VEGA MOVIE AWARD'02



2002年に観た映画たちは、141本。
このアワードは、自分勝手に賞を設定、勝手に祝うという自己満足な賞であります。
※今回の対象作は2001年1月1日〜2002年12月31日までに劇場公開された作品です。

それでは、各部門の発表であります!!

「VEGA MOVIE AWARD’01」はこちらから。
「VEGA MOVIE AWAED’00」はこちらから。





●外国語映画部門
■作品賞 『バーバー』
■主演男優賞 ビリー・ボブ・ソーントン 『バーバー』、『チョコレート』
■主演女優賞 シャーロット・ゲンスブール 『まぼろし』
■助演男優賞 ダニエル・デイ・ルイス 『ギャング・オブ・ニューヨーク』
■助演女優賞 ケイト・ブランシェット 『バンディッツ』、『耳に残るは君の歌声』
■監督賞 フランソワ・オゾン 『まぼろし』、『8人の女たち』
■脚本賞 ジョン・キャメロン・ミッチェル 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
■音楽賞 スティーヴン・トラスク 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
■撮影賞 ロジャー・ディーキンス 『バーバー』
■衣装賞   『8人の女たち』
■SFX賞 リチャード・テイラー 『ロード・オブ・ザ・リング』
■優秀邦題賞 『天国の口、終わりの楽園。』

今年も頭を悩ませてくれた外国語映画部門。
如何に悩んだかは、ベストテンの次点を見ていただければ分かるかと…。
それはさておき、2002年の傾向として、ハリウッド映画の衰退がいえるか
と思います。やはり、映画はCGの見せ掛けだけではなく、ストーリーやテ
イストが全てであると考えます。そういう視点で選んでいった次第です。

2002年の作品賞の戴冠を授かったのは、『バーバー』であります。
何だアメリカ映画じゃんって思われるかもしれませんが、アメリカでもイン
ディーズ畑のコーエン兄弟の描いた一大傑作なのです。平凡な理髪店で
働いてきた男。ちょっとした夢を実現しようという選択をしたばかりに、奈落の
底に突き落とされていく展開がシュールでもあり、リアルであった。人生賛
歌ではなく、人生悲喜交々というテイストも可笑しさがありました。

主演男優賞は、その『バーバー』と『チョコレート』のビリー・ボブ・ソーントン。
両作品共に孤独さ、哀愁を背負う物静かな男を見事に演じきっていました。
語る演技というより、仕草・雰囲気だけで圧倒的な威圧感がありました。

主演女優賞は、シャーロット・ゲンスブールに。『まぼろし』では、愛すべき夫
を突如失った妻の狼狽ぶり、現実を飲み込めない姿、そして何よりも、夫の
幻影を追い求め、彼を愛し続ける直向さは演技を超えた演技でした。「あなた
軽いのよ」というセリフ。とてもとてもインパクトがありました。

助演男優賞は、ダニエル・デイ・ルイス。5年ぶりの復活を遂げた『ギャング・
オブ・ニューヨーク』。ネイティブ・アメリカンの排他的で破滅的、残虐さをも兼
ね備えている男の力強さをヒシヒシ感じさせてくれる名演技。彼の復活は非
常に嬉しく思います。早くも次回作が気になります。

助演女優賞は、ケイト・ブランシェット。『バンディッツ』では2人の男を手玉に
り翻弄する姿。『耳に残るは君の歌声』では、上昇志向の強い高飛車な女と
両極端な役柄を演じ分けたカメレオンぶりは凄い。

監督賞は、フランスの気鋭フランシス・オゾン。彼のキャリアの到達点ともいえ
るのが『まぼろし』。どちらか言うとキワモノ系の監督と言われてたのだが、オ
ーソドックスなドラマでありながら、困惑する1人の女性の姿を丹念に描き切っ
た腕前はさすが。また、『8人の女たち』の遊び心溢れる映画も撮りながらも、
彼のキワモノの視点は忘れていないところも素晴らしい。

脚本と音楽の2部門を獲った『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。
自分の片割れを追い求める自分探しの物語をロックミュージックで彩り、また
辛らつながらも希望へと着地させたオリジナリティ溢れる脚本が見事。

