daisydaisyの「2001年」論〜邪推

「2001年宇宙の旅」に関する私の推理、、、というよりは、単なる邪推です。
ここでは、基本的に映画における内容、描写のみを参考にしているため、
小説「2001年」や続編などと比べた場合に相違が見られるかと思います。
これらの点を考慮に入れてお読み下さい。

フロイド博士の「亡霊」

 この映画の中で、人間は三度モノリスに接触する。
始めに接触したのは、400万年前の猿人たち。彼らはモノリスとの接触により、道具という概念を生み出した。
2度目に接触したのは現代の人類だ。月面から掘り起こされたモノリスは、調査にやってきたフロイド博士一行の目の前で突如として反応を起こし、それが18ヶ月後の木星探査計画に大きな影響を与えることになる。
3度目に接触するのは、木星にたどり着いたデイヴィッド=ボウマンである。彼はモノリスとの遭遇により、生老病死を越え、新たな姿で蘇ることになってしまった。

 一般的に2度目の接触(特にフロイド博士一行)では、モノリスが強烈な波動を発した反応は、木星付近にある巨大なモノリスに向けての信号を送るためとされている。しかし映画では、波動の発生シーンから18ヶ月後のディスカバリー号へと場面がジャンプする。その間の経過や波動の正体はもちろん明かされず、木星探査(険)計画とモノリスとの繋がりは、HAL9000がボウマンにほのめかす「本当の目的についてのうわさ」、そしてHALが活動停止させられた直後に流れる「フロイド博士の録画メッセージ」のみが、二つを結びつけているに過ぎない。

 考えてみると、1度目の接触と3度目の接触が進化に影響しているのに対して、2度目の接触については(映画の中では)あまり細かく触れられておらず、モノリスの役割もただ月から木星への伝令にしか過ぎないというのは、かなり妙である。ひょっとして、ここには物語の構成に関する、重大な秘密が隠されているのではなかろうか、、、
ここで私は、

フロイド博士一行は、モノリスの反応である種の進化を遂げている可能性がある

と推理し、ディスカバリー号にて起きる事態の背後には、「進化したフロイド博士」の関与があるとの見方ができることを発見した。

 ではフロイド博士一行は、いかなる進化を遂げたと考えられるのか。
モノリスの反応にさらされたときの状況については、波動によるヘルメットのスピーカーの発振で全員が頭を抱えて苦しむという光景しか描写がない。その次にフロイト博士が現れるのは、HALが活動停止した直後のビデオメッセージである。もちろん2度目の接触で進化を遂げていれば、この姿は「進化したフロイド博士」の姿であるはずだ。
 フロイド博士が進化しているのであれば、1度目の進化や3度目の進化が甚だしく人間のあり方を変えてしまうように、フロイド博士も人間の範疇を逸脱してしまうほどの変化を遂げているはずである。もちろん、宇宙評議会のメンバーでいられるはずもなく、著しく人間離れした能力か姿のため、人間社会の外側へと(人の目に付かないように)姿を消してしまっているだろう。
 とすると、HAL9000の心臓部のモニターに現れたのは、なぜフロイド博士の姿は「人間のまま」なのだろう? 僕の答えはこうなる。

「モニターに映し出されたのは、電子化されてディスカバリー号に封じ込められたフロイド博士の”自己イメージ”である」

 フロイド博士一行は、モノリスの発する強烈な波動にさらされ、「肉体を持たない電子的な生命体」、言ってみれば「亡霊」のようなものと化したと、僕は考えた。
そう仮定すれば、一行のうちのフロイド博士の「亡霊」は、その後木星に向けて出航したディスカバリー号のどこか−おそらくHAL9000の一部だろう−に寄生し、木星有人探査を「モノリスへの巡礼」へと変貌させた、、、という見方もできる。

 また、HAL9000の一連の変調にも、電子化したフロイド博士が絡んでいる可能性が非常に高くなる。電子化された生命体がコンピューターに寄生すれば、生命体はコンピューターをいとも簡単に操ることができるだろう。しかもおそろしく高速で、人間以上の思考が可能で、機械全体を支配できる状態なら、スキを見て乗っ取れればそれを「自分の体のように」使うことができるはずだ。
 HAL9000コンピューターは、史上最高のコンピューターとして描かれるが、もし最高のコンピューターならば、コンピューターウイルスやワームなどを侵入させるスキなど与えないはずであろう。しかし、人為的に作られたウイルスのような程度の低いプログラムではなく、高度な知能を持った生命体であれば、侵入できる可能性はより高くなり、場合によっては乗っ取ることもできるかも知れない。
 フロイド博士の「亡霊」は、とりあえずはHALに侵入して、一部分に寄生できただろう(そうでなければ、ディスカバリー号を導くことが出来なくなる)。だが、「亡霊」はHALを乗っ取る段階までは到達できなかったと思われる。何とかHALの任務内容を攪乱させ、邪魔者を消すように仕向けることは出来たが、HALの手を間接的に使ったに過ぎず、かりそめの器であったHALを封じ込められたことによって、「亡霊」も同時に追い込まれたようだ。最後の手段として、「亡霊」は自分の「生前の」自己イメージを用いて、ただ一人残ったボウマンに最後の望み(停止したHALに残存した「亡霊」が、モノリスの元へたどり着くという望み)を託し、モノリスに再び出会う日を待ちつつ眠りについた、という具合だ。モノリスに接触し、進化を遂げたのはボウマンの方ではあったが、、、

 ここまで考えたのはいいが、なぜモノリスとの接触で進化したはずのフロイド博士が、再びモノリスへの接触を望んだのかが宙ぶらりんになってしまう。もう少しここら辺について考える。
肉体をなくして「亡霊」になるという進化は、3つの進化の中で一番急激な変化であり、それでいて中途半端な変化でもある。1度目は知能が高められ、肉体は保たれていた。3度目はおそらく、肉体と知能両面に変化が現れたものと思われる。しかし肉体をなくし、精神のみとなるという変化はどれほど有益なのだろう。たといそれが有益な変化であったとしても、人間はより高い段階への進化を望むだろうが。


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