赤間



11/1 月曜日

今日は佐久間さんは来ませんでした。残念です。
短い時間になってしまったけど、佐久間さんといるときボクは幸せです。
安らぎを感じる…。ボクの全てをゆだねたく…捧げたくなる。
ボクは未だに浅黄さんのことが……好きです。大好きです。
でも今のボクは……どうでしょうか。
浅黄さんを諦めることはできそうにない……
そして佐久間さんから離れたくな……離れられない。もう離れられない。

昨日会ってその後も、ボクは寂しくて切なくて仕方ない。
佐久間さんから離れたくない。
こんなボクはきっともう浅黄さんから心が…気が無くなっているのかもしれない。
自分が少し…嫌になっています。


11/2 火曜日

たった一日…会えなかっただけでもボクは苦しかったけど
今夜佐久間さんに会えて…そして、一緒にいられて嬉しかった。
たった二時間程度…だったけど……時間の流れが速すぎたのが残念だった。
短い時間の中で…佐久間さんの家族のことを聞いた。
微笑みながら涙を流して、話していた。佐久間さんの涙がボクの顔に落ちてきていた。

佐久間さんのお母さんは………一昨年に行方不明になったそうです。
警察に届けを出してしばらくしてから手紙が来たそうです。
筆跡は間違いなかったそうですが一度書いたのをコピーしたような物だったそうです。
内容は心配しなくていい……その程度。
しばらく手紙は続いてそうです。そして去年の初めには手紙が途絶えた。
いなくなってから、漢字だけの…手紙……きっと中国語の手紙がたくさん届いたそうです。
佐久間さんのお父さんは、貿易会社をやっているそうですが…中国がその時は多かったとか。
それから…その後、お父さんは中国に渡りつい最近帰ってきた……らしいです。

佐久間さんのお母さんがどうなったかは…わからないそうですが
帰ってきてくれる家族がいるのはいいな……。
………お母さんが行方不明…辛いでしょうね……。


11/3 水曜日

11月になってから、だいぶ寒くなりました。
今日は珍しく、全てに対して昔のようだった。なにもなかったあのころのボク……。
なにより、周りを見ることができるようになったようです。
自分・佐久間さん・浅黄さん……この範囲外がほとんど昨日まで見えていなかった。
現状を把握できる…。今、クラスの男子は変化無し。女子は前よりは友好的…だ。

結局は佐久間さんのおかげでボクと浅黄さんは救われたんだと…思いたい。
今は以前より正気だから分かる…のかもしれないけど、ボクは…救われたのだろうか……。


11/4 木曜日

一昨日も昨日も今日も佐久間さんに会ってない。
ボクは佐久間さんに会いたい。一緒にいたいずっと一緒にいたい。

…なんで、なんできてくれないんだ!きてほしいのに!ずっといっしょにいたいのに!!
あなたの微笑みだけで救われるのに………あなたの暖かさだけで安らげるのに………
お願いだから……お願いだから…………


11/5 金曜日

今日やっと、ボクは佐久間さんと過ごすことができました。
たった一時間くらいだった。あんまり話もできなかったし…だけど、嬉しかった。
さっきまで会っていた………。でももっとずっといたい。とても寂しい……。
……寒くなってきた夜、この前までのように佐久間さんと夜を過ごしたい…………。
………涙が流れる…………さびしい
もっと、もっとずっとずっと佐久間さんといたい。他を全部捨てても…………


11/6 土曜日

さびしい………佐久間さん………
学校には佐久間さんに会いに行くためのようなもの
でも…変に思われるからあんまり近寄らないで………って
佐久間さんからそう言われてしまった……。
でも佐久間さんとずっといたい ずっといたい


11/7 日曜日

佐久間さんは午前中からボクのところに来てくれた。
四時間くらいボクは佐久間さんと一緒に過ごしました。
写真を撮りました。友達に見せるって。
ボクは少し戸惑いましたが、撮らせないともう来ない………なんて。
佐久間さんにボクはいつまでもボクを大事にして欲しいとお願いしました。
もちろん………佐久間さんがそう言ってくれてボクは安心しました。

