うたかたの日々
 
 
 
last update:08/04/03
 
 
香港、そしてレスリー・チャンの死
 

例の肺炎騒ぎが、物凄いスピードで世界に広がりつつある。東南アジアによく出掛ける私にとって、全く他人事ではない。何にしろ、原因不明というのは不安である。一日も早く原因究明と治療法を確率してほしいものだ。 

そんな中、香港のスター、レスリー・チャンが亡くなった。しかも、マンダリン・オリエンタルホテルの一室からの投身自殺とは。いかにも美意識の高い彼らしいとは思いつつも、惜しまれてならない。46年の歳月が、彼を少しずつ蝕んでいったのだろう。

若い死は美しいかもしれない。しかし、中年の死はただ悲痛なだけだ。 
  

テレビの追悼企画で「色情男女〜夢翔ける人」を観た。「さらば我が愛」や「ブエノスアイレス」での姿が印象的だっただけに、意表をつかれる作品だった。スー・チーが結構すごい。 

 
 
 
猟奇的な彼女
 
 

タイトルからして凄いインパクトである。作品を紹介した記事等を読んでみても、そのぶっ飛びかたに唖然とするばかりだ。実を言うと韓国映画は殆ど観たことがない。こんなことを言うと眉をひそめられるかもしれないけれど、私は韓国という国に対する関心が全くない。人一倍外国のことに興味があり、日々外国に書かれた本を読んでいるというのに、どうしたことか、韓国に対しては何の関心もなかったのだ。しかし、この映画を観て、私はその考えを少し考え直そうかと思った。こんなにも面白い映画を撮れる国なのだから。 
 
 

小さな中国のお針子 

「小さな中国のお針子」は「青いパパイヤの香り」に似たテイストの作品と言えるだろう。それというのも、監督がフランスに住む中国人という点(後者はフランス在住のヴェトナム人)にあるのかもしれない。ともにアジアを舞台にしながらも、映像世界や表現は、アジアというよりも西欧的洗練に彩られている。  

 物語は70年代の中国。医師の子マーとルオはブルジョワであるという理由から、文化大革命による“下放”の憂き目に遭い、中国の奥地に連れられていく。文盲の人々の中で、厳しく、虚しい労働に明け暮れる日々。村では、毛沢東の名の下であらゆることが禁じられており、外国小説も例外ではなかった。失意の日々を過ごすうち、文盲の美しいお針子に出会う。ふたりは「彼女に知性を与えたい」との一心で、交代で本を読み聞かせる。やがて彼らはともにお針子に心惹かれていくのだが・・・。  
  
  
この映画は文化大革命の悲劇を描いた作品ではない。ジャンルに当てはめるならば、「青春モノ」が適当なのではないかとさえ思う。彼らは不自由で退屈な生活の中に置いても、それに甘んじることなく「何か新しいもの」を絶えず捜し求めていく。禁じられた外国小説を盗み出し、文字の読めないお針子に朗読する、観てもいない映画をでっち上げて村人に聞かせる、お針子とルオの恋、それを見守るしかないマー……。  

ネタバレになってしまうが、映画の終わり近く、数十年の月日を経、すっかり中年になったマーが、フランスの空港で小さなお針子に香水を買う。ピンクの一風変わったカッティングの香水瓶から、イヴ・サンローランの「ベビードール」だと判る。・・・そう。スポンサーがイヴ・サンローランあのだ。こういう使い方はフェアじゃないような気もするけれど、映画を観た数週間後、私はその香水を買ってしまった。  

中国の小さなお針子には、「至福のとき」の主人公にも共通する強さがある。女性が悲嘆に暮れ、涙を流して耐えるだけの時代はとっくに終わったみたいだ。  
  
  
  
 
 

●●● 映画・俳優 ●●●
 
 
『JAPANESE BEAUTY』より
かなり若い頃のARATAさま
 
 
先日、待ちに待った『ピンポン』のDVDがリリースされたので、 
夜な夜な観賞に耽っている(それほど倒錯はしてないと思うけど)。 
豊富な映像特典もコアなファンには嬉しい限り。 
「卓球なんて死ぬまでの暇つぶしだよ」
このセリフって色々置き換え可能だな、と思った次第。 
下らない話で恐縮なのだけれど、愛知県の知多半島付近に数多くのお寺があり、 
その風光明媚な風景とあいまって、白装束のご老人方がお遍路さんを行っており、 
なんと、「寿詣る会」(=スマイル会)なる御遍路さんの同好会があるらしい。 
それを観ていて、 
「御遍路なんて死ぬまでの暇つぶしだよ」
などと思ったわけです。 

