楽園とゴミ箱


「宇宙論」

蒼穹が弓をひいて
電柱が高速道路をかっとんで
僕に向って突っ込んでくる
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒黄黄黄黒黒黒
無抵抗な切っ先は血で尖鋭に研ぎ澄まされている

世界は変容していた
この世界には2種類の人間がいる
生きている人間と死んでいる人間
生きながら死んでいる人間めがけて
神は宇宙学に基づき絶対的因果律を放つ

ヘッドライトが雷鳴を轟かせて迫る
道路がのけぞりたち上がって
巨人の足音をたて
急転直下で僕めがけてつっこんでくる
家が次々と僕に向って倒れてくる
背後から迫る崩壊音に
息ができないほど走り
ああ、僕は魚眼だったのだ
正常と呼ばれる感覚はすべて僕の敵だ

群れている孤独の眼球からも
ロンギヌスの槍が放たれる
大きな輪の中でひざまつく僕に
四方八方から貫通する塔のような針万本
地面に串刺し
宙空に固定され
僕は別の惑星を見つめるオブジェ
僕から伸びる
ひとすじの
繊毛


「シナプスワルツ」

チッチク・・・チッチク・・・チ・・
チッチャカ・・・チッチャカ・・・チャ・・
耳をすまして
ほら
僕の声が聞こえるかい

チッチク・・・チッチク・・・チ・・
ズダダ・・・ズダダ・・・ダ・・
ほら、空は破れた!

チッチク・・・チッチク・・・チ・・
ムゥィー・・・ムゥィー・・・ムィ・・
夢が流れてくる

チッチク・・・チッチク・・・チ・・
モアル・・・モアル・・・モア
ほら (チッチク・・・チッチク・・・チ・・
いちごの飛行機 (モアル・・・モアル・・・モア・・
繭の馬車 (シュムルン・・・シュムルン・・・ルン・・

チッチク・・・チッチク・・・チ・・
キャルリック・・・キャルリック・・・ャ・・
脳みそがとろトロピカルジュース
チッチク・・・チッチク・・・チ・・
チッチャカ・・・チッチャカ・・・チャ・・



「ゴミ箱」

愛してる愛してる愛してる
僕はゴミ箱の中から首だけだして大きく口を開ける
あなたは赤いなめくじをついばみたい
愛してう愛してう愛してうう
胸の扉開いて汽車が飛び出る
はしごをかけのぼって、りんごの家から
木造のかもめが鳴きながら羽ばたいてきた
空間があたりに散らばっている
その中のひとつでいいんだ
ずっと深いところまではしごは伸びるから
はしごをかけのぼる汽車の窓から
宇宙が見える。美しい銀河だ
愛してる愛してる愛してる
カラスのカリカチュアが赤い口めがけて
赤い口めがけている!
スペインからミノタウルスが突進してきた
ねえ、僕の情熱はそれくらいだぜ
どこまでも伸びていく
天空も超えて、透き通ったラッパが聞こえる
泥水が澄み渡っていく
タリスマンが爆発する
黄色い糸を吐き出しながら
黄色い手袋を紡いでいく
爆発してるんだ!
見えるかい紫色に輝く朝の湖が
それは全部宝石だから、あなたにあげよう
僕は先にゴールに行っているから
ゴミ箱から首だけだして大きく口を開けるから
黄色い手袋はめて汽車ごと突っ込んでおいで
僕はあなたを求めずにはいられない宇宙だ


「転身する」

元気です。とても元気です。
僕は内臓から腐っていく。
腹の中にいるなにかに
飲みこまれるような痛みに生命の律動を感じる。
脳も肺も胃も精巣もみんな血管も神経も腎臓もすい臓もみんなみんな腐ってしまったんだ
表面はつるりとして、こいつはどこまでも卵だ
二次性徴が始まる。
目の色は落とせない。落とせない。落とせない・・・!
もやしのようなひょろ長い悲鳴が沸き
地割れを呼んで地球が真ん中から二つに割れた。
冷たい青い朝日が一切を奪う
残滓のような黒い土がこぼれて疲弊した
脱力も欲望もパンクしそうだ
目の色だけが虚空に向い虚脱する


「死刑囚の独り言」

頭を滅ぼして神経に転移する
部屋の片隅で3トントラックが警鐘を鳴らしている
体操の要領で背骨をポキポキ
溶けたガラスを飲みこんで、美しい結晶を願うと
言葉は端から音楽になる
警鐘が鳴っている鳴ってい鳴って鳴っ鳴鳴鳴鳴鳴鳴
雨がいちぢるしい
窓を開けると太陽がいななく