佐久間さんにやさしくしてもらって、抱きしてもらって、ボクは幸せです。


11/8 月曜日

佐久間さんは今日も来てくれた。ただ、今日はいつもと違った。そして明日も違う。
ボクの手に付くものがある。前のように降りかかる糸なんかじゃない。
そして心の中で疼くものが……奴がいる。
お前に用はないのに…………なにか気持ちが変になる。
不安が増す。安らぎが消える。

この手に付くもの……正確には手の自由を奪うものは…………なんで。
気が付いたら……目が覚めたらあった。
どういうことなのかわからない……。
ただこのままだとボクは一歩も家から出られない……。
わからない。


11/9 火曜日

結局今日は学校には行けなかった。佐久間さんは30分程度しか家に来なかった。少し悲しい。
ボクの手には未だに自由を奪うものが……。手錠が……。一応の生活には困らないけれど………。
そして昨日思った通り奴はボクに語りかけてきた。これでいいのか……って。
今の状態が確実に普通ではないことはわかる。
ただボクにとっては正常だと思って…………いい。
当初の目的…浅黄さんを助ける……これも果たした。
そして今、ボクにはもう家族もそばにいない………いいじゃないか安らぎを求めても。

………お前になにが分かる。ボクは幸せだ。
例え今日、佐久間さんが少ししか来られなくとも…またいつか来られる日を待って……
その幸せにいきる………ボクは幸せだ。
幸せなんだ。


11/10 水曜日

今朝、佐久間さんから電話がありました。学校が終わったらボクの家に来る……。
ボクは楽しみに待ちました。家にいてもそれほど暇ではありません。
この手にかかっている手錠で佐久間さんの存在を感じることができるから…………。
でも寂しさは増すばかりでした。
夕方、佐久間さんが来たときにはボクはうれしい限りでした。
でも今日もすぐ帰ってしまいました。手錠を外すとすぐに。
それに佐久間さん…あんまりボクと話をしてくれません。
帰り際に「明日学校に来てね」と言われました。
行きますよ。どこへだって。当然ですよ。あなたと一緒ならどこへだって。


11/11 木曜日

学校に行ったら………机がなかった。いや、無いはずはない。
だって、二日三日行かないだけで………そんなことは……先生だって………。
呆然と立っていたボクに男が1人………「誰だよお前」
はっと相手の顔を見ると…あざ笑っている。周りを見ると他の奴らも睨んでいる。
ボクはそこから立ち去るしかなかった……。
ボクは帰った。焦った。一体…なんなのか。
家に帰ってからも怖かった。ずっとベッドの中にいた。ずっと震えていた。
ずいぶん経ってボクはいつの間にか寝てしまっていた。
バシン!と大きな音がしてボクの部屋の扉が開いた。ボクは飛び起きた。
目の前に……あの時見た時と同じ佐久間さんの顔が…あの不敵になにか恐ろしさのある顔があった。
ボクはベットから出ようとして前屈みになった。その時…佐久間さんはボクに蹴りを入れてきた。
壁に頭を打ったボクが見た佐久間さんの顔はもう笑っていなかった。
睨み付けられたボクは突然のことと恐怖で固まってしまった。
佐久間さんは更にひっぱたいたり踏みつけたりと…ボクはなんなのかわからなかった。
最後にボクは床に倒れていた。手にはまた手錠がかけられた。そして足にも何か付けられた。
うまく歩けない。

もう学校には行けない………学校だけじゃない。ボクはこの家から出られない……。
ボロボロだ………。ボクは今また、明日くる佐久間さんに恐怖を抱くだけしかできない……。


11/12 金曜日

今日も佐久間さんはボクを殴りに来た。平手じゃなく拳だった。体中が痛い。アザもできた
ボクはなんでこんなことをするのか聞こうとした。けど途中で聞く必要はなくなった。

……つけあがってんじゃないわよ……お前みたいな奴に私が本気で相手すると思った?……
………………あんた危なっかしいから潰したかっただけよ…………
……………ここで大人しくしてなさい…………

大人しくしています。


11/13 土曜日

大人しくしていました。佐久間さんは来ませんでした。
今になってキミの言ってることが正しいって分かったよ。
おかしかったよ……ボクは。でも…だからって……もう手遅れだ。
…そして知ってるんだ……キミがだれだか。
だけど……知ったからって……今後なにが変わるだろう………。

