ジャクジキョウ9912
アナタハ
知らないのでしょう
こんなにもあたしが
夏の夕暮れや 暖かいひざしや
昼寝や コトバや
涙や あたたかいものを
ほしがって
いること を
ずっと知らないでいてね
あたしをわかんないままでいてね
おいてきたから
あの雪の降り積もる冬の夜に
おいてきたから 痛みを感じるようなココロ
アナタハ
知らないままでいてね
あたしが痛んでいないこと
しらないままで
やさしくしてね
神様
あたしの中で「神様」としてここ何年か君臨してきた男と訣別した。
やつは「いつだって勝手な女やな。」と笑う。
でも、コンドハホントニオワカレダ、バイバイ。
あれは19の時。
なぜか夜中の電話を忌み嫌う神様から真夜中に電話がかかってきた。
不機嫌に電話に出るあたしに、神様は何度も言う。
「愛してくれ愛してくれ俺を愛してくれお願いだ愛してくれ」
今まで誰にも聞かせたことのないような(もちろんあたしにも)コトバを笑いながら何度も言う。
何を今さら、とあたしは電話を切る。
あの時、すぐあなたの元に駆けつけていたら、なにか変わっていた?
神様はお腹と背中にたくさんの傷をもつ。
バイクのスピードを上げる、
我慢しきれず踊り出す、
何も見てない目で殴りかかる、
きゅうにわらいだす、
きゅうに苦しむ、
雨の路上でうたいだす、
その時にこぼれおちるなにかよくわからないキラキラした感じにあたしは夢中だった。
モットハヤクモットハヤクモットモットハヤクハヤクハヤク!!
あたしはあなたのスピードにすこしでもちかづきたかった。
「あたしの事すきじゃないの!?」
「そもそもすきって感情がわからない。」
神様の答えは何年たってもかわらなかった。
あれは22の時。
神様は夜中になぜか缶づめを持ってあたしの部屋にやってきた。
髪が短くなっていた。
あたしたちは並んで眠った。
神様の手をつかんで、じっと見た。
あんなに「一生忘れない」と思った愛おしい手のカタチを、あたしはすっかりわすれていたことに気づいた。
「ああ、そう言えばこんなカタチだったね、アンタの手。すっかり忘れていたよ。」
そう伝えると、神様は今まで見たことのないすこし困った様な、怒った様な顔で言った。
「それは・・・・・すごくサビシイデキゴトだ。」
あの時、あたしがあなたの手のカタチを覚えていたら、なにか変わっていた?
あれは20の時。
動物園から帰ってきて、ふたりであの寒くて狭いお湯もでない部屋の汚いベッドで体を寄せ合って眠った。
窓から見える空は、とてもとても冷たそうなアオで、飛行機の飛ぶ音が聞こえた。
あたしたちは冬の動物園の動物たちみたいだった。
あたしの腕の中で寝息をたてる神様の体温がどんどんあがってきて、
もうギリギリまできていたあたしは、一瞬このまま死んでしまえばいいのに、と思った。
あの時、あたしがあなたを殺していれば、なにか変わっていた?
神様はあたしのことを、決して「アンタ」とか「オマエ」なんて言わない。
いつもちゃんと名前で呼ぶ。
あれはつい最近。
神様の髪は伸びすぎていて、でもとてもかっこよかった。
お風呂からあがって髪をかわかしてあげた。
そとに出ると大雨だった。
あたし達はキスをして別れた。
アリガトウ、
アリガトウ、
神様だったんだよ、
ほんとだよ、
あたしはアンタのことがすきだったんじゃなくて、
アンタみたいになりたかったんだ、
でももうお別れだ、
バイバイ。
卵
あたしは卵の殻の中で孵化するのをただじっと待っている。
あたしを包むとろりとした液体は、あつくもなく、つめたくもなく。
すべての出来事は、殻の上にふりかかり、ゆっくり、とろり、とろり、と滑り落ちていく。
あたしは、卵の中で。
そうだ、もう、もうそろそろここを出よう。
あたしはもうとっくに羽もできているんだから。
ずっと折り畳んでたから、最初はちょっとうまくいかないかもしれない。
だけど、このままじゃあ、ふやけてしまうね。
寒い、寒い、と思いこんでいて、肩の力をぬいてみたら案外寒くなかったって、よくあるし。
ああ、どうかあたしにしあわせをしあわせと言い切る強さを。
教えてください
そんなに一生懸命言われても・・・。
え?頭チリチリやん、どっちも。え?今違うの?
若者に大人気なんでしょ?歌ったりしゃべったり踊ったり群れたりしよるんやろ?
違う人なの?!
誰か教えてください。
DA PUMPとDragon Ashの見分け方。
追記*この前買い物に行った時、ふと交差点で顔を上げると、周りの少年達の頭がみんなチリチリ。一人残らずチリチリ。
しかも風が強い日でみんな同じ方向に髪がなびいている。チリチリが。
ちっちゃいひともおっきいひともみんなチリチリ。友達同士もチリチリ。
DA PUMPを意識してかDragon Ashを意識してかはやっぱりわかんなかったけど。
でもみんなチリチリ。
秘密
彼女はちっちゃくて顔が本当にかわいらしくて声が少し低くて大酒飲みでオジサンからチップをもらうのが大得意で授業中いつも寝てて髪をすこし緩く巻いてて超がつくファザコンででも彼女のお父さんは彼女がまだ小さい頃に家を出ていっててたまに平気な顔ですっぴんでやってきたり大学生の男にブルガリの時計買ってもらっても興味なさそうにしてるような女の子だった。
名前はユウコ。
あたしは彼女が大好きで、いつも一緒にいたわけじゃあなかったけど彼女もあたしの事をすきでいてくれてるのはちゃんと感じてた。
もちろんそれは恋愛感情なんかじゃなかったけどね。
彼女がよるのバイトで稼いだ金で昼御飯おごってもらったり。
あたしが学校を辞めてから会う機会がまったくなくなってしまったのだけど。
体のちっちゃな男の子に悪戯をしかけた。
眠っている彼のうしろから首にあとをつけようとしたり、その体を両腕で包みこんで「ああ、ちっちゃいなあ、かわいいなあ」なんて思って。
愛おしくなって背中に夢中でキスをした。
肩に歯をたてたとき、彼が声をたてて、我に返ってどきどきした。
ユウコのこと考えてそんなことしてたことに。
思い出した!