撮影賞は、カラー画像の色を落としてわざわざモノクロにし、その白黒の世界が
主人公の哀愁と相俟った奥行きのあるものとなったのは目を見張りました。

衣装賞は、8人のフランス人女優達をキャラクターに相応しい服の数々で彩り、
観ている私たちをも楽しませてくれた『8人の女たち』のに。

SFX賞は、CGと映像の見事な融合でファンタジーな世界感を見事に表現した
『ロード・オブ・ザ・リング』に対して。次回作以降もとても期待がかかります。

そして、優秀邦題賞は『天国の口、終わりの楽園』に。映画全体のストーリー展
開を的確に捉えたタイトルであった。原題のままというのが多い中、邦題タイトル
でのリリースに期待したい。


●日本映画部門 

■作品賞 『ハッシュ!』
■主演男優賞 高橋和也 『ハッシュ!』
■主演女優賞 片岡礼子 『ハッシュ!』
■助演男優賞 田辺誠一 『ハッシュ!』
■助演女優賞 秋野暢子 『ハッシュ!』
■監督賞 橋口亮輔 『ハッシュ!』

今年は1本の一大傑作の登場で、日本映画に対する眼差しが変わった1年でした。
それが、『ハッシュ!』であります。

ゲイの2人、自虐的で孤独、世間に突っ張って生きている1人の女。彼ら3人が子供
が欲しいという女の発言で様々な騒動に巻き込まれていくのだが、そこで描かれる
のが、人間模様の数々。孤独、友人、生き方、世間体などなど3人のライフスタイル
は一種独特ではあるのだけれど、どこか1つは共感できる場面が絶対ある作品。
私はこの作品で、笑って、泣けて、考えさせられる素晴らしい作品だと思っています。
正直に言えば、2002年に141本観た映画の中で、真のベストは『ハッシュ!』なの
です。(だから、リニューアルしたHPのタイトルも『ハッシュ(英語ではHush)!』にし
たのであります。)

それに携わった役者、監督全てが受賞ということになりました。
役者では、片岡礼子という人の演技が抜群に上手い!あれだけ野暮ったい雰囲気を
醸し出すだけでも役に没頭しているなと感じさせられたし、台詞回し、仕草とどこを見て
も文句が付けようがないくらいでありました。


●最悪映画部門 

■最悪作品賞 『アイ・アム・サム』
■最悪男優賞 ハリソン・フォード 『K−19』
■最悪女優賞 へザー・グレアム 『キリング・ミー・ソフトリー』
■最悪監督賞 ジョージ・ルーカス 『スターウォーズ エピソード2』
■最悪脚本賞 ジェシー・ネルソン、クリスティン・ジョンソン 『アイ・アム・サム』
■最悪音楽賞 ジョン・ウィリアムス 『スターウォーズ エピソード2』

恒例のワースト部門であります。
こちとら自腹で観る訳で、ハマり映画に対しては難癖つけないと…。
と言いつつ、選ぶのは非常に楽しくもありムカつくところもありまして。

さて、2002年のワーストな作品賞は『アイ・アム・サム』でした。
ご贔屓俳優のショーン・ペン、子役のダコタ・ファニングの熱演は見事ではあると思う
のですが、如何せん身障者が子供を育てる内容にしては甘すぎる気がしてならない。
主人公の自立も難しい上に、最後は「愛は勝つ」というリアリティの欠如も甚だしい安
直なラストシーンに憤り以外何も感じませんでした。安直という意味では、泣かせに走
る演出もどうかと思われましたし。世間的に「泣ける映画=良い映画」という誤解を解く
ためにも、この作品をワースト作品賞に選出しました。当然、具にもならない脚本を書い
た2人の脚本家にもワースト脚本賞を差し上げます。

男優部門では、ハリソン・フォードが。
彼に対しては、過去からずっと大根役者だと思っていた私でありますが、『K−19』に
おいてそれが露呈してしまったと言えるでしょう。厳格な潜水艦長として乗り込んだの
だが、自分の横暴さが部下を放射能汚染に巻き込む失態となったのだが、その過ちを
犯した痛みが少しも感じ取れない上に、ストーリーを感動作に導く先導役になっただけ
というのはどうかと思わされたし、単なる能なしという程度の演技。無意味なロシア訛り
も不要でした。彼にはインディ・ジョーンズみたいなお気軽な役がお似合いってことです
な。

女優部門では、へザー・グレアム嬢。
旦那を捨て、SEXに走る女を熱演。性格より体っていう中身の薄い役どころであるけど、
自分の体を惜しげもなく見せるだけに終始した演技(艶技??)は唖然とさせてくれまし
た。今後は脱ぎ系女優になるのか?(…っていうか元々脱ぎ系?)

