ウォルト・ディズニーの功罪
F.C.セイヤーズ、聞き手:C.M.ワイゼンバーグ 八島光子/訳 子ども文庫の会
セイヤーズ氏は、ウォルト氏の批判を新聞で行った児童文学の研究者です。長年図書館長も勤めた彼女へのインタビュー。
この本で解ること:映画を観て作品のすべてを知った気になることの危険、 子どもにとっての良い物語・悪い物語、目からの情報を与えすぎることの危険
50頁にも満たない口語の文章です。児童文学や児童心理に興味のある人は読んでみることをお勧めします。
タイトルに「功罪」とあるように、話してはウォルト氏の行い全てを否定しているわけではなありません。
評価すべきところには賛辞を惜しみません。ただ、童話や子どもの想像力に関するところでは辛辣です。
世界はすべて明るくて健全だとするウォルト氏の世界観は詭弁であり、危険だと警告しています。
お姫様とジェンダー アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門
若桑みどり/著 ちくま新書
女子大でジェンダー学を教える著者が、ディズニーアニメを教材にした講義を焼き直した入門書。
この本でわかること:普遍性を重視した作品であっても、製作された時代性から逃れる事はできないという事実。「プリンセスストーリー」の欺瞞
頁数もさほど多くなく、細かく章分けがされているのでひじょうに読みやすい本です。一連のプリンセスストーリーを観て、ちょっとでも違和感を感じた人は、読むとすっきりできるでしょう、著者は美術史・芸術史などにも造詣が深い大学教授です。その方面からのアプローチもまた興味深いものがあります。
怖くて危ないディズニー・アニメのお話
すみません調べなおしてきます
ディズニーアニメの原作を悪趣味にパロディした小説と、
原作がどのようにディズニー化されたかを解りやすく説明。中高生向け
この本で解ること:ポカホンタスのモデルになった悲劇、ピノキオはアンハッピーエンド、
安易なハッピーエンド「ディズニー化」、童話の改竄
挿絵や表紙、またパロディ小説部分が悪趣味ですが、解説と後書き部分は大変優れています。
アニメ化にあたって、いかに原作の持ち味が損なわれているかがよく判ります。
参考文献も幾つか挙げられていて、いずれも良書です。入門書にしてもいいかもしれません。
児童文学に興味がある人にもお奨めです。
ディズニー千年王国の始まり
有馬哲夫/著 NTT出版
ウォルト氏亡き後のディズニーが内紛・乗っ取り未遂を経て、
いかにして巨大企業となったか過程を追っていく
この本で解ること:70年代の不振、テレビとの関わり、
「トロン」大失敗、乗っ取り疑惑の顛末、ソニーに訴訟で負けたこと、
カッツェンバーグ事件、ABC買収
経済関連の本です。カネとヒトの動きが大変判り易く書かれています。
夢と魔法で出来ていても運営にはお金がかかるし、
人と時代が変われば治世も変わる…ということがよく判る本。大人の世界です。
ディズニーとは何か
有馬武郎/著 NTT出版
ディズニーという会社とは、世界にとって、アメリカにとって、
日本にとっていったい何なのかを解き明かす本。
この本で解ること:大衆文化としてのディズニー、くまのプーさん騒動、著作権観、
ジャングル大帝盗作騒動に関するディズニーの弁明、世界戦略、ディズニーの人権概念
ウォルト・ディズニーの人権概念やディズニー製ヒロインを、アメリカ史と重ね合わせて時代の産物だとしています。
ただ、時代性とするなら、その当時を代表する映画のヒロインを比較対象として持って来ると、
もっと良かっただろうと思います。 出典や事実を述べるところは正確なのですが、核心に迫ると主観が入るので
、 一資料として読むことをお勧めします。いろいろと手を広げすぎた観のある本。
ディズニーの魔法
有馬武郎/著 身長新書
既製の童話をアニメ化したディズニーが、より広く受け入れられるために行った「魔法(ディズニー化)」の手法を紹介。
この本でわかること:ディズニー化の手法ビフォアアンドアフター。それ以上もそれ以下もありません。
なんとなく「お姫様とジェンダー」を読んでから書いたような印象を受けます。「お姫様〜」を読んでから読むことをお勧めします。こちらは「お姫様〜」では語られていない、プリンセスストーリー以外の作品の説明も載っています。
ディズニー批判序説 盗むディズニー 訴えるディズニー
兜木励悟/著 データハウス
ディズニーにまつわる良くない噂を一つ一つ検証していくという形の本。 どちらかというと謎本のような体裁。