恐怖が差し迫っていないから
私は人を殺す
君は生きているんだよ。生きている。生きているんだ。
私は誰かに殺されたいんだ
金属バットや血に濡れたナイフを
予知できるんだ
鉄砲に弾丸。
空疎な爆弾でこめかみを撃てばいい
死ぬためには資格がいるのだ
空が明るみはじめた頃にヒットする
300億年前の光りに向って快音が疾走する


「遮断されたビアンカ」

もっと我武者羅に
食べるんだビアンカ
おまえはそんなもんじゃない

おまえの甘いポケットの中のビスケットが分裂するよ
光り輝く爆発みたいだ
ああまた宇宙が誕生した

もっと赤裸々に
怒るんだビアンカ
まだまだそんなもんじゃない

おまえが叫べば土星が落ちるさ
星に乗って空を飛べ
僕が笑ってあげるんだ

もっと切なげに
すすり泣くビアンカ
みんなバカなんだ

君も笑っていいんだよ



「死」

希望して失うならば
希望などいらない


「空を飛ぶ」


浮力が足りない
積荷は全て捨ててしまった
もはやこれまでだ

飛び降りたら
もう1度空へ行ける



「捕虜」

奪われたものを
思い出すこともできない
誰かにプログラムされた残骸

命令をくれ



「警告」

現実を模写した映像のキャンバスが
新芽のように柔かな絵筆で引き裂かれて
彼女は空を飛ぶ
あなたの首が太陽になり

稜線が鮮やかに目を突き刺す
僕の心をえぐりとって
味のしないハンバーグを差し出す人面から
言葉を奪う電磁波が放たれた

僕は火のついたガスコンロにすがりつきたい衝動に襲われ
愛を遠ざける無意識のブレーキが
ゴムで作られた鏡を溶かしていく
人形のような顔から虫が
1億の虫が蠢いて誰かの顔を形どる

大丈夫だから。
泣く事はやめた
武器も捨てたのでこれ以上傷が増えることはない

真昼の太陽を遮った部屋の中で
濡れた枕に横たわり
僕はひと筋の音楽を吐く




「ロボ」

ロボだった僕は
硬い大陸を踏みしめて
嘘を知った

月を呼んで涙をこぼし

愛を叫んで
言葉を失った



「喪失する時」

久しぶりに会ったあなたは言った
変わった
と、刹那私は時を喪失する

最後に別れた時から
いまあなたの言葉を聞くまでの間
生きていた私の意味は失われて

生まれ変わった私を責める私は
どこにもいない
存在を崩された私は既に消えていて

時間を戻すこともできない私は
途方にくれることもなく
既にかすみはじめた

(思い出はいらないものから消えてゆく)

          気がした

私に残された時間はもうわずかなのかもしれない
完全に消えてしまう前に

もう一度だけ
キス


「ブラックバス」


傷が増えて
疑うようになった

目の前のエサはぶらさがっている
傷つける遊戯に没頭する人間

嘲笑って
食べてあげる

支配する私だけが
激しく飢えている
口いっぱいに頬張っても
ひきちぎられて

繰り返されるキャッチアンドリリース
発狂した紳士
優しいマリオネット

殺してと叫ぶ声は
水になる


「落ち葉踏み」


優しさが溢れる午後
まだ青い葉の上を選んで歩く

むせかえるような秋の匂い
ターペンティンが激しく香る

私の靴の下であがる
断末魔の悲鳴


「静かな銃声」


雨をシャワーのように浴びながら
ああ春よまた繰り返すつもりか
暗く呟く
淡い空を見上げた

美しいメロディを奏でるのは
高層ビルやアスファルトをめがけて殺到している
数百億もの雨の粒だ

甘美な陶酔と
死をもたらす
空は


大地を放棄した私を奪うために
瀑布のような銃弾が音もなく降りしきる
撃ち抜かれた額は

アスファルトを濡らして
また
静かに



「花火の夜 無限の雨」


コン ド トン ティン トト ティン タ カン
こんな夜には
雨の色を想像する
目を閉じて耳をすますと

コン ド トン ティン トト ティン タ カン
てんとう虫のようにつぶらで
薔薇のように鮮やかな水滴は



コン ド トン ティン トト ティン タ カン
夜空に静かな波紋を広げ

コン ド トン ティン トト ティン タ カン



流星
花火
一筋の光が頬を流れる



「楽園」


銀の果実をもぎとる

白く輝き始める
禁断の口付けは僕の唇から
赤いなめくじを吐き出して
冷たい海になる

半透明のプラスチックケースに閉じこめられて
犯されながら
楽園という檻の中で果てる
僕の魂のかけらなど
ひと息で終わる

あなたの赤いマニュキュアと
熱い唇で
永遠に朝はこない
目をそらした瞬間に
僕はばらばらにちぎれて
宙に青い蝶が舞う

忍びこむ柔かな闇の中で
目を慣らして
すりきれた心の鍵をはずす
おだやかな月の吐息に打ちのめされて
再生が始まる