監督と音楽では『スターウォーズ エピソード2』が。
SFX、CGというビジュアル面では圧倒的な力を見せつけるルーカスでありますが、如何
せん人間ドラマの演出となると学芸会レベルであるのを露呈してしまったようです。アナキ
ンとアミダラとのラブストーリー、あんな陳腐で恥ずかしくなる演出がよくできるなと違う意味
で関心させられたことに対しての受賞となります。正直、エピソード1〜3はやるべきじゃなか
ったのではと感じます。エピソード4〜6の輝きが日々薄れていきそうでして…。一方、音楽も
新味のないシンフォニーの数々で聴いていても面白みを感じない点に対して。




●べガの2002年ベスト10

・外国語映画ベストテン

1位 『バーバー』
2位 『チョコレート』
3位 『ロード・オブ・ザ・リング』
4位 『まぼろし』
5位 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
6位 『鬼が来た!』
7位 『マルホランド・ドライブ』
8位 『トンネル』
9位 『ノー・マンズ・ランド』
10位 『春の日は過ぎゆく』
次点 『息子の部屋』、『活きる』、『ナショナル7』、『イン・ザ・ベッドルーム』、
『es エス』、『アバウト・ア・ボーイ』、『ロード・トゥ・パーディション』、
『モンテ・クリスト伯』、『マドモアゼル』、『8人の女たち』、『アイリス』

『バーバー』は外国語映画部門で述べたので割愛。

『チョコレート』は、同じ境遇の孤独な男女がお互いを求め、愛し合う展開が痛くも美しい。
特に意味深いラストシーンがとても印象深く、私は好きな1本でありました。

『ロード・オブ・ザ・リング』は、ファンタジー映画の基本でもある「ドキドキ感」に満ち溢れてい
た。次がどうなるのか子供心に戻って楽しめたし、壮大な世界観にもただただ圧倒された。
3部作が並んだ時、どんなサーガになるのか今から非常に楽しみです。

『まぼろし』は、失った夫の姿を追い求める妻の直向な愛の物語。直向さと愛情の深さ、愛は
終わらないという姿を丹念に描いている演出と役者に圧倒された1本。

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』も外国語部門で述べたので割愛。

『鬼が来た!』は、日中戦争最中の中国の農村での農民と日本軍隊との交流を描く作品と思
わせつつ、後半の阿鼻叫喚の展開には言葉を失くした。究極のリアリズムがこの作品には宿
っている。日本人俳優の香川照之の熱演も見事でした。

『マルホランド・ドライブ』はこれぞデヴィッド・リンチの真骨頂が発揮された作品。
兎に角、不条理で「何じゃこれ?」な世界観な話だけれど、この人だから許される映画である。
ミステリアスな展開と同時に、ナオミ・ワッツとローラ・エレナ・ハリングの存在も印象的。

『トンネル』は、東西ドイツを遮断したベルリンの壁の下にトンネルを掘るという実話をエンター
テイメント化した作品。実話だから感じる重みと3時間近い内容を締りのある作品に仕上げた
手腕は素晴らしい。

『ノー・マンズ・ランド』は、ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争地帯でのブラックユーモアあふれる
反戦映画。笑える場面が多いのに、笑うのに躊躇する場面もいくつかあった。

『春の日は過ぎゆく』は、等身大の恋愛映画。どこにでもありそうな1つの恋模様を描いてい
るリアリティもいいし、映像美にも酔いしれることのできる作品。


・日本映画ベストテン

1位 ハッシュ!
2位 突入せよ! あさま山荘事件
3位 とらばいゆ
4位 A2
5位 まぶだち
6位 陽はまた昇る
7位 ピンポン
8位 クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦
9位 たそがれ清兵衛
10位 KT

