REQUIEM 4 A DREAM (2000) / Darren Aronofsky
時間も空間も分かたれている。もはや僕らには救いがない。
アロノフスキー監督の初作品「π」は、あの、ストーリーを断ちつつ、非常にテンポのよいモンタージュによって、モノクロの、ある種の異様な空間をつくりだしていた、非常にリズム感と、ある程度の悪趣味さえもが気持ちの良い映画でしたので、まあ、πについても、また、いつか書きたい、という感じはあるのですが、そういうわけで、レクイエム・フォー・ドリームは、非常に楽しみにしていました。
πよりは、非常に、ストーリーあるいはテーマ、というものが、非常に濃厚に、含まれているようにおもいました、それがπの気持ちよく流せる感覚(これはまたπのいいところでもあるとおもうし、また、映画的純粋さでしょうか)からの、非常な飛躍でしょうか。また、それは、この作品が、カラーであるということにあるのかもしれません。映像の衝撃性は、確かに、非常に高いものでありますし、ストーリーの衝撃もまたありますし、不快なイメージもつよく、できれば避けて通りたかった感も自分ではかなりあります(見終わった後の連れの不愉快そうな顔、申し訳ない)、R-15では生ぬるいという声もありつつ、まあ、けしてデートや遊びにすすめられる映画ではありませんが、見るならばひとりで見とけ、ひとをまきこむな。という映画ではありますが、そういった衝撃性も、しかし今現在にあって、あってしかるべきものではあるはず。
耐えられないのは、しかし、映像的な衝撃性のみではないはず、モンタージュと、音楽、または効果的な音の、リズムの一体さは、どことなく強制的に観客を映画に巻き込む姿勢があり、映像との純粋な対峙をのぞもうとする自分にたいして、どことなく、強制的に映像に引っ張っていかれる感覚、フィーリングで見ろ、と強制されている感覚、それに反発する気持ちでもあるかもしれません。あるいは、ストーリーの悲惨の重みを、無視してはいけないという、訴えでもあるでしょうか。
アロノフスキーのモンタージュには、いつも、目を見開いてみなければならないような強制力で、感覚で映像と対峙するようなふうでいながらも、モンタージュのつよさに裏打ちされていることは非常に面白く感じます。興味深かったのは、右と左で分断された映像、しかもまた、右と左が、ただ単純に、状況の二分化された経過をわかりやすく写すだけではなく、カメラが客観のひとつの視線と、また、もうひとつの客観の視線を持って、そこにあることが意識される。わたしたちはそれをあたかも同じ時間の違う視点として見るかもしれないが、しかし、時間もまた、そこでは分断されている。同時的な進行では、けして、ないのです。客観されたふたつの視線は、最早わかりやすさに呈するモンタージュではなく、むしろ映像をただひとつのものとして、映像はすべてのストーリーのひとつの流れとして、そのように見る観客に、すこしばかりの混乱をもたらします。モンタージュは時間を断絶させるもの、そしてまた、アロノフスキーは、ここで、空間さえも断絶させたのです。スクリーンではすでに、写された空間や、また人間の身体は、すでに空間的な断絶を受けたものでありながら、わたしたちはそれを無意識に閉じ込めて、そこにあるものだけで、世界が収束しているのだ、と見ている、しかし、このモンタージュによって、ようやく、スクリーンの空間が断絶せられているものであることに、気づくのかもしれません。
そしてこれは、(右と左に分断された)ショットやシークエンスのみにとどまることではなく、交差する物語、母と、子、友人と彼女、4人の姿が交差的に物語を進めること、同時的に薬と依存の深みにはまってゆくこと、破滅への過程をすすめること、映画自体がすでにして、大きなひとつのモンタージュという技法を使った代物であるのかもしれない。映像やリズムや物語的にはどことなくカオスのような、といえば聞こえはいいようで、しかし、底には秩序が交差しているような、まるでπのようなことをいいますが、しかし、πよりもはっきりと、その秩序は刻まれているようにおもうのです。
ラストの順番に、そして同時的なものとして写された4人の破滅の図は整然としていて、非常に収束されたものを感じます、もちろん、物語的なラストの引き方としては見事だとおもうし、クライマックスからラストへ向かうスピード感と強烈さに圧倒されつくした身としては、やっとのことで辿り着いた収束の場所、静けさは悲哀をもって湛えられ、鎮魂歌が終了したことを見届ける。しかし、いいや、収束することが悪いことだとは、云いません、別に。
そういえば、REQUIEM 4 A DREAMという原題、4人の破滅へ向かう人間への鎮魂歌、見終わったあとに、4の意味に気づいた次第。いいや、別に、ジャレッド・レトが、タイプの顔であるなんて、云いません、別に。なんだか少し今日のテキストには電波が入ってそうだなんて、気にするなよ、別に。
official site / http://www.requiem-jp.com/
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