哲人的世界
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ディオゲネスの世界
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いちばん楽しい哲学者。この人ほんと面白い。絶対に真似は出来ないけど、感心します。
ディオゲネス(B.C.404?〜B.C.323?)とは、古代ギリシアの哲学者です。歴史上に「ディオゲネス」という名の人は他にもいるので、それらと区別するために「シノペのディオゲネス」ということもあります(シノペは黒海沿岸の地名)。彼はキュニコス学派(キニク派、犬儒派)の中心人物で、プラトンを初め多くの知識人と交わりました。かの有名なアレクサンドロス大王とも交友しました。常識にとらわれず乞食のような生活を送り、樽に住むなどの奇行で有名でした。
このように徹底した禁欲主義者であったディオゲネスには、数々のエピソードが残っています。その一方、本人が書いた著作は一冊も残っていません…
彼がすごいのは、言うことも人並み外れてるけど、有言実行、やることもしっかり常軌を逸脱してる。人間言うだけならなんでも言える、でも実際にそれを行動に移すのは難しい。その点でこの人は本当に尊敬できます。
ディオゲネスのエピソード
●ある日の午後、ディオゲネスがひなたぼっこをしていると横にアレクサンドロス大王がやってきて、「お前の望みを何でもかなえてやろう」。「そうかい」とディオゲネス。「じゃあそこをどいてくれよ、ちょうど日陰になって困るから」
●ディオゲネスは樽を住まいとしたので「樽の哲人」と呼ばれ、着物は一枚の布だけで、それを身体に巻きつけ、夜はそれをかぶって寝た。あとは、水を飲むためのお椀を一つだけ持っていた。ある日、子供が手で水をすくって飲むのを見て、「まだ余計なものを持っていた」と言ってそのお椀も捨ててしまった。
●ディオゲネスとアリスティッポスは同時代の哲学者。後者は贅沢が何より好きだった。たまたまディオゲネスが野菜の泥を洗い落としているところにアリスティッポスが通りかかった。ディオゲネスが「君も俺のように野菜で我慢すりゃ、何も人におべっかを使わないでもすむのにな」。アリスティッポス、「君だって僕のように人と満足に付き合う術を知ってりゃ、何も野菜の泥なんて洗わなくたってすむのにな」
●海賊に捕まり、クレタ島で奴隷として売り出されたとき、どんな仕事ができるのかと訊ねられて、「命令すること」と答え、奴隷商には、「誰か自分のために主人を買おうって人はいないか、そういって探してくれ」と頼んでいたという。
●プラトンに自分のことを犬と言われ、「ああ、そのとおり。俺は、俺を売り飛ばしやがった奴のところへ何度でも戻っていくからね」
●ディオゲネスは「犬」と渾名されていた。何故か。本人曰く、「施しを与えてくれる人にはじゃれつくが、何もくれない奴には吼えかかり、悪者どもには噛み付いてやるからだ」
●宴会の席で人々が、まるで犬にやるようにディオゲネスに骨を投げ与えたことがあった。すると彼は、ちょうど犬がやるとおり、人々に小便をひっかけた。
●ある者がディオゲネスに訊ねた。どうして人々は乞食には施しをするが、哲学者には何も与えようとしないのでしょう。「それは人が、自分がいつか足が不自由になったり、目が見えなくなったりするかもしれない、とは予想しても、哲学者になるだろうとは決して思わないからだよ」
●ある友人が、ディオゲネスの書いた本を一冊貸してくれと頼んできたとき、「君は間抜けだなあ。いちじくなら絵に描いたものじゃなく本物を選ぶくせに、勉強となると、目の前の本物には目もくれず、書かれたものへ向かっていくんだから」
●ディオゲネスに施しを与えた者を皆が賞賛していると、「そんなたいした奴からたいしたものをせしめた俺のほうは誉めないのかね」
●サモトラケのニケの神殿は願いのかなった人々の奉納物でいっぱいなので、参詣した人々が、「なんともあらたかな神様だ」としきりに感心しているのを見て、こう言った。「願いのかなわなかった人が奉納することにしたら、とても入りきるまいね」
●市場の真ん中でマスターベーションをかきながら、「ああ、空腹のほうも、こうやって撫でるだけで治まってくれたらいいのになあ」
●「君の国はどこだ」と訊ねられると、「私は世界市民(コスモポリタン)だ」と答えた。
●部屋の中で痰を吐かないように言われたくせに主人の顔にまともに痰を吐きつけ、「これより汚い場所がなかったからさ」
●お金に困ったディオゲネスは、友人たちに貸してくれとは言わなかった。「返してくれ」と言った。
●あるとき途方もなく大きい取り外しもきかないような彫像を、自分にくれるように頼み込んでいるのを誰かが見かけて、何でそんなことをするのか聞いた。「断れることの練習をしているんだ」
●旅をしていて、川のほとりまでやってきた。しかし、洪水で渡ることができずに立ち往生していると、川渡しに慣れた男がディオゲネスの困っているのを見て、やってきて向うへ渡してくれた。ディオゲネスはその親切に感激したが、恩人にお礼もできない我が身の貧しさを託ちつつ、突っ立っていた。なおもそのことを苦にしていると、男は別の旅人が渡りかねているのを見て、駆け寄るなり渡してやった。するとディオゲネスが男に言うには、「さっきのことで君に感謝する気がなくなった。君が人を選んでするのではなく、癖でしているだけだとわかったからだ。」
アレクサンドロス大王は死に際して、「生まれ変わるならディオゲネスになりたい」と言ったとか、言わなかったとか…。とにかく、時の大王の心までも掴んでしまう程の魅力が、ディオゲネスにはあったということです。