松竹座の「野崎村」、お染久松は好演でしたね。義大夫物らしい
雰囲気といい、見た目の良さといい、品といい、端正な終始崩れな
い芝居の運びといい、お二人とも、存在感十分でしたね、正直、見
直しました、実力はある方々と存じておりましたが、なかなか。
お光(秀太郎さん)のかわいらしさ、お染(扇雀さん)のお姫様
のような感じ、下女(鴈乃助さん)交えて三者のリズムの違いがは
っきりとわかり、楽しみました。
また、親しみやすい感じの芝居の松嶋屋チームと端正に勤め上げ
る成駒屋チーム、上手く融け合ってましたね。一瞬たりともだらけ
ないのも出演者全員いいチームワークで、去年正月の「時雨の炬燵」
、3月の忠臣蔵四段目等の引き締まった良い芝居を見た目にも好ま
しくうつりました。
お光の丸坊主は工夫はほめるが見た目が悪いというところでしょ
うか。だけど、去年十月御園座、熊谷陣屋・藤の方で、お客に受け
ない所は主役の了承を得て、サラサラとやるといったところや今回
の工夫、秀太郎さんの上方役者としての意気込みはうれしいですね。
しかし、初めて「野崎村」を見た方はあれをスタンダードと思って
いるかな。
久作役の我當さんは今回もセリフを観客に一言一句理解させよう
とするあまり、感情表現より説明に力が入り、見た目に素人臭い
芝居になっていましたが、今回にいたって正直、評価に迷っていま
す。役者がそろい、感動的な、一定の水準にある本公演においては、
我當さんの説明的な演技も現代の歌舞伎を見慣れない、野崎村を初
めて見る観客にとってはプラスに働き、感動を呼ぶ一助になってい
るのではないかと感じました。演技を錬ることを第一に、観客に話
を理解させることはその次という、役者がほとんどの中で、その逆
を行く我當さん、説明する芝居をそろそろ一応の完成をさせ、感情
表現の領域に移りつつあるかとも、今回感じました。今後、楽しみ
に見ていきたいです。ただ、父性喪失の現代に合わせているのか、
この久作もやさしすぎて、厳しさに欠けます。去年の加古川本蔵も
そうですが、厳しさを見たいです。
野崎村以外では、「土蜘蛛」のポピュラーバージョン、「蜘蛛絲
梓弦」が派手で、鴈治郎さんの芸づくしで見応えがありました。泥
酔ぶりと、狂乱ぶりをみせる「椀久末松山」は爽快感に欠け、労多
くして益少なしの感があります。特に脇役は話の筋を上手に進めて
いくのですが客に受けるような芸のしどころがなく、可哀想です。
段四郎さんをはじめ皆いい腕を見せるのですが・・・。
なかで扇雀さんは、きっぱりとした、はりを持った、豪勢な傾城
を表現し、目を見張らせました。
この作品は筋の整と芸のしどころの配置の整理、狂乱ぶりを屋台
だけでなく、大がかりなセットで派手に演じるなどの工夫があれば
なかなかおもしろくなりそうですが・・・。
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