ボクの居場所は………ここしかない。


11/14 日曜日

生鮮食品が無くなった。だからといって買いに行けるボクではない。
保存がきくのが多少ある。しかし、段々食欲もなくなってきた。
悲しくもなくなってきた。この日記が終わる日も近いだろう。
いや、終わり。








11/16 火曜日

日記を書くのをやめるつもりだったけど、ボクは生きたい。
生きたい…何か少しでも自分を見たい…形として……日記を書く。
…言っていた……人間は生きるために生きる………
ボクは1人だった。ボクに聞こえる声はボク自身。独り言………だったんだ。
昔からあったっけ……自分と話をする自分。気が付くと独り言だらけ。
仮面を被ってから、結局1人。友達は誰もいなかった。
キミは……もうこれで現れない。自分を認めたから…

そして…生きたい……。ただそれだけ。ボクはまだ日記をやめない


11/17 水曜日

今日、佐久間が来た。拒むべき存在。
ボクは耐えるだけしかできなかった。情けなかった。

……なにかできないんだろうか。ボクは何かできないんだろうか。
いろいろ考えてみることにした。


11/18 木曜日

…どうして佐久間の態度が急変したんだろう。
佐久間がなぜ態度を変えたのか……。ボクをこの状態にするのが目的…?
だったらなんで?…他には……ただ痛めつけたかっただけとか……。
でもそれなら佐久間の家で十分なんじゃ……。
……頭が痛い。


11/19 金曜日

佐久間が今日も来た。抵抗してやろうと思った。
右足の膝蹴りを横に避けて体当たり…。当たったのはいいけどそれ以上はなにもできなかった。
余計に酷くなっただけだった。
「なんでこんなことをするんだ」
聞いてみた。恐ろしい不敵な微笑みが増すばかりだった………。
なにも変わらない……………助からない…………


11/20 土曜日

電話があった。佐久間の父。
なぜ電話をすることになったのかは分からないけど……ボクのところにくるらしい。
平日の昼に…月曜日だろうか。電話の声はだいぶ弱ったような気がした。
この人はボクを助けると言ってくれたが……本当だろうか。
佐久間同様…いや佐久間の手先として動いているのかもしれない……。
人が信じられなくなったんだ…ボクは。そうか………。
とりあえず…待つしかない。


11/21 日曜日

今日は佐久間は来なかった。
多分…明日来るんだろう。佐久間の親父さんは………。
もしも…もしも助かるなら…どうなるんだろう。
家から出られなくなってどれくらいかな……………。
事実上…親に捨てられたのかな。母さん…どうしてるかな。
父さん…大阪だったかな…たしか。
あぁ……………助かるのか……。


11/22 月曜日

今日は結局、誰も来なかった。
いい加減疲れてきた。絶望的な気分もなにか薄らいでいる。
佐久間が来なかったと夜になって思い、夜だけ安心できる。昼は疲れる。
食料もかなり厳しい。もうそろそろダメだろう。
佐久間の親父さん…来なかったな。どうしたんだろう。
明日は来るんだろうか………。