あと、香港ではスマイルのことは「笑爺」と表記するらしい。 
爺とは失礼な! とか思いつつ、ああ、そんな感じ、って思ったりする。 
 

突然だけど、03年現在のARATA作品の順位。 

 
1.『シェイディ・グローヴ』 
2.『ピンポン』  
3.『ワンダフルライフ』  
4.『ディスタンス』 

 
『シェイディ・グローヴ』って何度観ても飽きない作品。思い込みが激しくてマヌケなヒロインに自己投影し、そんな彼女をひたむきに(というか、ストーカーチックに)癒す 
ARATAに、ヴァーチャルに癒されてるのかもしれない。なんかだんだん自分がやばくなってきたかも・・・ということで、ついでにもうひとつ。 

レオン・ライ&スー・チー主演の『玻璃の城』という映画でダニエル・ウー(呉彦祖)という香港俳優を知ったのだけど、彼は正統派の美形。 その後観た彼のデビュー作『美少年の恋』はゲイの役ということもあって、 シャワーシーンあり、絡みあり(勿論男同士)という衝撃作。 徐々に頭髪がヤバくなっているらしいので、美少年ファンは今のうちにチェックするべし。 
 

 
●●● 音楽 ●●●
 ユンディ・リ

2000年に行われたショパンコンクールにて、15年ぶりとなる優勝を手にしたピアニスト。しかも、大会の歴史において史上最年少の18歳での優勝、そして中国人として初の快挙・・・という凄すぎる経歴とともに、“クラシック界のキムタク”と称される甘いルックスも魅力的(「ロングバケーション」を観て、ピアノをはじめたとしたらオドロキだ)。近頃リリースされた“ラ・カンパネラ”は、一聴の価値あり。何というか、末恐ろしいほどの逸材。 

 

 
●●●  文学 ●●●
 
村上春樹『海辺のカフカ』に尽きる。久しぶりに小説世界に酔うことのできる作品だった。年を経るごとにより円熟味を増しつつも、常に上昇していく小説スキルには圧倒される。 
 
忘れちゃいけない平野啓一郎。 
しばらく見ないと思っていたら、『葬送』が刊行されていた。が、読んでない。『日蝕』も『一月物語』も読んだこの私が、である。理由は至って単純。そのあまりに膨大な量に挫けたからである。関係ないけど、近頃見た平野氏は、なんだか太った様子だった。元々固太りっぽかったけれど、何だか嫌な予感である。同じく芥川賞作家・村上龍のようなエネルギッシュさを身につけないで欲しいものである。 
 
 
 
 
●●● 食べ物 ●●●

先日、名古屋初のヴェトナム料理のランチビュッフェが登場したとの報を聞いて早速行ったところ、これがなかなか美味しかった。店の説明曰く“まかない料理”らしいのだけど、家庭料理ぽいところがいい。内容は日替わりとのことだけど、鶏のお粥、ビーフンのラーメン風、ダイコンの煮物、野菜炒め、揚げ春巻、豚と卵のココナッツジュース煮、かぼちゃのココナッツミルク煮等など、ボリュームがあるけど、野菜たっぷりだから安心。デザートは緑豆のココナッツミルクぜんざい、りんご。880円という値段も手頃で嬉しい。ちなみにお店は八事のトゥ・アン。詳しくはHPを探してみて。 

あと、去年からかなりはまっているのがヒルトン名古屋のビュッフェ。毎月末に10日間ほど開催されるフードフェアなのだけど、月ごとに違う国の味が味わえる志向が魅力的。一例をあげると、シンガポール(ラッフルズフェア!)、ギリシャ、ヴェトナム、スペイン、タイ等、多種多様。ヨーロッパ系もいいのだけど、やはりアジア系が圧倒的に美味。どれも素晴らしかったのだけれど、タイフェアで供されたゲーン・キョワーン(グリーンカレー)は、脳髄が痺れるくらい美味しかった。生きててよかった、と身体中が喜びに震えるほどの味だった。 
しかも、嬉しいことに、こんなにも充実した食を、クーポンを提示するだけで2000円で味わえてしまうのですよ。これを現代の驚異と言わずに何と言う、と思う。 

 

 
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