あたしは学校を辞めたあと、一回ユウコに会ったんだ。
あたしがいたクラスのみんなで飲み会をするという連絡をもらってあたしは待ち合わせ場所に少し遅れて行った。
そのとき遠くからあたしを見つけた一年前より格段にゴージャスになったユウコがポメラニアン(彼女を犬に例えるとまさにポメラニアン)みたいに駆けてきて、「ひさしぶりーーー!!もう!遅いよ!!来てくれんのかと思ったやん!!」とあの声で言いながらあたしの首にしがみついた。
緩く巻いた髪があたしの唇に触れた。
なんだかあたしはものすごくたまらない気持ちになって何も言えなくて彼女をふつうに抱きしめるのをためらってしまった。
ためらってしまったのだよー。
あたしは堂々とヘテロだ!無類の男好きだ!と胸をはって言えますが、彼女の事を思うと、ちょっと口ごもったりしてしまうのです。誰にも秘密だけど。
それはなんて青春
申し訳ない。
あなたとはもう違う道を選んでしまってるのですよ。
電話を切ったあと、あたしが声を上げて泣いたことなんてきっとあなたは知らないでしょう。
あなたの、あの、あまりにも優しくない言葉を聞いて、あたしがどれほど、あの楽しかった日々の終焉を痛切に感じて、泣いてしまったなんてあなたは知らないでしょう。
あなたのその冷めた風な(すこし笑い混じりの)口調が、あなたの目標とする人間像ならば、あたしはあなたを軽蔑する。
人を心の底からきらいだ、と思ったことはあまりない、といつかあなたに話したけど、あたしは、あなたのことが、嫌いだ。
大嫌いだ。
ねえ、あれはなんてすごい青春だったんだろうね。
あたし達はいつでもわらいあって、いたわりあって、時にはちょっと憎んだり。
すべては日当たりのいい風の吹き抜ける教室で。
何一つ欠けたもののない青春だった。
こうやって、ひとつづつ、欠けていっちゃうんだねえ。
そして消えていっちゃうんだねえ。
さびしいねえ。
でも、すこし肩の荷が下りたような気分にもなる。
WHO
目を閉じて あたしは極力何気ない言葉を口にする
何気ない返事が返ってくる
あの感じに切ない気持ちがわく
目を閉じたまま手をつなぐ
アナタと彼は とてもよく似ている
あたしのことなんてどうでもいいって風なのにあたしに関するすべてのことに気を配っているとことか
車の運転中あたしの手を握りたがるところとか
(その言動のわりにはすごく丁寧に握るところとか)
すごくセックスしたがるくせにほんとは死んだほうがましって思ってるところとか
彼と初めてキスしてからもう5年以上経つ
アナタとキスしてから3週間経つ
どっちがどっちかなんてもうどうでもいいから
あたしはずっと目を閉じたまま
あたしにこんな思いをさせてるのは
メイクハピイ
その日、あたしたちの悲しみの上はやわらかい青空だった。
前の日の夜は指先が痛くてたまらないほどの寒さだったのに。
あたし達は暖かい日差しの中で泣いた。声を上げて。子供みたいに。
みんなこれ以上はない、というほど悲しい声を上げて泣いた。
太陽は輝いていたけれど。
最後のお別れの時、あたしは「嫌だ」とだだをこねてその場を逃げようとして、みんなはそんなあたしをみて、すこし笑った。
いつも喧嘩ばっかりしてるあの子があたしの目をまっすぐ見て「ちゃんとサヨナラ言いなさい。あたしがついていってやるから。」と手を握ってくれた。
あったかかった。
ちっちゃなこどもに「ちゃんとバイバイ言った?」と聞くと彼女はすごく真剣な表情で「バイバイっていったらもう会えなくなっちゃうからねえ、言わないの。」と言う。
あたしはやわらかな気持ちで子供を抱きしめる。
次の日、彼女はやさしくあたしに言った。
「早すぎる死とは思わない。人にはそれぞれ役目があって悲しみとか苦しみとか喜びとか人を楽しませたりいろいろ何かをしてあげたりとかそういう量がはじめから決まっててそれをやり終えた人間はもう楽になっていいのよ。
彼はその役目を充分に終えたのよ。悲しまなくていいことなのよ。」
いちばん悲しかった筈の彼女を慰めにいったつもりが反対にあたしが泣いてしまった。
彼があたしやみんなにかけた優しい言葉なんかを思い出して。
あたしは泣きながら一生懸命みんなのためにハヤシライスをつくった。
食べ物を何も口に出来なくなっている彼女が一口食べて「おいしい」と言ってくれた。うれしかった。
彼が2.3日前にしきりにあたしのことを心配していたという。
あたしはその心配を無駄にしないようにしなければならないね。
あたしの「役目」の量はどのくらいだろう?なんて考える。
あたしはどのくらい人をしあわせにできるのかななんて思う。
ハヤシライスを作ったりきっとそんなことなんだろう。
あの時のあの子の手のぬくもりや、あの子供の真摯な答えがそうなんだろう。
そんなちっちゃなことなんだろう。
でも、あたしはきっとそれでいいんだって思ったのです。