今さらだけど…警察とかっていたな………。
明日ダメだったら……。
そうだ。そうすれば、佐久間も……なんで気づかなかったんだろう。
バカだな……。


11/23 火曜日

昼頃、…まぁ、彼と呼ぶとして…佐久間の親父さんがきた。勤労感謝の日だった事を忘れていた。
ボクを見てずいぶん憐れみの目で見ていた。さっきで鏡をみたけど、ずいぶんやつれてたし、アザも目立った。
あの人が入ってきて、ボクは初めなにを話せばいいのか分からないでいた。
話は彼の方からしてきた。
「…私のせいで……すまない」
かなり苦しそうに言っていた。この人の顔もかなり疲れているようだった。
ボクの手錠を外そうとしたけど、外れなかった。足の方も。
「あんな娘になってしまって……君にとんでもない事までして」
何度もそう繰り返していた。
それから今までの事を聞いてきたのでボクはだいたいを話した。
彼はずいぶん辛そうに聞いていた。これならボクを助けてくれるかも…とその時思った。
「私の家に来ないか?…娘はもういない。君は家族が側にいないようだからしばらくの間だけでも…
 ここにこのままいると、また娘が来るかもしれない」
ボクはどうして、佐久間がいないのか聞きました。…けれど、それには答えてくれませんでした。
答えてくれなかったことでボクは彼を不審に思いました。
「そんなことを言って…玲のところへ連れて行くつもりなんじゃないんですか……」
ボクがそう言うと彼は考え込みました。沈黙がしばらく続きました。
「本当に玲はいない…先週君のところへ来た後、いなくなったらしい……
 今はまだ話せないが…わたしも辛いんだ。頼むから…分かって欲しい」
本当に辛そうでしたけど…信用できるわけじゃない。ボクは断った。
ただ、食料や手錠を何とかしてくれることを頼んでおいた。
この人が本当に信用できるのか分からない。どうだろうか……。
ただ、なんとか助かるのかもしれないです。
結局は…先は見えないまま



11/24 水曜日

彼は今日も来てくれた。
佐久間玲…玲の部屋から鍵を探してきたらしく、手枷・足枷を外してくれた。
「私のところへ来る気はないか………」
何度も誘われたがボクは断った。まだ信用できない。
食料もいろいろ持ってきてくれた。これで当分大丈夫だ。
「なんであなたはボクにこんなことをしてくれるんですか?」
ボクが聞くと彼はすぐに答えた。
「……君は娘の…玲のせいで学校にも行けなくなったんだってね……
 娘があんな風になってしまったのも……私のせいだと思っているからだ…」
今日はそれで彼は帰った。

これからどうしようか。自由になれた。もうここに留まる必要もない。
……どこにいったらいいんだ。


11/25 木曜日

今日は誰も来なかった。
夕方、佐久間の家に行ってみた。この時間なら普通は玲は帰ってるはずだけどいないようだった。
だからといって…わからないことだ。
これからどうしたらいいのかいろいろ考えた。
まず…学校には行けない。両親は……もう頼れないと思う。
佐久間の親父さん…彼はどうなんだろうか。信じられるんだろうか。
逃げる場所もないな………どうしようか。

………
…………

…………ふと…………ふと不安がよぎった。
まさか……まさか浅黄さん。浅黄さんまだ…まだあのままとか。
だとしたらとんでもない!ボクは…ボクは何もできなくて…浅黄さんを……。
…もしも……もしもそうだったら……ボクは………


11/26 金曜日

予想は当たってしまっていたようだ……。
今日、彼が…佐久間の親父さんが来たので聞いてみた。
ボクにそのことを何時聞かれるか不安だったらしい。…戻ってきたあの日からの事を話してくれた。
帰ってきた日、玲の行動がおかしいのが一目で分かったらしいが、久しぶりに家に帰ったので喜んでいたらしい。
そしてボクが急いで帰るのを見て玲の行動の異様さを知ったそうだ。その時は男を連れ込んでいるかも…と。
その後いろいろ娘と話すうちに…佐久間のおかしさを感じていき………
ある日、あの部屋を見つけた。中に玲と浅黄さんがいるところを。
感情が見えないような浅黄さんを無理に帰して玲と話したが……。
初日に見たボクの事や浅黄さんの事をいろいろ聞いてやっと今の娘…玲を理解したそうだ。
しかしなぜああなったのか…全く分からないと言う。
そして数日前…佐久間はいなくなった。…あの部屋にあった物も二、三点なくなっていて…
書き置きが一言、残されていて
「さようなら」

ここまで聞いてわかったことなのだが…彼はボクがこのような状態だとは知らなかったらしい。
電話をしたときも…そういえばただ、来るといっただけだった。ボクをみての驚きもそうだったのか……。
ボクはこの人を信じることにした…。佐久間の家に行く。
しばらくはそこに厄介になろうと思う。