この本で解ること:滋賀県の小学校の卒業制作を消させたディズニー社社員、
2つの大きな盗作疑惑、映画にまつわる差別的表現など
酒席の小噺的ネタが多いです。資料の孫引きがあったり、 主観が入ったり、出典が明らかでなかったりという、 今ひとつ信憑性にかける記述もあります。 しかし、中には関係者に直接インタビューして得た情報などもあるので、 取りあえず目を通しても損はないでしょう。
ディズニーランドという聖地
能登路雅子/著 岩波新書 ディズニーとアメリカ大衆文化とのかかわりを、アメリカの歴史・文化の見地から解く
この本でわかること:アメリカ中産階級にとってのディズニー、 ディズニー(アメリカ)の自然観・動物観・死生観、王国としてのディズニーランド、 アメリカ人にとっての理想郷
アメリカ人にとっての「ディズニー」の意味合いの変遷は、正に一つの世界宗教の歴史のようです。
著者も「聖地」「巡礼」と表わしているところが確信犯的です
ディズニーランド物語
有馬哲夫/著 日経ビジネス人文庫
ウォルト氏がはじめたテーマパーク産業の進退の記録
この本で解ること:シナジー効果のからくり、ユーロディズニーの赤字、香港ディズニーに向けての二枚舌、 浦安漁民を接待漬けで骨抜きに、「クンドゥン」のもたらしたもの
簡潔に,判り易く書かれています。リピーター率の変遷なども取り上げられています。
日本の成功とフランスの失敗の対比が面白い。中国との香港ディズニーランドにまつわる交渉など、
どこの世界でもカネのあるところに権力が擦り寄るものなのだということが良く判る一冊。
ドナルドダックを読む
アリエル・ドルフマン、アルマン・マトゥラール/著 山崎カヲル/訳 晶文社
文化侵略を警告する書。南米の軍事政権下で禁書とされました。
この本で解ること:ディズニーキャラクターにおける父親不在の理由、 ディズニーの自然観・歴史観、ブルジョワジーとしてのディズニーキャラクター、拝金主義
本文に無断での漫画の引用があることから、某エッセイ漫画(作者は別の著作権訴訟で負けました)で
「ディズニーに訴えられた」などと書かれたそうですが、そのような事実は一切ありません。
後書きに経緯が詳しく書いてあります。児童文学や児童心理に興味のある人にもお奨めです。
問題のコミックはライセンス契約のみで、ディズニー社は内容にはノータッチだそうですが、
この本のアメリカ上陸を阻んだのもディズニー社。・・・あれ?
ファストフードが世界を食いつくす
エリック・シュローサー/著 楡木浩一/訳 草思社
ファストフード業界の裏舞台を取材した本。
この本で解ること:マクドナルドとのタイアップ、意外なつながり
ディズニーを論じる本ではありませんが、タイアップの事が書かれているのと、
手短にですがウォルト氏の仕事振りに触れられていたので入れました。
どちらも子供を消費者として認識することにいち早く目をつけた…など、共通点が多いですし。
ミッキーマウス ディズニーとドイツ
カルステン・ラクヴァ /著 柴田陽弘/監訳 真岩啓子/訳 現代思潮新社
ディズニー黎明期からナチス政権までの、ドイツとディズニーの関係を仔細に著わした本
この本でわかること:ディズニー社とナチスの関係、愛国者ウォルト、ウォルト氏の共産主義への姿勢、ゲッペルスもゲーリングも親衛隊員もディズニー大好き
初期の資金繰りの苦労話や、ニセキャラクターグッズに悩まされてきたことが、現在のディズニーの強硬な姿勢に繋がっているのか・・・と、妙に納得できる本です。また、アニメーションは情操教育に役立つのか、人格形成の上で柱となりうるのか、という疑問も生じる本です。
闇の王子ディズニー(上・下)
マーク・エリオット/著 古賀林幸/訳 草思社
ウォルト・ディズニーの生涯を、公的資料や関係者の証言に基づいて、客観的に描く伝記
この本で解ること:ミッキーマウス誕生秘話(本当に秘話)、 ロゴでお馴染みのあのサインを考えたのは社員?、最初で最後の監督作品のこと、赤狩り時代のウォルト氏の保身行為、
出生証明書の謎、FBIでのスパイ活動、女性やマイノリティに対する人権概念
この本を読むと、今までのウォルト像が揺らぐことになろうかと思います。 けれども、この本は、決して彼に対する誹謗中傷のために書かれたものではありません。 彼の作品やキャラクターを深く理解しようという目的のために書かれたということは、 事実だけを追っていく綿密な取材に基づいた記述からも判ろうというもの。 いまや理想化されたアメリカのお父さん的存在の彼を、一人の人間として見つめる本です。