『ハッシュ!』は、日本映画部門で語ったので割愛。

『突入せよ!あさま山荘事件』は、あくまでも警察機構内のドラマに焦点を絞ったので緊張感ある
ドキュドラマとなった。また、人間臭い場面の数々が笑いを誘ってくれた。

『とらばいゆ』は、『ハッシュ!』もそうであったのだが、会話でストーリーがどんどん進む映画。2つ
のカップルの夫婦関係が妙にリアリティが感じられた。言葉で語るものほど現実味がある。

『A2』は、オウム真理教(現:アレフ)の内情を描いたドキュメンタリー。オウムの信者たちの人間ら
しい姿に驚く以上に、実は反対運動を繰り広げる普通の人々の方が怖くなった。真実を知ることの
大切さをも知らしめてくれた。

『まぶだち』は、子供たちの無邪気さよりもそれを締め付ける大人と教師の姿が辛辣だった。

『陽はまた昇る』は、VHS誕生の秘話をTV番組『プロジェクトX』ばりな展開と、製品化を成し遂げ
る男たちの姿を丁寧に描いていた。それと、電機メーカーがどこも実名であったのにも驚かされた。

『ピンポン』は、単純なスポ根ものと思えば十分楽しめる作品。あの卓球の場面のスピード感は迫力
満点。

『クレヨンしんちゃん』は、今年も健在。相変わらず面白い。戦国合戦にタイムスリップ、そして人の死と
盛り沢山の内容は、広い世代が楽しめるよう工夫されている証拠。

『たそがれ清兵衛』は、サラリーマン侍の哀愁が痛いほど伝わってくる。主人公の不器用さも愛らしく感
じさせてくれた。

『KT』は、金大中拉致事件を描いた作品。当時の事件の真相にせまる衝撃的な映画。今の時代だから
できたのであろう。


・最悪映画ベスト5

1位 アイ・アム・サム
2位 スターウォーズ エピソード2
クローンの攻撃
3位 スパイダー
4位 キリング・ミー・ソフトリー
5位 ワンス・アンド・フォーエーバー

『アイ・アム・サム』、『スターウォーズ』は既に述べたので割愛。

『スパイダー』は、非常にユルいサスペンス作品。犯人探しの緊張感もなく、御法度ではないかと思われ
るズルい演出の場面もあり、兎に角、映画的に白けてしまった1本。

『キリング・ミー・ソフトリー』は、アメリカで羽を広げすぎたか?チェン・カイコー!!って感じさせられた。
結局、愛が云々以前に、カラダを欲しあう男女の姿以外何も残らなかった。

『ワンス・アンド・フォーエバー』は、ただ戦闘シーンが撮りたかっただけではと思わされた1本。また、ベトナム
兵士も描いた画期的作品とあるが、その描写はペラペラ。終始、アメリカ万歳映画としか思えなかった1本。
 

●総括

2002年は外国語映画部門でも書いたことですが、ハリウッド映画の凋落の1年だった気がします。
確かに『ハリー・ポッター』や『スターウォーズ』など興行的には潤ったかもしれませんが、
映画内容自体はどうかというと、満足のいく代物ではありませんでした。
結局、ハリウッド映画はアイデアの枯渇とCGに翻弄されてしまったからこそ、こうなった気がします。

逆に台頭してきたのは、所謂ミニシアター系と言われる作品の数々。
これら作品が、シネコンやロードショー館でも頻繁に上映されるようになり、ミニシアターという括りは
できなくなってきているように感じます。要は、面白い映画であればどこでもやるよということなのでし
ょう。映画ファンからすると、いろいろな映画が観られる機会が増えるのはいいことかと思います。

私自身のベストテンで、メジャー作品が1本だけというのは初めてかもしれません。
それは当然のことで、私の映画の志向も前に比べれば大分変化してきています。
最近は、専らミニシアターでかかるような作品を優先的に観る傾向になっています。大作系映画はど
うも自分の心を満たしてくれないからです。やはり、いい映画は雰囲気とストーリーの面白いのに限る
というのが持論ですね。

2003年、今年はどんな作品と出会うのか非常に楽しみです。
オフタイムは自分の好きな作品をいろいろ観ていきたいなと思います。