11/27 土曜日

ここは佐久間の家。ノートは携帯できて便利だ。
ボクはあの部屋とも、佐久間の部屋とも違う別の部屋を使わせてもらっている。
ここに来たけれど、ボクの目的は食を確保することだった…。
だからボクの生活はあまり変わらない。学校にもいかないし…家からも出ない。
学校に行かないことに…彼からつっこまれたが本当の事じゃない別の理由を言っておいた。
あれが佐久間の仕業だとは分かるけれど、彼もずいぶん辛そうだから…言わない方がいいと思った。
彼が会社に行く前、ボクに言っていったことがあった。佐久間の部屋は見るなって。
見ない方がいい。君のためだ……って。
やはり自分の娘だから部屋を見られたくないそうです。見ませんでした。

今日は初めてこの家で生活しましたが、毎日を生きる分には不都合はなさそうです。


11/28 日曜日

気になったので浅黄さんの家に電話をしてみました。浅黄さんのお母さんが出ました。
「赤間ですが…」と言ったとたん、電話は切られました。
あぁ……。

彼…佐久間の親父さんは、今日も会社に行きました。小さな貿易商ということで忙しいようです。
本棚にあったアルバムを拝借して見てみました。小さな頃の玲の姿がありました。
この前見たのとは目の輝きが違うようだ…。玲のお母さんの写真もありました。きれいな人です。
あちこち、写真がはがされていました。なんの写真なのか少し気になりました。
他に、結構真面目な本を読んだりして一日を過ごしました。多少暇です。
自転車…とってこようかな。ボクは自転車が大好きだから。

あぁ……。
浅黄さんは学校に行っているのかな……。佐久間が消えたってことは他の誰かに…なんてことは……。
……あぁ。


11/29 月曜日

学校ではそろそろ…期末テストでしょう。数学はきっと微積あたりかな…。
当たり障りの無かった今年の春が懐かしい。深い友達はいなかったけど、あの頃は良い奴だった阿部がいた。
……阿部か。この寒空のした、どこかの土の下にいるんだろうな……。きっと、この家…佐久間家の庭だろう。
さすがに死んでしまうと…可哀想になる。ははは……ボクも殺そうとしたんですけどね。

あぁ…今日も時間は過ぎていく。


11/30 火曜日

今日は忌まわしき佐久間の部屋に入った。ボクは嘘のように元気だったから。今思えば空元気だった。
ボクは約束を破るのも何とも思わず、ただ部屋のドアを開けた。
ドアには鍵があったが内側からしかかけられないものだった。
中には忌まわしき物があった。忌まわしきベット。忌まわしき机。忌まわしき壁。忌まわしきクローゼット。
いろいろ探したが、特になにも見あたらなかった。佐久間の部屋には……その部屋には。
隣にもう一つ部屋があった。そこは玲の親父さんの書斎だった。
地方の中都市とはいえ、書斎がある家などそうあるものではない。
本棚があり、ボクはなにか興味があるものはないかと探しました。
ふと……机に目がいきました。なんとなく、引き出しを開けていきました。
中央の広い引き出し……右側の上の段から ひとつ………ふたつ……。

封筒が一通だけ入っていました。なんとなく…見てしまった。
「さようなら」     確かにそこにはそう書かれていた。だがそれは…題名のようなものに過ぎなかった。

文体は明るく楽しげなもの……玲が見つめる未来は明るいものだろう…………。
内容はこうだ……。

 お父さん、お帰りなさい。帰って早々だけど、私はもうお父さんと一緒にはいたくないの。
 結局、長い間家を空けていたけど何もできなかったんでしょう?
 無力な男って最低よ。どこかの誰かもだったけどね…ふふふ☆
 だから…私を止める事なんてできないでしょう?さようなら。
 
 私は私の大事なものと一緒に、一緒に、一緒に、ずっと暮らします。
 どこにいくか分かる?分かってたらお母さんも今頃……いたのかもね。
 私の大事なものはもう手放さないからね。

 P.S. お父さんがもし来たら、殺しちゃうからね☆
そうそう、庭を改装するのはやめた方がいいよ。どこかの誰かが出てくるから。

これを読み終えたなら…もしボクと同じ境遇なら誰しも分かるだろう。
佐久間玲の…大切なもの大事なもの手放したくないもの。

あぁ……こんなもの……見ない方が幸せだったかもしれない…ボクだけは幸せでいられたかも。
見た以上は……………………………………しなければならない。
帰ってきた彼にはまだ話していない。……さぁどうする?くははは……………………………。