。
9/19 日曜日
今日、佐久間さんが電話をくれました。なんとなく声が聞きたかったそうです。
ボクは今日もずっと部屋にいました。何もしていません。ずっとぼーっとしていました。
そうして時間を過ごしていると、ボクはおかしな気分になります。
でも何もすることもなく、何かをするより楽です。
そんなときに佐久間さんから電話があり、ボクはうれしかった。
佐久間さんはボクを心配してくれる………。ボクは自分の存在を少しでも思ってくれる人がいてうれしい。
…ボクは浅黄さんを守るんだ。例え…ボクの前からいなくなるとしても…それまでは………。
でも…そうしたらボクは………どうなるんだろう?
9/20 月曜日
阿部はいなかった。先生も何も言ってはいなかった。
今日は嬉しかった。戸惑うほどに。
浅黄さんがボクに話しかけてくれた……そして、屋上に僕を連れていった。
「私に関わらなかったら……赤間くん、そんな風にはならなかったのに」
ボクに背を向けて遠くの空を眺めながら言いました。
気にしなくていいよ……。ボクはそう言いました。
「……私はどこにも行かないから…。赤間がいる限りずっと」
……浅黄さんはずっと……ボクに迷惑がかからないようにしていたんだ。
だから…僕を避けて…………。それに…………………。
もう……負けはしない。阿部にも…誰にも……。
9/21 火曜日
今朝学校に着いたとき浅黄さんはもう来ていました。
おはようと声をかけると弱々しいけれど笑顔で返事をしてくれました。
ボクらは元気にやって行けそうだ……。休み時間中話をしていたけれど、佐久間さんも話に加わってくれた。
もう…元に戻ったんだ。いろんなことが元に戻ったんだ。
壊れる前には戻らないけど、前より悪くなったことも良くなったこともある。
佐久間さんはボクら二人にやさしい…。佐久間さんを味方だと思ってたけど…良かった。
きっともう…大丈夫。
9/22 水曜日
今日も良い一日でした。佐久間さんはクラスの女子の中でも人からの信頼も厚かったようです。
ボクは知らなかったんですが……。
だからその佐久間さんを見てだと思いますが、浅黄さんの周りには中森さんや林さんなどが戻ったようでした。
…これで、浅黄さんは一応大丈夫でしょう。クラスの人たちは多少は偏見の目で見るでしょうが…。
ボクの周りには誰も戻りはしません。戻るわけがないんです……。もともといなかったんですから。
そりゃあ…多少は仲が良かったのはいますがもう寄りつきません。
……大丈夫、浅黄さんが大丈夫なら……………。
9/23 木曜日
今日も平和な一日でした。ボクもだいぶ、調子が良い日が増えてきました。
みんな元に戻れる日も遠くはないと思います。
佐久間さんのおかげもあって、浅黄さんはもう大丈夫です。
ただ…ボクが浅黄さんに近寄りづらくなったきらいはあるんですが………。
とりあえず、みんな元気です。阿部が…死んだのかしらないが、いなくなって良かった。
9/24 金曜日
今日も良い一日……のはずでした。
昨日帰ったときから……母さんがいなかった。夜も帰ってこなかった……。
朝になってもいない…………。そして帰っても。
郵便受けに置き手紙を見つけました。
ボクが………………………………ボクが信じられなくなった………そうです。
違うのに……ボクは…阿部に何もしてないのに…………。
母さんは父さんの………単身赴任の父さんのところへ行きました。
ボクは………
9/25 土曜日
ボクは捨てられたんでしょうか………。捨てられたんですよね。
……でも、通帳はそのままあったし…。
………どーすりゃいいんだ。
9/26 日曜日
要はボクが生きられればいいんだ。
誰と一緒に住もうが、要は生きるのに支障がなければいい。
そう教えてくれた。やっぱり……味方だったんだ。うれしいよ。
でも……キミは誰?
9/27 月曜日
今日は普通な日でした。
ボクが生活するのには何も問題はない……。
浅黄さんもクラスの女子とだいぶ溶け込んだようです。
……でも、なにかボクによそよそしくなった…かな。
今日は浅黄さんの誕生日だから、おめでとうぐらいを言ったのですが………。
返事はちょっと…つたないものでした……。
………もしかして、浅黄さんもボクが阿部を殺した…と………………。
い……いやだ……いやだぁ…………
9/28 火曜日
阿部がいなくなって変わったのはボクらだけじゃありませんでした。
クラスが以前より元気な気がします。阿部は地下に根を張り、全体を統率していたんです。
ボクはずっと踊らされていたんです………。
そして、阿部がいなくなっても……今度はボクが疑われている。
浅黄さんにだけは………そんな風に思われるなんて……………。
9/29 水曜日
ボクはなにをしたいんでしょう………。
だって、浅黄さんはボクにまた冷たくなってしまった。
ボクを傷つけまいと……思ってたんじゃなかったの………?
…楽しみはない。なんで生きてるの?
もともと紐みたいな生物がここまで進化したけど、なにがしたいの?なんなの?
広い宇宙の小さな青の点で…何がしたいの?なんで生きてるの?
………疲れた。
9/30 木曜日
ふぅ………いいことを教えてもらいました。ボクの味方がささやいてくれました。
人間ってなんですか?生命ですって。生物。
生物は何のために生きている?種の保存。
だから…人間は生きることだけ考えていればいい。
まず第一に自分が生きることを。その方が楽ですね。
さすが……ボクの味方……。ありがとう